第4話 聞き込み調査
「まずオーナーの考えに基づいてスタッフへ疑いを向けるとすると、今日出勤してるスタッフへの聞き込みが大事になってくると思うんだ。だからここからは少し別行動で聞き込みをするのはどう? 1階に降りないといけないけど5人で行動するのもどうかと思うし」
僕が今述べた事は半分本当で半分嘘だ。事件解決のために聞きこみは大事。ただ別行動をする目的にはオーナーの秘密を探ることも含まれる。
「いいですが、くれぐれも一般客に悟られないようにお願いします」
疑いを向けられなくなったからか、オーナーは僕たちに対して警戒心がいくらか減った気がする。今が好機だ。
「ありがとうございます! それでは少しばかり聞き込みに行ってきます」
「じゃあ俺はかなみょんと……」
「嫌よ」
「が、が〜ん」
「はいはい、フラれた有馬くんは僕についてきましょうね〜」
かなみょん、オーナー、山代さんを2階に残し、僕は有馬を連れて1階のフロントへ来た。まずは受付の人に聞いてみよう。
「すいません、指宿千賀さんについて聞きたいことが何点かあります」
対応してくれたフロントスタッフは芦原さんという方だ。名札に書いてある。
「あなた方がオーナーの言っていた協力者ですか! なんでもお答えしますよ」
なんとなくフランクなオーラがある人で安心した。
「ありがとうございます。ではまず1点目です。今の段階では私怨による物が濃厚になっていて、状況的にはここのスタッフの誰かが殺めたという線で考えています。指宿さんと最近トラブルになったスタッフとかって心当たりありますか?」
「それってもし仮に私が犯人だったら平気でテキトーな事吹き込まれちゃいますよ〜 まぁでも私は犯人じゃないのでご安心ください! その件ですが、正直言って指宿さんは勤務態度が最悪だったので誰から殺されてもおかしくないです。不謹慎ながらも今回の事件で喜んでいるだろうスタッフも少なくないと思われます。まぁ所謂お局タイプってやつですので……」
「そうでしたか。それは今まで災難でしたね。それでは2点目です。事件現場に手のつけられていないハンバーガーとポテトがあったのですが何か心当たりは?」
「それって普通のハンバーガーでした?」
「……? はい、スタンダードなハンバーガーですよ」
「それならば指宿さんの物ではないですね。彼女は菜食主義だったので肉は食べないはずです。こちらご覧ください。彼女のSNSです。野菜料理ばかりでしょう?」
「本当ですね! もしかしたらこれが事件の重要な鍵になるかもしれません。非常に助かりました。それから最後に、事件とは関係ないのですが第1ボイラールームについてご存知ですか?」
「あ〜、あれはここのスタッフの幹部クラスしか入れないんですよ。勤続年数が長く、オーナーから厚い信頼を寄せられたスタッフのみ立ち入る事を許され、他のスタッフは一切立ち入り禁止となっているんです。私は企業秘密を他社に漏らすとか、自身で流用してお金を稼ぐとかする気ないので、一切興味ないんですけどね〜」
「殊勝な心構えでお仕事をしてらっしゃるのですね! 芦原さんから話が聞けて本当に助かりました! ありがとうございます! また後で立ち寄るかもしれませんのでその時はよろしくお願いしますね」
「は〜い。事件解決頑張ってくださいね〜」
事件の大事な鍵になってくるのはあのハンバーガーとポテトなのは間違いない。それから第1ボイラールームに何か重大な隠し事があるのも間違いない。ハンバーガーとポテトに関与したスタッフを探ろう。
「お前ってなんていうか、年上の女に媚びるのうまいよな」
「え? 意識してなかったけど、そんな感じした?」
「うん、なんか返答が一々尻尾振った犬みたいにハキハキした様子だし。これはアレだな、いわゆるマダムキラーってやつだな」
「褒められてるのか弄られてるのか分からないけど、まあでもそれで話が聞き出せるなら良い武器を手にしたって所かな! 聞き込みはまだこれだけじゃ終わらないよ! とりあえず今回の聞き込みを元に一旦オーナーと話がしたいかな。2階へ戻ろう」
ひとまずオーナーやかなみょん、ついでに山代さんにハンバーガーとポテトの件を共有だ。持ち込んだ人は十中八九犯行に関与しているだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます