あと少しの部屋

 目の前にはペンが転がっている。

 フローリングの床、褪せた西日。


 目覚ましを設定した時間よりも、スマホの時間は早い。


 何もすることが無く、何かをしようと言うこともない。


 一週間前まで続いていた習慣を、ただ繰り返しているだけ。

 この時間に起きて、目を開け続ける意味なんてない。


 何もしないことを、苦痛と感じなくなった。


 ドア開けて、外に出れば、晴れた景色が広がっているだろう。

 この六畳間の世界に座っていれば、また、夜が来るだけだ。


 雨が降ってもいい。

 雪が降ってもいい。


 濡れても、また帰って来るだけだから。


 空想の外を歩く。


 帰って寝て、また尽きて終わる日を恐れる。


 恐れる、恐れるんだ。


 何で、私は恐れなければならない?


 簡単だ、そう、簡単なことだ。

 それができないから、明日を、未来を恐れるんだ。


 それは意味のあることだろうか。

 それは耐えなければいけないことだろうか。


 世界は、ここだけじゃないはずだ。


 さあ、行こう。


 そして、いつものように、天井を見上げた。

 一息吐いて、空虚な熱狂は去った。


 また、夜が明けるのを恐れ、尽きるのを恐れなければならない。


 希望は無い。


 また、いつもが、あと少し。


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