第73話 大水滸伝シリーズの通読、完了しました
過去の記録を遡ってみると、2020年の10月辺りから北方謙三さんの「水滸伝」19冊をまず読み直し、そこから「楊令伝」15冊を読み直し、そして「岳飛伝」17冊を読みました。全部で51冊で、終わってみると、よく読んだなぁ、という感じです。
「水滸伝」はそれだけで比較的まとまっている感じで、しかし敗北が約束された物語なので、少し切ない結びです。そこから「楊令伝」へ進むと、今度は勝利と混乱の物語になる。正確には勝利のようなもの、となるのですが、この作品はなかなかどう表現できるか、難しいところ。全てがつゆと消えそうになる「楊令伝」の最後から「岳飛伝」への接続はスムーズで、梁山泊と岳飛が接近するまでもハラハラだし、最後に全てが一つになるのは、感動する。というか、「岳飛伝」の6巻の帯に「岳飛、死す」と書いてあって、おいおい、と思ったな。
「岳飛伝」の最後の何が凄いかは読んでもらうのが一番ですが、なんというか、軍と軍がぶつかって、大将が討たれて決着、ではないのが凄い。まさしく死闘で、お互いに力が無くなるまで戦い続け、しかし北方謙三世界の梁山泊は物語の最後には存在する必要がなくなるので、スムーズに消えていくことになる。この流れるような筋書き、物語の結び方が、感動した。こんなこと、人間が発想できるのが、信じられない。
もしまた時間が取れたら読み直したいと思うほど、全てに隙のない、完璧な物語でした。物語もだけど、登場人物も良い。僕の中では燕青が一番、印象深い。この人は軍人じゃなくて、体術の達人として一対一の戦いの場面が、全編を通して三回あるけど、そのどれもが心を打つ。達人同士の、技とか運とかではない、何かを賭けているような、でも何もかもを突き放しているような、必死なのか、無なのか、そんな不思議な戦いで、清々しいし、さらりと吹いていく風に命を乗せるようなイメージで、本当に好きだ。
張清と張朔の親子も好きだな。張朔が親父から礫打ちの技を継承しているのも良い。王貴、王清の異腹の兄弟も良い。王進の死に方とかも、凄かった。
ちなみにこの作品は、現在、ハードカバーで刊行されている「チンギス紀」に繋がるらしい。そんなん、もういつまで経っても死ねないやん。読む僕も死なないし、書いている北方謙三さんも死んじゃいけない。北方謙三世界はどこまで繋がるんだろう? 背筋が冷える構想力で、それが癖になる。ぜひ、最後まで見届けたい。もう、本当に死ねないな。「チンギス紀」を読むために生きよう。
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