第2話
脇道に入る。
「少し、休むか…」
さて、これからどうしたものか。
正直、かなり混乱している。そうか…俺は、逃げたんだ。あの戦場から。ふと、教官の言葉を思い出す。
「少年兵のみなさん。みなさんは不幸です。
このような所へ集められ、両親はおらず、武器を持つことだけ学ばされる。そんな君たちが幸せになるにはどうするか。ただ一つ、神に祈るのです。もちろん祈るだけでは神はお救いにならない。だから戦うのです。神のため、国のため、仲間のため、自分のために。そこで死ねば、神に魂は捧げられ、極楽へと誘う。勝利し、生き延びたものもまた、自由を手に入れ、救われるでしょう。しかし逃げたものはどうなるか。仲間の死を無駄にし、無様にその辺で朽ちるだけ。神はお救いになりません。ですから、ここから逃げ出したもの、逃げようとしたものは、私たちが責任をもって、罰を与えましょう。」
教官といっても俺と三つくらいしか歳は変わらない。あんな狂信者の言葉なぞ信用できるか。この世に神なんていない。死ねば救われる?そんなの、命を捧げて信仰を得るだけの邪神だ。でも、罰がどういうものか、みんな知っていたから、だれも逃げなかった。時計塔の下で晒し首になるのだけは…みんな避けていた。
だから見殺しにした。訓練での戦績トップだったノワルドも、俺をライバル視していたカナータも。防衛線より前に出るように煽って、見殺しにした。それのおかげだろう。俺が逃げる時にはみんな死んでいた…
銃声が止んだ。戦いが終わった。どっちが勝ったか、それとも第三者が来たか。俺には関係はない。そもそも戻るつもりはない。商人の荷台のタイヤ跡をたどればいずれどこかに…
「おい。何をしている」
この、声は…!
「き…教官…」
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