第3話 いなくなる
23 時を過ぎた頃。
「ん?」
それまでしずくとほのかの介護とリビングの片づけをしていた涼が気付く。
(ネコさまと高木さまはどうしたんだろう?)
スクリュードライバーを持って逃げて以降、姿を見ていない。
(追いかけていったしずく様は見失ったといってたし……。飲み終わったら出てくるだろう し。どこかで潰れたか。ゲームでもして遊んでいるのかな?)
片づけを再開するが、やはり気になる。
(二階を見てこよう)
涼は階段を上がっていった。
全ての部屋を見たが、ネコちゃんと高木の姿はない。
(キッチンへ行っている時に、地下へ行ったのかな?)
リビングへ戻ってきた涼は先ほどとなにかが違っていることに気付く。
(はっ! ほのか様がいない)
ソファーに寝ていたはずのほのかの姿がなかった。
(あの状態から起きた? いや、まさかね)
涼はまだのびているしずくを起こす。
「しずくさま。起きて。しずくさま」
「んん……。涼さん? どうしたの?」
「ほのかさまを知らない?」
「ほのか、ちゃん?」
無理やり起きたのでまだ頭がしっかりしていないようだ。
「ほのかさまだけじゃなくて、ネコ様と高木さまも姿が見えないの。二階には誰もいなかった」
「他のみんなは?」
「地下でビリヤード」
「そこじゃないの?」
「じゃあ行ってくる」
涼は地下へ降りて行った。
楽しそうな会話と玉を突く音が聞こえる。
「みんな。ここにネコさまと高木さまとほのか様はいますか?」
「いや。きてないよ」
「みてないな」
「どこにもいないの!」
「はぁ?」
「まさか。いないわけないじゃん」
「本当にどこにもいないんだって! 一緒に探してよ!」
涼の剣幕に一同は押される。
「分かった」
「探すよ」
「地下にはいないから、一階と二階だな」
キューとボールを片付け、カギをかけて全員一階へと上がった。
リビングの窓際にしずくはいた。
「いた?」
「いんや。地下にはいなかった」
「そう。外でもないと思うよ。メチャ吹雪いてる」
「ええっ⁉」
「吹雪いてる?」
窓辺に走った全員が驚愕する。
横殴りの雪が降り、あたりは白く光っていた。
窓から漏れた光を積もった雪が反射しているのだ。
「な……」
「うそだろう?」
彼らは別荘に閉じ込められたことになった。
「天気予報ではなにもいってなかったぞ」
「いや、それよりも探そうよ」
「あ、ああ。分かったよ」
一階と二階を手分けして探し始める。
「どうだった?」
「いや。いなかった」
「こっちもだ」
「どういうこと?」
戻ってきた面々が不思議がる。
「ん?」
「ひとり足りなくないですか?」
「に~、し~、ろ~、あ! 雄太朗さんがいない」
「燦さん。よく気が付きましたね」
「いや、なんとなく頭数が……」
「雄太朗さん。どこを探しに行ったんでした?」
「さぁ……」
「雄太朗さん。まだですか? 雄太朗さん!」
「どこからも返事がないな」
「まさか四人目?」
「やだ……。冗談」
「でも。もどって、こない」
「…………」
「いたずらにしてはたちが悪い」
「いたずらなの?」
「もう一回、今度は、全員一緒に、探そう」
「そうだな。それがいい」
そうして全員一緒に全部の部屋を見てまわり、再びリビングに戻ってきた。
「あれ?」
「なに?」
「またひとりいない!」
「はっ⁉」
「まさか」
「あ! 岸さん!」
「うそでしょう!」
「どうなってるの?」
「広いとはいってもこの家の中しかないのよ? おかしいじゃない!」
「そうだよ」
「ヤダ! ぼく苦手なんだからね! やめてよ」
ライが叫びだす。
「落ち着いて」
「ヤダ! ヤダ!」
「ちょ……」
「いかん。パニックになっている」
「二階で寝かせたら?」
「そうだね」
「ひとりはイヤだよ!」
「じゃあ。ついていてあげる」
「しずくさん。宜しくお願いしますね」
「了解~」
ライとしずくは二階へ上がっていった。
「お茶いれますね。落ち着こう」
「涼さん。ありがとう」
「手伝います」
涼と凛がキッチンへ行く。
残りはソファーに腰かけた。
少ししてコーヒーと紅茶が配られる。
その時。
二階の手すりからしずくが顔を出した。
「ライさん眠ったのだけど、どなたか変わってくれませんか? 私はシャワーを使いたい」
「しずくちゃん。じゃあ。自分が、変わるよ」
「お兄ちゃん。ありがとう」
「しずくさん。ひとりで大丈夫ですか?」
「えっ⁉ カギかけるから大丈夫よ。じゃあ。宜しくです」
しずくはシャワールームへ。
シリウスはライの部屋へと上がっていった。
「これからどうします?」
「警察に連絡したがいいと思う」
「私もそう思います」
「車で帰る!」
「ひまぽさん?」
「こんな変な場所にはいたくない」
「この雪なんですよ? 車は危険です!」
「このままここにいたら失踪確定だ! 冗談じゃない!」
二階の荷物も取らずに、ひまぽは別荘を飛び出した。
車のエンジンをかけて行ってしまう。
その後ろ姿を見送って中へ入ろうとした時だった。
大きな音が聞こえてくる。
「なに?」
上着もなしで駆けつけると、車ががけ下へ転落炎上していた。
「ひまぽさん……」
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