変化15.自己紹介
「霧華さん。こいつは僕の大学でできた友人で、
「はじめまして、西園和也です。西園でも和也でも残念男でも見た目詐欺でも好きなように呼んで下さい。基本的に三次元女子にどう呼ばれても気にしないので。よろしく」
胡坐をかいて座っている和也は、そのままの姿勢でペコリと頭を下げながらかなりひどい自己紹介をする。
後半の二つは、和也に告って断られた女子が彼に対して放った言葉である。
それに対してこいつは、勝手に期待しといて勝手に失望するとか、三次元の女はやはりクソだなと気にした風もなく吐き捨てていた。
「んで、和也。この人は
「よろー!! さっきも言ったけどキリカでーす!! あ、でも名前呼びはタケシだけにして欲しいからさ、苗字で呼んでねー? ウチも西園クンって呼ぶねー」
佐久間さんは笑顔を浮かべて、元気に片手を上げて和也に自己紹介をする。
名前を俺だけに呼んで欲しいってちょっと、いや、だいぶ可愛いことを言われたのでキュンとしてしまったのは内緒だ。
和也はその答えに特に何の感想も無いのか「うん。佐久間さん、よろしく」なんて言って笑顔を浮かべた。
こいつの笑顔、冷たそうに見えて割と怖いんだけど、佐久間さんは気にした風は無くニコニコしている。
和也は見た目がチャラい上に目つきが鋭いから誤解されやすいけど、佐久間さん的にも問題が無さそうでよかった。
なんでこんな自己紹介をしているかと言うと……結局あの後、和也にはご飯を食わせてやることになった。
僕達もご飯の途中だったということもあったんだけど、こいつを追い返したら誤解を解くことなく訳の分からない状況になってしまうから帰すわけにはいかない。
だけど、僕達だけご飯を食べてこいつには食べさせないとか、飯をたかりに来たやつとは言え酷すぎる所業だろう。
そもそもこいつが我が家に飯を食いに来ることは割と多い。
たぶんまた、推しのバーチャルアイドルとやらに貢いで給料日まで火の車とかそんな所だろう。だから生活費は残せと言っているのに。
なのでまずは、三人で食事をすることとした。
まぁ、二人で家に入ったら佐久間さんは服の上からエプロンを装備して、既に和也の分の食事を用意していてくれてたんだけどね。
『内助の功ってやつだねぇ』
とか言いながらピースサインをしていた。ちょっと誤用な気もするけど可愛いから良いや。
「それでさぁー、西園クンさっき叫んでた浮気者ってどーゆー意味? 西園クンがタケシの浮気相手って意味じゃないんだよね? BL展開じゃないんだよね?」
「あー、佐久間さん? 俺は佐久間さんと呼ばせてもらおう。佐久間さんそれは違う。俺とこいつは同じサークルの友人ってだけで、BL展開じゃない。つーか佐久間さん、BL通じるんだ」
「そりゃ、もともとタケシと知り合ったのもそっち関係だしねぇ。懐かしい思い出だなー、聞きたい?」
「三次元の惚気には興味ないのでお断りしとく」
いったん話を途切れさせると、和也はコーヒーカップに用意された暖かいお茶を飲む。それから、少し気持ちを落ち着かせるように一息つく。
「まず、俺の嫁はシャツに輝くこのマーレちゃんだ。基本的には百合もショタもBLも作品として面白ければ何でもイケるけど、三次元には男女ともに恋愛感情は抱かないから、そこは安心してもらっていい」
「そうなんだー。可愛いもんねマーレちゃん。私も見てるよー。ホラー配信の時の叫び声とかスキー」
「佐久間さんは良い三次元女性だ。剛司はこんな素晴らしい彼女を持てて幸せ者だな」
和也の言葉に、佐久間さんは照れながらも喜んでいた。三次元女性って言い方はアレだけど、お前、女性を褒めることできたんだな。
いや、僕の彼女だからそう対応してくれているだけか?
そして照れる佐久間さんに対して、和也は言葉を続ける。
「佐久間さん、剛司は大学では割とモテるほうで、何回か告白されたことも俺は知っている。だけどそれを全て『遠距離だけど最愛の彼女がいる』と恥ずかしげもなく一蹴しているので安心してほしい」
「余計なことを言うな。それに俺を浮気者と疑ったお前がそれを言うか……。いや、別に俺モテてないぞ?」
「告白は事実だから良いだろ。そのおかげで、お前に言い寄る女なんてほとんど居なくなってるんだ。だから、
お前さっき俺の事浮気者って言ってたじゃねえかよ。と言うツッコミを僕はグッと飲み込んだ。
そこまで言って、和也はチラッと佐久間さんの方を見る。佐久間さんは相変わらず嬉しそうな表情をしている。
僕、モテてるのか? 確かに2~3回くらいは告白されてるけど、20回以上告白されてるこいつにモテてるって言われてもなぁ……。
「でもじゃあ……なんで浮気者?」
和也の言葉の不自然さに、気づけば佐久間さんはちょっとだけ不安そうになっていた。
世の中には彼氏がモテると喜ぶ女性もいるというけど、どうやら佐久間さんは違うようだ。
その疑問に、和也は続きは僕から話せと目配せしてくる。
分かってるよ。ここからは僕の番だ。
「霧華さん、ごめん。和也が浮気者って言った原因はコレなんだ」
「コレって……私の昔の写真?」
「そう。和也はこの写真を見て霧華さんを僕の彼女と思ってた。そして、今の霧華さんを見て僕が浮気してると勘違いしたいんだ」
その言葉に、彼女は安堵するように大きく息を吐きだした。思ったよりも、彼女は浮気の言葉を気にしていたようだ。
だけど本題はここからだ。
僕は和也に視線を送ると、和也はお前の好きにしろと言わんばかりに小さく頷く。
「霧華さん、昨日は聞けなかったけど良いきっかけだから聞くよ。なんで……そんなに変わっちゃったの?」
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