第67話 たまにはラジオのことを話そう

最近の僕の中で、一番輝いているラジオ番組は「沈黙の金曜日」ですね。アルコ&ピースの2人がメインで、アシスタントは乃木坂46の弓木奈於さん。

この番組の何がすごいって、弓木さんがぶっちぎってることです。とんでもなく速い変化球がガンガンくる。アルピーのお二人も負けじと速い球を返すと、リスナー、それも明らかに練度の高い熟練のリスナーがメールをやはり際どく返してくるので、もう訳のわからないキャッチボールになる。

僕はアシスタントが乃木坂46を卒業された中田花奈さんの時代から聞いていて、しかし中田さんの時代はあまり知らないのですが、今の番組の感じはかなり好み。弓木さんがアシスタントになって四ヶ月くらいのはずですが、実にいい具合の関係になってきた。

特筆すべきは弓木さんが既に番組で二回、泣いていることですね。もしかしたら一部のアイドルファンからは「おい! アルピー! 弓木を泣かすなよ!」って非難轟々になってるかもしれないけど、あの弓木さんの涙はラジオ的には良かった。それこそ、目の前でアシスタントが泣いているアルピーさんこそ、どうやって締めたらいいか、瞬間的に思考が沸騰しただろうけど、いい具合に思い出になって、距離も縮まって、良かったのでは。

弓木奈於という個性が起こした化学変化は、番組をいい具合に変えて、僕は大歓迎です。しかし、弓木さんはなかなか、曲紹介がうまく出来ないね。そういう素人臭さも僕は思わず和む。

他に聞いている番組で面白いのは、「問わず語りの神田伯山」かな。この番組は下ネタと威嚇と批判が全体の9割です。1割はいいことを言う。講談の存在を僕は全く知らなかったし、テレビで見たのも「笹川の花会」だけなんだけど、講談師だから、というより、神田伯山という人そのものの面白さが、この「問わず語りの神田伯山」にはあると感じます。面白いラジオを作ろう、という、すごく大事で、すごくシンプルなものが、ちゃんと見える。目の前にはないし、遠くの方で、何かの影に隠れてはいるけど、ちゃんとある。

僕はラジオで話した経験はもちろんないけど、ラジオの好きなところは、喋り手が言葉や会話だけで、しかも一人きりで、自分の技量と器量で、リスナーを楽しませようとするところです。テレビのバラエティは、大勢で複雑な工程で、万人受けする作品を作るけど、ラジオにはどことなく、一対一、という感じが残っているのが、僕がラジオを好きところです。正直、ラジオパーソナリティが僕だけに喋っている、なんてことを感じた時は一度もないのですが、それでも、一対一、と表現するしかない感覚なんですよ、これが。これは言葉には絶対にできない。距離も世界も、ラジオは超越しているかもしれない。

これも不思議なんですが、ラジオでメールが読まれると、放送作家さん、構成作家さんが事前に選んでいるとしても、パーソナリティの方に選んでもらえた、と何故か、感じる。これは明らかな錯覚なんですが、この瞬間だけは、一対一は、一方通行ながら、確かかもしれない、と思ったりしますね。ほんの一瞬の確信、なんですが。

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