第89話 やっぱりラノベ、だな!

秋元真夏さんみたいなことを言いながら、ラノベの話をします。と言っても、100円で手に入れた、正確に言えばレーベル移籍前も移籍後も定価で買ったけど、手元の本の中から発掘が面倒で中古で100円払ってブックオフの棚から回収した、ガガガ文庫版の浅井ラボさんの「されど罪人は竜と踊る」の第二巻の話です。

この作品は最初、角川スニーカー文庫から出て、その時からファンでしたが、途中でガガガ文庫に移籍して、だいぶエピソードが追加されて、新しいエピソードに進んで、その入り口までは追いかけたのですが、やめてしまった。今からまた揃えて読むというほどではなく、今は確認するように第二巻を読んでいる次第です。

ライトノベルはいいなぁ、と思うのは、というか、この作品はいいなぁ、と思うのは、泥臭くて、しかしカッコよくて、ジョーク満載で、切ない、と全てが揃っている。しかもそれが全部、読みやすく表現されてるし、分かりやすい。

そんな中で、ライトノベルにおける最大限に強調するべき点は、「強い」ということなんじゃないか、と思っている。主人公最強とかに通じる要素だけど、弱いキャラクターに感情移入出来る人は少ないのでは。感情移入というよりは、肩を持つ、というべきかも。

この「されど罪人は竜と踊る」における主人公のガユスくんは能力はあるけど、人格が凡人で、その格差がすごい印象的。その点では、読者の感情移入にはある程度の凡庸さは必要らしい。ガユスくんの相棒のギギナは、超人的な能力を持ってるけど、明らかに人格が破綻している。こちらを見ると、読者は現実に存在しない人間にも共感できる部分を持っている。

この辺りの人物構造が作品の魅力の一つなのは間違いない。

それと、このシリーズにおける特筆すべき点は、殺し合いがリアルなところです。本当はリアルではなくて、仕方なく戦って殺し合うしかない、というような「回避不能」があってから戦い、本当の闘争があるので、ありそうだと思わせるし、ないとは言わせない強制的な力を見せる。

僕はライトノベル向けの物語を書くとき、出来るだけ人を殺さないようにしている。現実的ではないし、人が人を殺すことは作者とか読者とかではなく、作中人物が背負うには重いし、殺人が横行する世界ははっきり言っておかしい。というわけで殺人は無しとしながら、今度は戦いに必然性を持たせるのにテクニックがいる。殺し合いこそ戦いの究極なのに、それが使えないのは、ダイナミックな物語作りの枷になる。そんな辺りの処理が上手いのが「されど罪人は竜と踊る」です。

この作品の第一巻を読むと、かなり圧倒されますね。大きな世界観も、細かなアイディアも、非常に切れ味鋭い。

一番の難題は作者が出版社と揉めているという噂があり、続刊がいつ出るのか、皆目見当がつかないことです。

ただ、「アナピヤ編」は伝説です。そこまではみなさん、頑張って読んでください。

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