4-4

 福田さんの第4局が始まった。

 ここまで1勝2敗。後がない戦いではあるけれど、相手だって五分にはされたくないはずだ。

 と、当然タイトル戦も気になるのだが、もっと気になる情報が飛び込んできた。

「これ、本当でしょうか」

「うーん、でも最近の元横綱のつぶやきとは合致しているんだよなあ」

 それは、武藤さんからのメールだった。それは、「鷹昇龍の甥が研修会に入るらしい」というものだった。

 研修会というのは各地にある研鑽の場で、奨励会や女流棋士を目指す子供たちが多く在籍している。入るのが無茶苦茶難しいというわけではないが、元横綱の親戚ともなれば注目されることだろう。何より……

「初のモンゴル人、か」

「奨励会にもいないんですよね」

「聞いたことないなあ。たぶん外国籍の男性棋士もいないんじゃないかな」

 戦前のことなどはよくわからないので、これからデータ将(データ好きな将棋ファン)などが詳しく調べることだろう。ちなみに、かつて奨励会に外国籍の人が存在していたのは僕も知っている。

「やっぱり、甥っ子のために鷹昇竜さんも将棋の勉強してるんでしょうか」

「そうだろうなあ。努力の人だし、何より負けず嫌いだろうから、甥っ子に勝つつもりでやってるのかも」

「元横綱の将棋強豪とかすごいことになりそうですね……」

「前に座ってるだけで威圧感があるだろうなあ」

 なにせ、つぶやきだけでも気圧されているぐらいである。

「外国にも将棋広まってますね」

 美鉾がいい笑顔をしている。



<ネタ将ってなんだよ>



 そんな中、元横綱がとんでもないことを言い出した。最近みんな、将棋をし始めてからネタ将にたどり着くまでが早い。



<横綱なんでだよ>

<最悪の人に見つかったぞ逃げろ>

<違う、俺はネタ将じゃないから張り手しないで!>



 将棋ファンも騒然である。

 もしやと見てみたら、やっぱり。ネタ将リストに入れられていた。過ぎた悪ノリ!



<@takasyoryu ネタ将というのは、将棋に関する面白いと思うことを投稿したり、お題に対してタグを使って皆で投稿する人たちの総称です。>



 そして出てくるマジレスする人。



<なんだよ、俺ネタ将じゃないよ! 本気だよ。>



 大変なことになってしまった。ただ、アルパカが巻き込まれていないのが不幸中の幸いである。

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