変化9.苦手な理由
そう、実を言うと僕はギャル系女子が苦手なのである。
黒ギャル、白ギャルなど色々種類はあるけれど、ギャル系だと認識してしまったらダメなのだ。
なぜ苦手かと言うと、それは僕の個人的な体験……佐久間さんと出会う前、中学の時の記憶に起因している。
僕はとある出来事がきっかけで、ギャル系の女性が苦手になってしまったのだ。
まぁ、大した話じゃない。本当に、今にして思えばとるに足らないつまらない出来事だと思う。
その出来事を一言で言うならば、オタクに優しいギャルなんて幻想だったって言う話なのだ。
僕はそれを中学の時に、少し早めの現実という名の壁にぶち当たった。だから何となく、そういう人達には苦手意識を持ってしまっていた。
そこからはまぁ、普通のオタク街道まっしぐらだ。別にギャルが苦手だからオタクになったわけじゃないけど。とにかく、もともと好きだった二次元に生きた。
そして僕は高校生の時に佐久間さんに出会い、分不相応にも佐久間さんを好きになった。
仲良くなったきっかけは好きな漫画が同じで、ひょんなことから彼女も割とオタク気質だったという事を知ったからだ。
好きになるのに時間はかからなかったけど、なかなか告白はできなかった。
それから僕は、どうせフラれても良いやくらいの勢いで、勇気を出して彼女に告白し、彼女はそれを慈愛に満ちた笑顔で承諾してくれた。
最初はドッキリ? とか思ったけど、彼女も僕の事が好きだと言ってくれた時は泣いた。
とにかく泣いた。嬉しくて泣きすぎて次の日に「告白したけどフラれた」とクラス中に噂が立つくらい泣いた。
そんな自分の彼女が……まさかギャル系になるなんて誰が予想できただろうか。
遠距離恋愛だから、少しは関係性とか何かが変わることは覚悟してたけど。変わりすぎでしょ。
僕も思い切って大学デビューはしてるけど、佐久間さんのはそれ以上だ……。彼女の
夏休みになったら、一緒に色んな所に行きたいと思ってたんだけど。趣味が変わってたならちょっと残念かもしれない。
そういえば……。
ギャルといえば思い出すのは、高校の時の数少ない友人から渡されたエロ本やらエロDVDの類だ。
佐久間さんと付き合うようになってから、会話の流れで僕がギャルが苦手と言ったら『それは勿体ないぞ!! 俺がおすすめのギャルもの貸してやるから目覚めろ!! というかしばらく置かせてくれ!! ちょっとヤバいんだよ今』とか言って押し付けてきた。
浮気になるみたいで嫌だったし、彼女が居るから要らないと言ったのに……半ば無理矢理に押し付けられたっけ。
あれは確か渡された小さなダンボールに入れたまんまで、ほとんどろくに見なかったんだよな。
正直に言って、表紙はちょっと……。いや、男としては割と惹かれるものはあったんだけど、どうしても中学の時を思い出してダメだった。
読んでみたらトラウマからなのか、身体が震えて変な脂汗が出るのだ。きっと精神的な拒否反応だろう。
「苦手」の部分が自分で思ったよりも重傷だったのは、自分でもビックリだった。
……引っ越しの荷が崩れた時は佐久間さんに見られてないか焦ったけど、結局あのダンボールは引っ越し前に返したんだっけ。
なんか『特にお気に入りの一冊が無い!! そうか……お前も目覚めたか。あれは餞別にやるよ!!』とか言ってたけど。たぶんあいつの入れ忘れだろう。
あれ、そう言えば。
「佐久間さん……いや、霧華さんがギャルのカッコしてても、ぜんぜん拒否反応出なかったな……?」
そうだ、普通に僕は佐久間さんと話ができていた。
ギャル系の人を別に見たりする分には問題ないんだけど、話しかけられたりすると変な汗が出て、触れられると震えてしまうのに、佐久間さん相手だと全くそれが出なかった。
彼女に上に乗っかられた時も慌てはしたけど脂汗は出なかった。むしろドキドキとして、彼女から目が離せなくて……。
これは僕、ギャル系の人も平気になったという事なのだろうか? そう思ってパソコンを使ってそういう画像を少し漁って見てみるんだけど……。
ダメだった。
写真を見たら変な汗がぶわっと噴き出してきた。完全にトラウマが刺激されてしまっている。
「……好きな人相手なら、どんな格好でも平気という事なのか?」
ギャル系ギャル系と一括りにしちゃってたけど、ギャルである前に佐久間さんは佐久間さんだ。
それを無意識にでも感じ取って、平気だったんだろうか。もしくは驚きすぎて、拒否反応が出る間も無かったという事か……。
まぁ、深く考えてもしょうがない。それよりも、佐久間さん相手ならギャル系も平気だという事を喜んでおこう。
いや、彼女に対して拒否反応が出るとかお互いに気まずいし凹むからね。
……たぶん、あの時と同じくらい凹むだろうな。
嫌なことを思い出しちゃったし、気持ちを切り替えるかな。
「風呂でも入って今日は寝るか……。明日からずっと一緒に過ごせるんだ、なんで黒ギャルに変わったのかはその時にでも聞こうか」
それと、この休みの間に初体験……済ませられるかなぁ。なんて、ちょっと期待してしまう。
そのまま僕はスマホをベッドに放り投げて風呂へと向かう。そう言えば、風呂掃除もしてなかったな……掃除してからになるか……一人暮らしだとそれが面倒だなぁ。
風呂の掃除をしてお湯が溜まるまでの間、居間に戻った僕はスマホを手に取る。佐久間さんからメッセージが来ていた。
その送られてきた佐久間さんの写真にを見て、僕はひっくり返った。
彼女はお風呂上りにバスタオル一枚で、妙に胸元を強調した写真を送ってきたのだ。
「使っていいよ……じゃないよ霧華さん……。」
こんな写真送ってくるとか、やっぱり変わりすぎだよ佐久間さん!! 君に何があったのさ……?
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