まめつする

終わりへ

 窓の下には橋が見える。

 コンクリートに覆われた川、茶色が買った底の見える流れ。


 目を上げれば、山の斜面に置かれたように建つ建物と、その下を走るモノレールが見える。


 もう、故郷ではないのだ。


 流されるように、安アパートの一室へと転がり込んだ。

 手に職はなく、少しずつ減っていく通帳の数字を、崖の下を覗き込むように、俯瞰的に、或いは他人事のように見ている。


 希望はなく、もしこの瞬間に死が訪れるとして、それは幸福なのではと、考える事がある。


 私は、意味のない人生だったと。


 荷解きしない、する気の起きない段ボールを眺めるたびに、そう思う。

 藻掻くように買い漁った、高価な書籍達。


 自動販売機の缶コーヒーを忌避するような私が、二枚三枚と札を数える本を、躊躇なく買っていった。


 未来には、これを読み、知識を得て、社会を渡る、明晰なる自分を妄想していたのだ。


 それが文となり、本となり、万人に遍く行き渡り、富となって還ってくると。

 痴呆のように、蜃気楼を見ていたのだ。


 今、虚しく。

 今、西日の光を、独り浴び。


 ただ、今に浸る。


 亡者でもさ迷い歩くものだが、ただ、肉の置物となった私は、亡者にさえ劣るのだろう。


 死んでいない。

 だが、それだけ、ただ肉となって、在るだけ。

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