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「フェー。フォー。フェェェェン。フェーン。……んー……」
「兄様、やはり早くも限界が……」
「いや、アルパカの鳴き真似をしてたんだ。やっぱりキャラは語尾に特徴付けるのがいいだろう」
「アルパカ一択です」
「え?」
「アルパカの鳴き声、誰が知ってるんですか。ウサギはピョン、タヌキはポンポコ。キリンの語尾はたぶん『キリン』です」
「漫才しそうだな……」
「アルパカはみんな見た目しかわかりません。リアルな鳴き声にしてもしらけるだけです」
妹に諭されている。しかし本当にいいんだろうか、語尾がアルパカで。
「うーん」
「キャラとはそういうものです。だいたいアルパカは詰将棋をしません」
「元も子もないなあ」
「割り切りましょう。そして中の人のプロを目指しましょう」
「わかったでアルパカ……」
「ああ、すごい上手い絵ばかりです……」
「本当だ」
その一方。ネット上では「#棋グルミ選手権」というタグが流行っていた。
福田さんの着ぐるみ姿を期待した? ファンが、せめてもと着ぐるみ姿の絵をアップしたのが発端である。
最初は動物やゲームキャラなどの着ぐるみ絵だったが、いろんなものに包まれたいろんな棋士の絵へと広がっていった。
将棋ファンの中には「描く将」と呼ばれる、将棋の棋士などを題材に絵を描いてアップする人たちがいる。描く将でネタ将の人もいるので、面白くて上手い絵なんかもよく見かける。
「兄様……絵心が欲しいです……」
美鉾がめそめそしている。
「美鉾、生まれながらの有段者はいない。欲しいなら、勝ち取るんだ。描くしかない」
「兄様……」
そんなわけで福田さんがタイトルに挑戦する中、妹は絵の練習を、僕はアルパカの語尾を練習するのであった。
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