第6話 結論

 彼女は少し興奮した様子だ。


 彼女は美人とゆうか、どちらかと言えば可愛い系かつ小柄なこともあり、いまいち迫力にかける。あと、比喩表現が下手だなとも思った。


「でも、そのことが、どう世界の破滅になるの?」


「そこよ! 一番大事なのは。このまま、どんどん外国から観光にこなければ成り立たなくなってしまったら、本当に嫌なことも断れなくなってしまうじゃない」


「うーん、そうかな」


「まだ疑ってるの。例えば、何でも嫌なことでも押し付けられたら、それこそ超危険なウィルスとか、激ヤバイ奴とか、こっそり持ち込まれても何も文句も言えなくなっちゃうでしょ。そしたら……もう、日本は、このまま」


 彼女は深く息を吸って、目を閉じる。


「日本は世界と結びついてるし、日本がダメになれば世界も終わるの」


 カッと目を開き、短い腕をピンと伸ばして俺を指差した。


「これが、世界が破滅する理由よ!」


 彼女はフルマラソンを完走したてのように体中から湯気を出していた。

 透き通るような白い肌に1筋の汗が煌めく。

 壮大なプレゼンをやり終えた清々しい笑顔で、

「以上です」

 と言った。


 



 おしまい。





 って、全っ然、納得いかねー!


「理由は分かったんだけど、何で俺のInstagramから、そんな理論に飛躍しちゃうの?」


 彼女は痛いところを突かれたように、うっと一歩後ずさり。


「だって、単純に上高地まゆがアップしたびわ湖バレイの写真見て、行きたいけど、行けないなーって話してただけのような気がするんだけど」


 うっと彼女はまた一歩後ずさる。


「びわ湖バレイ行けないから写真で行った気になるか~=世界の破滅=俺がそれを考えたのが発端って、いくらなんでも飛躍しすぎじゃね」


 確かに、

 だよな、

 周囲の野次馬から、続々と俺に同情する意見が寄せられてきた。


「……普通、浜辺美波でしょ」


「えっ?」


「だいたい、高校生のくせして上高地まゆをフォローなんて、熟女好きはないでしょ。なんか、そっち系が好きなのかなって思ったし……」


 お、思わぬ反論。

 

 結局そこかーい!


「で、でも八賀さんの盛りグセ、こじつけの方こそヤバイんじゃないの。だいたい、そんなんでよかったら、風が吹けば桶屋が儲かるじゃなくて、世界中が儲かるみたいな理論じゃん。そんなんでよかったら、俺でも……」


 俺も負けじと反論。だが、こんな言い合い、誰の勝ちでも負けでもなくて、みるみる八賀さんの顔が紅潮していく。


 そして――


「大峰くんなんて、最低!」


 バチンという音とともに、俺の右頬が力強く波打った。



 了



 

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大峰くんなんて、最低! 小林勤務 @kobayashikinmu

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