変化2.小麦色の彼女
旅立っていった彼女の後姿を、僕はいつまでも眺め続けてたんだけど……。彼女の乗った飛行機が飛び立った後に空港を後にする。
そして僕は、彼女の別れ際の言葉に帰宅してから不安に駆られることとなってしまう。
これは本当に盲点だった。
そうだよ、浮気だよ。
いや、僕が浮気すると言う話じゃないんだ。僕は浮気なんかしない。そもそも浮気するほどになんてモテないからその心配は無い。
佐久間さんの話だ。彼女はとても優しく、裏表なく、魅力的な女性だ。スタイルだっていいし、そのコロコロと変わる表情だって可愛い。
とにかく、最高の女性なのだ。僕の彼女だというのが奇跡と言えるくらい。
そんな彼女が田舎から都会の大学に行って……他にもっと魅力的な男性を見つけたらどうなるだろうか?
いや、基本的に真面目な彼女は浮気なんてしない。それは確信している。絶対だ。
でも、僕との関係を終わらせて新しい恋に生きるとか……そういう可能性はあるんではないだろうか……?
よく漫画でもあるじゃないか。遠距離恋愛ゆえのすれ違いからの破局。
漫画だとその後なんやかんやあって復縁したり、そもそもギリギリで破局しなかったりするけどコレは現実だ、何が起こるか……。
いや、何を考えているんだ。ネガティブなことを考えるな。
彼女を信じて送り出したんだ、彼女を信じなくてどうする。
僕にできるのは……こまめに連絡を取ることと、彼女にそういう男性ができないよう、好きでい続けてもらえるよう努力することだけだ。
そうだ、僕は強くならねばならない。
佐久間さんと次に会う時に、彼女がビックリするくらいに変わった姿を見せる。彼女に並び立てるくらいの男になるんだ!
……在学中にやっておけよって話もあるけど。ずっと一緒にいたからどこか甘えがあったんだろう。
こうやって離れたことでよくわかった。僕がどれだけ甘えていたか。
だからまずは第一歩だ。僕は佐久間さんを信じて送り出したんだ。僕が彼女を信じ切らなくてどうする。
これが彼女と最後に会った日の出来事で……僕はそれから自身を高めるための努力を続けた。
大学生活も積極的に友人を作り、色んな集まりにも顔を出したり、とにかく彼女に心配かけないように生活した。
もちろんこまめな連絡も忘れない。遠距離恋愛なんて初めての経験だけど、束縛し過ぎないよう、だけど彼女を寂しがらせないように……。
僕はできることをすべてやった。すべては僕自身と彼女のために。
そんな風に、彼女に再会する前には思っていたんだけどさ……。
「イェーイ!! タケシー!! 会うのチョー久しぶりだよねぇ!! 私が居ない間、浮気してなかったー? 女とか連れ込んで無かったろうねぇ?!」
目の前では、見知らぬ女性が僕の名前を呼んでいる。
確か今日は佐久間さんが帰ってくる日で、空港に迎えに来たと思ったら目の前の女性にいきなり声をかけられて……。
「……えっと……どちら様ですか?」
「むー!! 彼女の顔忘れるとかヒドくなーい? 私、キリカだよー!!」
ふくれっ面をしながら、大げさなオーバーリアクションをして彼女は自身の名前を僕に告げる。
……キリカ……キリカ……。
いや、その可能性を考えなかったわけじゃないんだよね。だって僕の名前を呼ぶ女性なんて佐久間さんくらいだ。
「さ……佐久間さん……?」
「苗字とか他人行儀すぎなーい? タケシはウチの彼氏なんだから、キリカって呼んでよー!!」
混乱した僕は頭の中に思った疑問をそのまま口にする。確かによく見ると、佐久間さんの面影がある。面影はあるんだけどさ……。
黒髪は綺麗に茶色に染められている、何もついていなかったはずの耳にはキラリとハートのピアスが付いている。
そして、以前は肌をあまり露出していなかったのに、やたらと露出の高いヘソやら生足やらを出したけしからん服装、今まで見たこと無いミニスカだ。
そして……健康的に小麦色に日焼けした肌。
佐久間さんは僕が送り出した時とは、180度違う姿となっていた。
うん……簡単に言うと……久しぶりに会った彼女は、立派な黒ギャルとなっていた。
まって、日々の連絡はいつも通りだったよね?! なんでいきなりそんな変わってるの?! 僕違う次元に来ちゃった?! それとも異世界に転生でもした?!
「んじゃ、タケシの家にいこっか? 一人暮らししてるんだよね? 楽しみー♪」
僕の内心の混乱など知らず、彼女は僕の腕に自身の腕を絡めると、その大きな胸を僕に押し付けてくる。
そのあまりの変わりように、僕はとある一つの可能性に思い至ってしまうのだ。
……これ……佐久間さん……寝取られてないよね?
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