第84話 剣術の描き方とロジック

剣術は様々な小説で描かれますが、要素が難解で、僕はなかなかスマートに描けない。腕力、体力、技術、視力、発想力、瞬発力などなど、挙げ始めるとキリがない。

その中で「剣術」というのがとにかく全てにおいて重要ではないか、とは思います。この技術は、ある側面では腕力を補い、ある場面では発想力を補えるのでは。

「剣術」は、おそらくぶっつけ本番の一発勝負で勝つという「結果」より、とにかく稽古において繰り返すこと、反復練習をすることで、「技を身につける」ことに重きが置かれているのでは。技さえあれば実戦でも勝てる、という理屈が見える。

この「技」が何を示すかは、単純にいうと、剣を扱う技術のことで、意図した筋に、意図したように、実際に刃を走らせることができれば、相手の剣の力とか速さに、より的確に合わせられる。ここで、相手が圧倒的にパワーがあるとか、圧倒的な速さがあるとか、そういうことを想定するのは、現実の発想というより、ゲームの発想のような気がする。大抵の人は大人になれば、極端な腕力の差は生じないはず。もちろん、その僅かな差で生死が分かれる、勝敗が分かれるわけですが、この差は運ではなく、技で覆せるのではないか、ということです。何事においても、運を力で塗り潰すのは、絶対では?

「技」というのも、実際的にはイメージしやすい「必殺技」ではないんじゃないかな、と思います。特別に調べてませんが、現存する剣術の流派でも、存在するのは「型」でしょう。その「型」が、完璧に生きる筋が、実際の斬り合いで生じる場面があるわけがない。「型」は剣の捌き、体の捌きを習熟させるためのものではないか。

剣術として師匠から弟子へと受け継げるものは、「型」であって、その技はそのまま、より短い期間で、より合理的に、より勝つ確率の高い剣を身につける、という修練なんでしょう。剣術は不思議なもので、きっと絶対的な合理性の追求が最強に通じる道じゃないんですよね。どこかの段階で、合理性を外れることで、合理的な剣の裏をかくことができるかもしれない。なら全般的にフォローできる技が正しいかといえば、どこかに突出した技で、その技で勝てる場面に巧妙に誘導して相手を切ることもできる。こうなると、「型」という技はやっぱり、どんな剣にも対応できる技術のことでありながら、何かに特化したことでもあり、そのバランスを取りながら稽古するのかな?

剣術の一番の難問は、強い剣士だろうと実戦の場で何かの瞬間に斬り殺されると、その剣士の技とか理論、構想の全てが無に帰すことでしょう。無数に消えていった剣術、それも最強かもしれない剣術があったと思うと、唸るしかない。

まぁ、自分より弱い剣士に切られる人が最強かもしれない、というのは矛盾してますが。

こういう剣術の理屈を考えるのは、なかなか楽しいし、飽きることが無い。

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