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<皆様、過度の水垢離はやめましょう。そこまでしなくとも、きっと思いは届きます。>



 中五条さんが注意を呼び掛けるつぶやきをしている。彼女が水垢離して以来、福田さんファンの中から真似する人が現れたのだ。

 そんなわけで……


<水風呂 #水垢離の代わりチャレンジ>

<アイスバケツ食い #水垢離の代わりチャレンジ>

<断スクショ #水垢離の代わりチャレンジ>


 早速大喜利が始まっていた。ネタ将は今日も元気です。

「うーん、うーん」

「どうしたんだ」

「これは皆、実際にしてるんでしょうか。それともネタなんでしょうか」

「ネタ将だからネタじゃないかなあ」

「でもネタに本気な人たちですから、本気でネタをするかもしれません」

「そうかなあ」

 僕はと言えば、詰将棋に苦戦していた。なんと新里さん、解答はくれなかったのである。「四段記念に世界で最初に解かせてあげるで」というありがたいお言葉をいただいた。

 そして、難しい問題が多いのである。短手数でも一工夫があるし、長手数はもう長手数なりの難しさである。ファン向けの問題ということを考えても、僕が解けるレベルじゃないといけないだろう。

「兄様、盤を出して考えるんですね」

「詰将棋は断然アナログなんだよね、不思議と」

 駒を動かしながら考えると、頭の中はもちろん、パソコンの盤面よりも断然考えやすい。とはいえ、答えが分かるのとは違う。

「ふう……作為的にはきっとこうで……限定打ちで……うん、正解だろうな」

「なんか、文字みたいですね」

「えっ」

「カタカナの『ル』に見えます」

「……本当だ。……え、まさか」

 今解いていたのは、二つ目の問題だ。一つ目の問題をもう一度解いてみる。解きあがりの局面が、「ア」になっていた。

「なんて人だ……」

 三問目は「パ」、四問目は「カ」。なんと、続けて読むと「アルパカ」になるのだ。

「会長が話をしてから二日しか経ってないのに」

「すごいんですか?」

「すごいんです。超人的です」

 新里先生の詰将棋能力は予想をはるかに超えていた。

「その熱意……ネタ将に通じるものがありますね!」

「そうかなあ」


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