第4話 ころがる
「うそだろう?」
「…………」
「みんな中に入ろう」
「でも!」
「あれでは助けようがないですよ」
「確かに……」
燦、もうきんるい、彦さん、涼、凛が室内へ戻ってきた。
「しずくさま、大丈夫かな? 見てくる」
涼が二階のシャワールームへ上がっていく。
少しして涼が手摺から顔を出して叫んだ。
「お願いきて! しずくさま倒れてる!」
「「「「‼」」」」
シャワールームへ全員が急ぐ。
中では全裸でしずくが倒れていた。
シャワーヘッドからお湯が出たままである。
「しずくさん!」
「ちょっ! 燦さま。そこまで!」
「私が中へ行きます」
凛が中へ入ってドアを閉めた。
「ああ。つい気が動転して。すみません」
「いや、いいんですよ。おいらもちょっときつく言い過ぎました。すみません」
「カギは? どうなっていたんですか?」
「開いてました」
「おかしいですね」
「彼女はカギを閉めるといってたのに」
「シリウスさん。なにか聞こえませんでしたか」
「いや、なにも聞こえなかったよ」
「そうですか」
そこへ凛が顔を出す。
「涼さん。しずくさんを拭きあげてバスタオルでくるんだよ」
「しずくさまは?」
「大丈夫! 生きてる」
「そうか。よかった」
「凛さん。ありがとう。男性陣。しずくさまを部屋まで運んでください」
「分かりました」
今度ももうきんるいがしずくを運んだ。
こんなとき長身の力持ちは役に立つ。
「今度は私がしずくさんをみてます」
「じゃあ。凛さんお願いします」
凛を残して皆が部屋を出た。
「あれ? ライさん起きないね。これだけ騒いだのに」
「そうだね。おかしいね」
ライが寝ている部屋に戻ったシリウスが驚く。
「ライさんくんいないよ……」
「はっ?」
「えっ⁉」
「シリウスさん。どういうこと?」
「いや……。分からないよ。部屋を出るまでは、いたからね」
「…………」
ライが寝ていた部屋は、シャワールームのすぐ横だ。
廊下に向いている扉は同じ方向を向いている。
「ありえない……」
「スマホ! 警察に電話しよう!」
「そうですね」
「みんなリビングに置いてましたよね?」
「急ぎましょう」
リビングへおりた全員は愕然とする。
テーブルに置いていたスマホが全てなくなっていた。
「…………」
「いなくなった人のは?」
「部屋を探してこよう」
しかし、彼らのスマホもなくなっていた。
「どうなっているんだ⁉」
「畜生め!」
外はまだ吹雪いている。
別荘から真っ暗な外へ出ることは危険であった。
「落ち着きましょう」
「そうだね。お茶いれてくるよ」
シリウスがキッチンへと向かう。
直ぐにコーヒーの香りがする。
「いれてきたよ。どうぞ」
ソファーに倒れるように座っている全員に配っていく。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
受け取って飲んだ皆の意識が遠のいていった。
暫くしたころ。
寒さで燦は目を覚ます。
ボーっとする頭で周囲を見渡した。
正面にシリウスが立ち尽くしている。
その他に人はいない。
「シリウスさん。他の人たちは……?」
すると背後で声がした。
「お兄ちゃん。どういうこと?」
振り向くと服を着たしずくが立っている。
「いや、しずくちゃん。これは、その……」
口ごもるシリウス。
「燦さん。大丈夫ですか?」
しずくが駆け寄ってきた。
「ええ。頭がちょっとふらついてますが大丈夫です」
「よかった」
安堵するしずくとは対照的にシリウスが呟いた。
「残念。もうちょっとだったのに」
「どういうことです?」
「出版記念に、とっておきを、プレゼントしようと、思っていたんだよ」
「これが? この状態の一体どこがですか?」
燦はシリウスとの対決姿勢をとった。
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