1-4

「フェー。フォー。フェェェェン。フェーン。……んー……」

「兄様、やはり早くも限界が……」

「いや、アルパカの鳴き真似をしてたんだ。やっぱりキャラは語尾に特徴付けるのがいいだろう」

「アルパカ一択です」

「え?」

「アルパカの鳴き声、誰が知ってるんですか。ウサギはピョン、タヌキはポンポコ。キリンの語尾はたぶん『キリン』です」

「漫才しそうだな……」

「アルパカはみんな見た目しかわかりません。リアルな鳴き声にしてもしらけるだけです」

 妹に諭されている。しかし本当にいいんだろうか、語尾がアルパカで。

「うーん」

「キャラとはそういうものです。だいたいアルパカは詰将棋をしません」

「元も子もないなあ」

「割り切りましょう。そして中の人のプロを目指しましょう」

「わかったでアルパカ……」



「ああ、すごい上手い絵ばかりです……」

「本当だ」

 その一方。ネット上では「#棋グルミ選手権」というタグが流行っていた。

 福田さんの着ぐるみ姿を期待した? ファンが、せめてもと着ぐるみ姿の絵をアップしたのが発端である。

 最初は動物やゲームキャラなどの着ぐるみ絵だったが、いろんなものに包まれたいろんな棋士の絵へと広がっていった。

 将棋ファンの中には「描く将」と呼ばれる、将棋の棋士などを題材に絵を描いてアップする人たちがいる。描く将でネタ将の人もいるので、面白くて上手い絵なんかもよく見かける。

「兄様……絵心が欲しいです……」

 美鉾がめそめそしている。

「美鉾、生まれながらの有段者はいない。欲しいなら、勝ち取るんだ。描くしかない」

「兄様……」

 そんなわけで福田さんがタイトルに挑戦する中、妹は絵の練習を、僕はアルパカの語尾を練習するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る