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 最悪だ。

 考えてみてほしい。祖父から、「ネタ将になりたい」と言われた孫の気持ちを。

 しかも私は、いまだにネタ将をよく思っていない。刃菜子ちゃんのことはしぶしぶ認めたけれど、それでもいつでもネタ将をやめてくれれば、と思っている。

 それなのに。

「色々調べたらな、関奈はネタ将というやつらしいじゃないか」

「誤報です」

「違うのか?」

「私は断じてネタ将ではありません」

「でも、ネタ将は『私はネタ将ではない』と言うらしいぞ」

 おじい様、実はすごく詳しいのでは……

「そうかもしれませんが……」

「わしもな、もう体もあんまり動かん。こうして座りながら、スマホでネットサーフィンするのが日課での。もしネタ将とやらになって孫たちと交流できるなら、安心して死ねると思ったのだが」

「ネタ将は体にも心にも良いものではありません」

「はは。酒もたばこもそう言われて、辞めずにここまで生きとるからの。今更一つ増えたぐらいで」

「ネタ将はなろうと思ってなれるものではありません」

「関奈、女流棋士を目指すとき、自分で言ったことを覚えとるか?」

「……」

「『なれないとしても、目指すんです』と」

 完敗だった。口ではおじい様に勝つことは無理だ。

「わかりました。でも、私に協力できることはないですよ」

「そうなのか? でも、毎日面白い投稿をしているじゃないか」

「え?」

「短文投稿っていう奴な、あれも見てる。すごく面白いぞ。面白い人格を作って、読み手を楽しませようという気概にあふれている。さすがわしの孫だ」

「いや、普通に思ったことを書いているだけなのですが……」

「そうなのか?」

「そうですよ」

「そうか……関奈、お前……変な奴だったんだな」

 いろいろと納得がいかない。やっぱりここは、居心地が悪い。

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