第3話 発展
「その内容が問題なのよ」
……どうゆうこと?
健全かつ健康な男子高校生の俺が、上高地まゆという熟女カテゴリーをフォローしているのが問題だったんじゃないの?
なら、理由はなんだろうか……
「このInstagramのどこらへんが問題なの? もしよかったら教えてくれない?」
「仕方ない、自分で気付いてないなら教えてあげるわ。この上高地まゆのInstagramには、何が映っていると思う?」
「えっと……彼女がびわ湖バレイのテラスでピースサインしている画像だけど」
びわ湖バレイ。
それは、滋賀県大津市、標高1,100m比良山系にあるスキー場の名称である。
秒速12m、日本最速を誇るロープウェイに乗り、山頂駅へと降り立つと、眼下にはびわ湖、その奥には日本百名山である伊吹山が鎮座した雄大な眺望が広がる。
俺も上高地まゆのInstagramで初めて知って、あまりの綺麗さにネットで調べた。
「びわ湖バレイ……。私も知ってるわ。綺麗だもんね」
「あれ、八賀さんもそう思う? 奇遇だね、さっきまで俺も……」
彼女は俺の口元に手をかざし、その続きを制止した。
「そのびわ湖バレイのInstagramを見て、大峰くんは何て言ったか覚えてる?」
何て言ったか……
確かあの時、俺は最近仲良くなった
「めっちゃ綺麗じゃん、なんか旅行でもいきてーなー」
都留岐くんは腕を頭の後ろで組み、ぼやいた。
「いいよな、まあでもそんなお金も時間もないし、画像で行った気分になるしかないよね」
「だよなあ……って、なんか俺らサラリーマンっぽくね。まさか、将来社畜一直線かも」
「確かに」
こんな会話をしていた気がする。
ちらりと都留岐くんに助けを求めた。
彼は触らぬ神に祟りなしといった風に、俺たちと視線をそらしている。
彼とのやりとりを伝えると、彼女はうんうん頷きながら、目を閉じた。
「私もその辺にいたから、さっきの会話は聞いてたわ」
「なんだ、聞いてたなら最初から言ってよ」
「……そうね、ごめんね」
予想外の謝罪の意に、ずっこけそうになりながら続けた。
「でも、このやりとりの何が問題なの?」
「えっ! まだ、気付いてないの?」
彼女は漫画のキャラクターのように、大げさに仰け反る。
「ごめん、まだ分かりません……」俺は両手を合わせて頼み込んだ。「頼む、教えてください!」
「行った気分……」
彼女の声があまりにも小さかったため「えっ」と訊き返した。
「行った気分でいいじゃんって発言のことよ!」
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