第20話 疲れる将棋

10秒将棋で最も疲れるのは、相手がなんらかの悪手で大駒を手放して、形勢としてはこちらが圧倒的に有利なのに、決着までが長い場面。なんていうか、将棋は大駒を取るのが目的じゃないので、粘られるとかなりきつい場面が多い。とにかく、これで勝てる、と思うこともあって、集中が極端になり、息が詰まる。

例えばこちらが飛車2枚と角1枚を持ってるのはほぼ勝ちだけど、相手が金3枚銀3枚で徹底的に受けに回ってくると、めちゃくちゃややこしくなる。こちらは桂馬と歩をうまく使って仕留める、って具合になるけど、これは10秒じゃ少しも先が読めない。相手が指す手が予想外のことが多くて、しかもそれが正しいのか間違ってるのか、それすらも読めなくなる。

ここのところ感じるのは将棋には形みたいなものがあって、こことここを押さえると少ない駒で固く守れる、というのもあるし、逆に、ここから崩して交換を続けると守りを一枚ずつ剥がせる、というものもある。

本気で将棋をやってる人はそれをちゃんと覚えてるんだろうけど、僕のインチキ将棋、デタラメ将棋、無手勝流の将棋には、そんな高尚な知識はありません。

いかんなぁ。いかん。

知的に勝ちたい。

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