第79話 混乱に次ぐ混乱の盤上

将棋ウォーズの十秒将棋は事故しか起きないのですが、相手が事故を起こすとこちらも事故を起こすし、こちらが事故を起こすと相手も事故を起こす、という場面が結構、頻繁にある。十秒将棋の面白いところは、中盤あたりに入ると、お互いに十秒を目一杯使わなくなるところ。盤外戦術ではあるんだけど、もうお互い、手が止まらなくなる。

ただで大駒を捨てたり、大駒をただで取れるのに見過ごしたり、本当に素人将棋なんだけど、プロがそれをしないのは何故だろう? 思考力、計算力より、盤上の駒を自然と把握する癖がついてるのではなかろうか、と思うけど、いかに。

僕なんか、指してるうちにどこに駒が効いているか、すっかり忘れて自滅したりする。特に嫌なのが、33角から42角に移動されて、24の地点を守られたり、31角から42角でやはり24の地点を抑えられると、角の存在をすっかり忘れる。棒銀しか指さないので、とにかく2筋、3筋が難解になってしまう。本当に思考が停止した時は24に角があるのに、16歩をつかずに15銀とか上がって、ただで銀を取られる。何やってんだか、となる事案です。これはもう逆転不可能な展開で、しかし最後まで指します。

この最後まで指す、というのは、未だに一日三局しか指せないこともありますが、やはり事故を期待して、最後にはどうなるかわからない、という一縷の望みに賭けている面もあります。十秒なので、どんな事故も起こり得る。こちらが混乱、というか錯乱した時、何故か相手もガタガタになるのが、稀にあることです。もっとも、それよりも逆にこちらが相手の悪手で混乱する、そして自滅することも多いのですが。

小説とか漫画とかアニメで、どんな形でもいいですが、戦いになった時、力とか技術とか思考とか情報とか、そういうものの競い合いになりますけど、実は現実だと多分に「偶然」があるのでは、と思いますね。剣豪がたまたま剣が折れて死んだり、最新鋭の戦車が小石一つがどこかに引っかかって動けなくなって撃破されたり。まぁ、それは創作としてはつまらない気もしますけれど。

それにしてもまったく、僕の将棋は素人がF1カーを運転してるようなもんだよなぁ。早く二級に上がって、十分切れ負けにシフトしたい。あと二ヶ月は粘る。

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