第107話 実際にぜひ見てみたいけど、見せないからこその技術

僕がたまに言及している三雲岳斗さんのライトノベル「ランブルフィッシュ」は名作ですが、主人公の一人が中国拳法の「寸勁」を使う場面が印象深い。

この打撃技は予備動作無しで、触れているものに打撃を打ち込む、現実離れした技です。

で、十年以上前ですが、「Fate/zero」を読んだ時、登場人物の一人がやはり寸勁を使っていて、ライトノベル界隈では意外に知名度がある技なんだな、という感じでした。

それがつい数日前、たまたまテレビをザッピングしていると、世界各地からのおもしろ動画を流す番組をやってて、たまたま見たのが、中国人らしい男性が寸勁でブロックを割る動画だった。

本当にあるんだな、とびっくりしましたね。実際にこの目で見たいと思いました。

剣術でも示現流の叫びながら相手を両断する技とかは見てみたい。もちろん人じゃなくて、適当な木とか、できれば兜とかを被せた感じのものを相手に、どんな威力か、見たい。気になる。

この手の武術で記憶によく残っているのは、椎葉周さんというライトノベル作家が書いた「アルティメット・ファクター」という作品に出てくる、「術」と作中では表現された武術で、どうやらこれは実際に存在する古武術を元にしているらしい。

この古武術を継承というか、発掘してる人らしい人物の動画をYouTubeでちらっと見たけど、影抜き、と呼ばれる技には愕然とした。

これは刀を振りながら、手元の捻りで刀身をずらして、相手の受けの刀を迂回してすり抜けるんですが、動画によると、普通の刀の柄の握りではそんな動きはできない。両手を近づけて握るんですが、すごく不自然。

この辺りの武術の不自然さって、実は武術が一発勝負の、生きるか死ぬか、という状況にあるから、と思われる。どんなに不自然でも、その不自然な理由に気づいた相手を倒して、殺してしまえば、次の相手には全くの前情報無しでまた当たっていける。そうなると、戦いの場って非情でもあるけど、合理的に相手を消してるのかもなぁ。示現流の使い手はその技は門外不出で、他流他派に技を見せず、仮にやったとしても足捌きの痕跡を消すために、技を繰り出した後に足跡が残ってる地面を均した、などとどこかで見たけど、それくらい技っていうものが意味を持った時代があったんだと思うと、感慨深い。

格闘に限らず、全ての技術にそういう「秘匿」があるんだけど、日常ではあまり意識しない僕です。無関心なのはよくないな、としみじみ感じた。現代では、知られても良いもの、知りたいものが知っても良いもの、誰にも知られたくないもの、などと段階、レベルがある気もする。どれだけ情報社会になっても、絶対に漏れない情報って、あるものなんでしょう。

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