第16話 霧の生き残り

「んにいいいい、そこだ、アーリ! あわ、しゃがんで、むぎゅ、思いっきりたたきつけろ!」


 ぬわわわわ、とアンシャナは奇声を発しながら目の前の大鏡に映る光景に向けて声援を飛ばす。アーリ達がミツアシと戦っている最中ももちろん見ていたアンシャナだが、今、彼女はその後に合流地点を目指すアーリらを見ていた。

 彼らは霧の中から新たに出現した巨大な蜂のような生物の群れと戦っており、一抱えほどもある巨大な蜂はミツアシのように白く表面は濡れ光り、強靭な顎と巨大な毒針を備えており、進んで人間に襲い掛かる凶暴性も備えていた。 


「あわわ、よし、ネフェシュ、よく防いだ! アーリ、前、前、次は左! アシャ、上手いぞ、ソルゼの奴の奇跡を使うのに慣れてきたかな? よし、よし!」


 フン、フン! と気合の入った鼻息を零して声援を送るアンシャナの頬は紅潮し、すっかりと見入っている。

 見られているアーリ達からすると命懸けで戦っているわけで、アンシャナの声援が届いても励みになるか怪しいかもしれないが、少なくともアンシャナが必死であるのは間違いなかった。



「でい!」


 アーリは掛け声とともに顔面を串刺しに来た巨大な蜂型の魔物を、真っ向から小剣で斬り伏せた。頭部から腹部を斜めに断たれた魔物は、緑色の体液を吹き出しながら真っ二つになり、地面に落ちるまでに霧に解け崩れるようにして消える。

 ミツアシの時と同様にユヴァが霧の蜂だからキリバチと安直に名付けた魔物の群れは、二十匹近い数でアーリらを襲い、自在に空を飛ぶその機動力にアーリは随分と手こずらされたが……


「ありがとう、アシャ。アシャが【燈火】を使ってくれなかったら、動きの素早さにもっと苦戦していたよ」


 会敵とほぼ同時にアシャが先制とばかりに【燈火】をキリバチの眼前に行使し、太陽の光に耐性のないキリバチ達を大混乱に陥れたのだ。

 そうして方向感覚や統制を失ったキリバチ達がお互いに衝突しているところにアーリらが飛び込み、混乱が収まる前に半数以上を仕留める事に成功した。


「いいえ、わ、私の出来る事をしただけですので。止めを刺したのはアーリさん達ですから、はい」


「おやおや、自らの武勲を軽んじるものではありませんぞ、アシャ殿。ましてや太陽神の威光によりて上げた武勲であるのです。謙遜なさる気持ちは分かりますが、あまり謙遜しては、輝ける太陽神に礼を失しましょう」


「あう、ウパウさんのいう通り、かもしれませんね。あの、えと、ではわた、私も頑張りました」


「あははは、そうだね。それでいいんじゃないかな。ネフェシュと博士も怪我はない?」


「はい。不肖ネフェシュ、そして博士共々無事です、アーリさん。キリバチの全滅も確認しています。それにしても先程のミツアシといい、霧の中の魔物は凶暴な種ですね。【敵意探査】に引っかかると、どの個体も強い敵意の反応が出ます」


「知りもしないところに招かれた上、縄張りを犯されているのだ。興奮状態にもなるだろうよ。それ以上にもとから攻撃的すぎるがな。だがこれだけの襲撃頻度となると、先に合流地点に居る連中はかなり厳しいかもしれん」


 ユヴァが硬い声を出すのに、ウパウも根を握ったまま同意する。彼らこそ階級詐欺と言える戦闘能力を有しているが、他の一つ星や二つ星のパーティーはそうも行かないだろう。三つ星が着いているとはいえ、霧の魔物の襲撃が連続すれば窮地に陥っている可能性が高い。


「そうですな。この状況では籠城しても四方八方から次々と襲われるだけです。助かるには、一刻も早くルゾンに逃げるしかないでしょう。四つ星以上で固めた精鋭による先行偵察と軍の投入をどれだけ早く行えるかが鍵になりますかな」


「そこまでの事態になりますか?」


 ネフェシュは霧の調査続行を提案した為に、ウパウの口から自分の想像を超えた事態が語られて不安の色を浮かべる。


「いやいや、最悪の事態を想定すればの話ですぞ。しかしそれを想定するのがこの業界の生き残るコツでしてな。先に向かっておる方々が下手人を捕らえていてくだされば、万事万々歳まであと少しになるのですがなあ」


「それはいささか希望的観測かと」


「そういうわけです。幸いまだ我々には余力がありますし、ミツアシとキリバチが相手なら充分に戦える状況ですからな。物資の補充の宛てと撤退の目印もありますから、比較的動きやすいのが我々です」


 ウパウがこうして細々と状況の説明や事態の確認の為に口を開くのは、彼なりにアーリやネフェシュらに教導しているのかもしれない。

 冒険者としては同じ新入りでも、冒険者になる前の経歴が段違いでるだろうと誰もが察しているから、彼の言葉を一期一句聞き漏らさないように耳を傾ける。

 アーリは周囲へ目を凝らしながら、ウパウの言わんとするところを推測しながら尋ねた。


「このまま進むのもルゾンへ戻るのも、今の状況ならまだ選べると?」


「そうなりますかな。もちろん他の冒険者達が襲い来る霧の魔物どもを千切っては投げ、千切っては投げの大活躍をしている可能性ももちろんありまするぞ」


「ウパウさんって助言や可能性を示してはくれますけれど、答えは自分達で出すように誘導していますよね」


「拙僧は既に老い先短い身でありますが、アーリ殿やネフェシュ殿、アシャ殿はこれから先、未来が長く続いておりますからな。ご自身で選択するという経験を積まれた方がよろしいかと、まあ、老婆心ですな」


「今、僕達が居るのは荷物を下ろしたとこから合流地点まで三分の二近く進んだところ。ここまで来たなら厳重に注意を図りつつ、先に向かっていた人たちがどうなっているかを確認するのも手だと思う。

 そうすれば少なくとも先行した冒険者達の救出が必要か、そうでないかをルゾンの方で判断できるから」


「私も、アーリさんの意見に同意します。あの、あの、情報の有無はその後の行動に大きく作用します。私、達は今、非常に重要な立場にあるのかもしれません。

 とても、難しい判断を迫られていますけれど、あの、私もまだソルゼへ祈りを届けられますし、大丈夫です、です」


 精一杯の勇気を振り絞ったアシャの言葉と視線は、まっすぐにネフェシュへと向けられていた。ユヴァは何も言わない。この決して本体を見せない魔術士は、ネフェシュに判断させるべきだと考えているらしい。


「分かりました。ではこれより我々は合流地点への移動を再開します。皆さん、自分の命を大切に。情報収集が最優先です。

 場合によっては先行している冒険者達と合流し戦闘を行いますが……場合によっては、ルゾンへ即時撤退を開始します。いずれにせよ、静かに音立てず、けれど素早く参りましょう!」


 ネフェシュが冒険者達を見捨てる可能性を口にする瞬間ばかりは口ごもり、それでもこれからの行動方針を決め、はっきりと告げる姿にアーリとアシャは力強く頷く。

 ネフェシュに意見をし、臨時のリーダーが決定を下したのだ。ならば彼らは全力でその決定に答える義務がある。


「うん。全力を尽くすよ」


「私も頑張ります。はい!」


「ふふ、若人がこうまで気合を入れるならば、老骨は倍も気合を入れなければなりませんなあ、ユヴァ殿」


「ふん。私はお前ほど年老いてはおらん」


「そうでしたか。老婆心はお互い持っているとは思いますが。ふふ」


「お前のそういう年寄りは何でもお見通しだと言わんばかりの態度は、若いのには受けが悪いぞ」


「ほう、それは気を付けなければなりませぬな」


 ちっとも堪えた様子のないウパウへ、ユヴァはこれ以上何かを言う気を失った。

 それからもミツアシやキリバチをはじめ、見たことのある、けれど霧の所為なのか歪で凶暴な生物が姿を見せ、ことごとくがアーリ達に対する食欲と殺意を持って襲い掛かり、これらを撃退し続けて進むしかなかった。

 もっとも体力に乏しいアシャの足取りが徐々に重くなり始め、一度休憩を入れようかとアーリやネフェシュが考えた頃に、ぷんと彼らの嗅覚を強く刺激するものがあった。


「血の臭いですな。各々方、備えられよ。こちらに近づいてくる足音が一つ。成人男性、軽装、魔術による軽量化の可能性もありますが」


 アシャの鼻でも分かる濃い血の臭いが、彼女らの向かう先から風と共に流れてきて、その先で凄惨な運命が訪れたのを想起させた。

 ウパウの耳が捉えた足音には、当然のようにそれを追いかけられる別の生き物の足音や息遣いも混じっており、アーリ達はややうんざりしながら武器を構える。

 幸いなのは霧の魔物達はいくら倒しても、死と共に消滅するので武器や防具に血液や肉片、脂が残らない事だ。お陰で手入れの手間が大きく省けている。


「おおお~~~い、見も知らぬ君達、早速で悪いが助けてくれ!!」


 霧の向こうから現れたのは、必死の形相で走る魔術士らしき軽装の青年だ。深緑色のローブのところどころは裂け、薄い金色の髪や顔、体のあちこちに血が付着している。

 手には槍の穂を思わせる刃の付いた短い杖を手にしており、落ち着いていれば端正と言える顔は青褪めていた。死の恐怖から逃げ出している途中なら、当然かもしれない。


「敵意探査に反応、数、十一! ネフェシュ、突っ込みます!」


 言うが早いかネフェシュはアダマストラによって強化された脚力を活かして飛び出し、それにアーリが追従する。一行の中で最速を誇るウパウはアシャの護衛をしつつ、先行した二人が窮地に陥ったら即座に動けるように備えている。

 これまでアーリ達の交戦してきた霧の魔物達であるが、彼らは彼らで捕食する側とされる側とに分かれている。

 例えばキリバチはミツアシにとってはご馳走で、キリバチの針や顎はミツアシの分厚い筋肉の前にはほとんど役に立たず、棘付きの触腕に叩き潰され、一方的に捕食される関係だ。

 よって複数種の霧の魔物達が共に協力してアーリ達に襲い掛かる、という事はまずない。


「来ます、ドクロガミです!」


 ユヴァによってこれまた何とも言い難い名づけをされた霧の魔物は、二本足で大地を疾走する白いオオトカゲだ。アーリの胸に届く体高を持ち、顔は頭蓋骨を被っているように白く硬質化しており、裂けるように開いた口の上下には、人差し指程の牙がずらりと並んでいる。

 ドクロガミの群れは口からダラダラと白濁したよだれを垂らしながら、青年を追いかけてここまで来たのだ。

 飢えた霧の化けトカゲ共は、青年とすれ違いに自分達へ向かってくるネフェシュとアーリに食欲の矛先を向ける。トカゲ共は、獲物のどちらも固い殻を纏っているが、その中に柔らかく上手い肉が詰まっているのを知っていた。


「■■■■!!」


 人間の喉では再現できないような鳴き声を上げて、ドクロガミの群れが二つに分かれてネフェシュとアーリへと襲い掛かり、真っ先にとびかかった一匹はネフェシュの鉄拳に頭部を熟した果実のように粉砕された。


「動きが直線的すぎます! せい!」


 頭を失ったドクロガミの体が吹っ飛ぶその下から二匹目のドクロガミが大口を開き、ネフェシュの左わき腹へと食らいつかんと襲い掛かる。

 ネフェシュはそれを無視して次々と飛びかかってくるドクロガミに鉄拳を叩きつけ、脊髄を砕き、頭部を潰す獅子奮迅の活躍だ。


 そして脇腹に食らいついたドクロガミはこれまで多くの獲物を葬ってきた牙が通じない事に焦っていた、と表現してよいだろう。

 ユヴァの精製した特殊な金属を用いたアダマストラは、霧の向こうからやってきた怪物の牙から、可憐な主人を守り通している。


「七つ!」


 ネフェシュの声と共に食らいついていたドクロガミの頭部を、ネフェシュの左肘と左膝が上下に挟み込み、卵を潰すような呆気なさで骨と肉の塊を粉砕した。

 青年を追いかけてきたドクロガミ達は襲う端からネフェシュに返り討ちにされ、見る間にその過半数を倒されたが、残る四匹はアーリが引き受けていた。ウパウとアシャは青年と合流し、ユヴァは戦局全体を俯瞰している。


「はあ!」


 そしてアーリは四匹のドクロガミを立て続けに相手にしながら、一つの事を試していた。左手の丸盾でドクロガミの横っ面を叩き、右手の小剣で体勢を崩したソイツの首筋を裂く。

緑色の血液がブシュっと音を立てながら噴出し、それが消えてゆくのを見届けて、アーリはぐっと重心を落とす。霧の魔物の良いところは絶命すれば消える事だ。お陰で死んだふりからの不意打ちを受けずに済む。


(ウパウさんの言っていたように“奇跡”じゃなくて“御業”なら工夫の余地がある。僕が【黒ノ一閃】を使う時には鞘から素早く剣を抜く瞬間を想像するけれど、相手を斬るまで加速した状態が止められない。使ったら斬るか、外すまでは止められないのが問題だ。

 しかも一日の一回きりしか使えないんじゃあ、大物食いジャイアントキリングには向いていても、今日みたいな複数の敵と連続して戦うような状況では使いどころが難しすぎる)


 移動中に攻撃向けられてきた際に、それを回避するくらいには制御が効くし、動体視力や思考速度も強化されるのだが、アーリは使い勝手と言う点において工夫の余地を見出していた。


(連続して使用できるくらいに速度を落とすか、あるいは……!)


 黒い光が淡くアーリの体を輝かせる。アンシャナに授けられた【黒ノ一閃】が発動する前兆だ。より濃い黒へと変わる時、御業が発動するのだが、アーリはこれを今のままで留めようと試みている。


(鞘から剣を抜くんじゃだめだ。【黒ノ一閃】が発動する。例えば、剣の柄を握る、それぐらいのイメージなら!)


 二匹のドクロガミがアーリを前後から挟み、正面のドクロガミはアーリの首を狙って飛びかかり、背後のドクロガミは左太ももを狙って身を低くして襲い掛かってきた。

 ドクロガミ達は必殺を確信していたことだろう。【黒ノ一閃】ほどではないにせよ、瞬き一つにも満たない刹那だけ加速したアーリが、全神経を尖らせながら小剣を振るってさえ来なければ。


「つっ!?」


 アーリは狙い通りに【黒ノ一閃】の発動前状態で踏みとどまり、目の前のドクロガミの首を跳ね飛ばす事に成功したが、小剣の一振り、踏み込む一歩ごとに【黒ノ一閃】発動スレスレにまで踏み込み、制御に関して大きく神経を割かねばならず、精神的な消耗を強く強いられていた。

 たたらを踏んで次の行動への間が開くアーリへ、背後のドクロガミは間合いを取り直して今度はアーリの首を後ろから食らいつくべく二本の脚で思いきり跳躍する。背筋に走る殺気に、アーリは集中を乱したまま背後を振り返る。

 アーリの丸盾を固定した左腕が裏拳の要領でドクロガミの左足にあたり、ドクロガミの軌道を逸らす事に成功して、霧の化け物は狙いを外して頭から地面に激突した。


「この!」


 もつれる脚に活を入れて、アーリは押さえつけるように立ち上がろうとするドクロガミに襲い掛かり、その胸元へ小剣を思い切り突き込む。

 ドクロガミが激痛に耳障りな悲鳴を上げ、伸し掛かるアーリの体を必死にどかそうと足掻く。それをアーリは渾身の力で抑え込んだ。ドクロガミの必死の抵抗が不意に消える。死に伴う消滅だ。

 そのまま倒れ込みそうになり、アーリは背筋に走った悪寒に従ってそのまま飛び込むように前転した。ガチン! とアーリの頭の会った場所をドクロガミが音を立てて牙を噛み合わせている。下手をしたら兜を貫通した牙が、アーリの側頭部に突き刺さっていただろう。


「間一髪かっ」


 アーリはドクロガミが再び狙いを定める前に何とか立ち上がり、上手く力の入らない足を叱咤して両手で握り直した小剣で斬りかかる。ドクロガミもまたアーリを狙って飛びかかってきて、アーリは避けずに一瞬でも早く自分の刃を叩き込む事だけに集中した。


「おおお!」


 アーリの咆哮に呼応するかのように小剣を漆黒の光が包み込み、ドクロガミの左首筋から右足の付け根付近を両断する斬撃は凄まじい速さで霧の化け物の命を絶った。

 ずるりとドクロガミの体がずれ、アーリは斬撃のみが加速した一撃に目を見張る。【黒ノ一閃】のもう一つの応用、部分的な加速が図らずも成功したのだ。


「お見事ですな、アーリ殿」


 思わず大きく息を吐くアーリに、残る最後のドクロガミの頭部を棍で砕き、霧に還したウパウが声を掛ける。最後のドクロガミはアーリの隙を狙っていたのだが、それをウパウが始末したわけだ。

 アーリもそれに気づいて、自分の未熟さを思い知らされて大きく息を吐く。


「ウパウさん、すみません。まだ一匹残っているのを失念していました」


「なに、それをフォローするのが仲間というものです。それに大きな失態へは繋がりませんでしたからな。それと霧の魔物共と戦い始めてからいろいろと試しておられたようだが、一つ壁を来られましたかな」


 アーリが先程、三匹目のドクロガミを切り裂いた漆黒の斬撃の事だ。アーリは右手の小剣をまじまじと見つめ、力強く頷き返す。


「はい。得るものはありました」


「ふふ、窮地にて新たな奥義に開眼するとは王道ですな。ネフェシュ殿もつつがなく骨を被ったようなトカゲ共を始末し終えたようで、まずは善哉善哉。となりますと問題はあちらの御仁ですか」


 ウパウがいうあちらの御仁――アーリ達に助けを求めてきた魔術士風の青年だが、顔も服も血に濡れた青年はドクロガミの全滅を確認すると、満面の笑みを浮かべた上でアーリへと駆け寄ってきた。


「ああ! ありがとう、心の友よ! あの気味の悪い化け物共に追いかけられてまるで生きた心地がしなかったが、君達のお陰で助かったよ。

 ありがとう、ありがとう、本当にありがとう! 私はミラギ、こう見えて三つ星の冒険者さ。生憎と仲間は全滅してしまったがね!」



 仲間が全滅したと自ら口にしながら、満面の笑みを浮かべるミラギを奈落の底から見るアンシャナは素直な感想を大きな声で漏らした。


「うわ、うっさんくさ! アーリ、そいつ絶対に怪しいよ。簡単に信じちゃダメなんだからね! うわ、でもどうしよう、僕が神託として伝えちゃっていいものかなあ? いざとなったら警告を出せるように備えておくぐらいかなあ。

 ああ、やきもきするううう。何でもかんでも答えを教えてあげられたらいいのに、いくらでも力を与えられたいいんだけど、それをしたらアーリ自身が成長しないし、アーリの為にならないし……。

 ああ、アーリ。私をここまで悩ませる相手は君だけだよ」


 アンシャナはほうっと溜息を吐きながら、濡れた瞳でミラギに手を握られてブンブンと振られているアーリを悩まし気に見るのだった。

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