変化26.一夜明けて

 朝が来た。


 新しい朝……と言っていいのか、とても清々しい気分になっている。


 普通に賢者タイムってのもありそうだけど、そういう意味じゃない部分でも気分がスッキリとしていた。


 一夜明けて、僕の隣にはすやすやと寝息を立てる佐久間さんがいた。天使の様な可愛らしい寝顔だ。


 本当に……彼女としたんだよなぁ……。


 初めての時の失敗がフラッシュバックして、今回も失敗してしまうかと思ったんだけどそれは大丈夫だった。


 と言うか、色々と佐久間さんが凄かったんだよね。


 彼女自身も初めてなのに、まるで初めてじゃないように熟練されたテクニックの数々を僕に披露してくれたのだ。


 昔はお互いに初めてで慌てて、何もできなかったんだけど……。今回は情けなくも佐久間さんにリードされた形だ。


 いや、ホントに初めてなんだよね? って言うくらいに色んな事をされてしまった。


 もう僕、お婿行けない。


 佐久間さんに貰ってもらうしかないわこれ。


「お姉さん達から教わったって……何者なんだよお姉さん達……」


 これはお礼を言うべきなのか苦情を言うべきなのか。どちらにせよ、お会いする時にはとても気まずい思いをしてしまいそうだ。


「んっ……」


 寝息を立てていた彼女が身じろぎをする。吐息が漏れ、それからゆっくりと目を開く。


「おはよう、霧華さん……霧華」


 クセでさん付けをしてしまったが、慌てて僕は呼び方を変える。しばらくは意識的にやらないと呼び捨てを定着させるのは難しそうだ。


「おはよ、タケシ。先に起きてた?」


「いや、今起きたところ……」


 僕等は少しだけ無言で見つめ合って、それから全く同時に頬を赤く染める。


「し……しちゃったね……」


「そ……そだね……えっと……」


 何を言っていいかもわからず、僕は思わずしどろもどろになってしまう。それは彼女も同様だったようで……。


「今日はどうしよっか?」


 思わずそんな一言を漏らしてしまう。完全にノープランだったけど、佐久間さんは恥ずかしそうに布団に顔を隠したままで呟いた。


「ちょっとその……先にシャワー浴びてもいい?」


 あぁ、そうか。気が利かなかった。そうだよね……。


「そうだねちょっと準備してくるから、待ってて。あったまるまで5分くらいかかると思うから」


「うん、ありがと」


 それから、僕は佐久間さんを残して風呂場の準備をした。全裸のままでちょっと間抜けだったけど仕方ない。僕も身体がベタベタなので後でシャワーを浴びないとな。


 結論から言うと……佐久間さんは本当に初めてでした。


 いや、疑っていたわけじゃないんだけどね。その点はとても安心した。


 でも、色々とその結果を見てしまって視覚的にも僕は衝撃を受けていたりする。そこで止めようかとも思ったんだけど、彼女は大丈夫と言って僕を受け入れてくれた。


「今日はベッドシーツとか色々と交換しないとなぁ……」


 みんな、行為後はそういう時どうしてるんだろうか? シーツだけ取り替えて洗濯? それともクリーニング?


 いや、行為後の物をクリーニングに出すってお店の人も嫌だよね?


 童貞でする事に関しては色々と調べてたけど、行為後に関しては全く調べていなかった。後処理について調べないと……。


「用意できたよ、どうぞ」


「うん、ありがと……」


 そう言って身体にタオルを巻きつけて移動しようとする佐久間さんの動きが、ちょっとぎこちなく見えた。なんか捻挫した時みたいにひょこひょこと歩きづらそうにしている。


 ……あれ?


「霧華……霧華、捻挫でもした? 足痛い?」


「いやその……痛いのはちょっとその……違うところで……ちょっとその……」


 言いづらそうにしている彼女を見て、僕は察してしまった。たぶん、僕は分からない痛みだ。男は初体験で痛いわけじゃないから……。


 僕はそのまま彼女に近づいて、スッと抱えた。いわゆるお姫様抱っこの体勢だ。


「どこがとは言わないけど……痛いんでしょ? 運ぶよ。揺れないように」


「あ、うん……ありがと……恥ずかしいけど……お願い」


 そのまま僕は彼女を運んで、そのままお風呂場に移動する。シャワーを浴びて


 流石に一緒に入るのは自重した。身体を隠していたんだから、色々と彼女も見られたくない物もあるだろうし。


 だけどまぁ、あれだね。


 せめてパンツくらいは穿くべきだった。全裸でお姫様抱っことかシュールすぎたな……。

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