#005 温度

 熱くなった身体に反して、手中の鉄は冷たく重い。持ち主の気持ちとは相反するように、温度が手から脳へと伝わってくる。その感覚がより一層俺の身体を熱くさせている。

 重力にさからって、鉄の塊を顔の前まで持ち上げる。その光景に目の前の奴らは慌てふためくのだ、本物か偽物かなんて関係なく。

 いつからこんな汚れ仕事を始めたのかなんて忘れてしまった。どちらかと言えば、覚えておく方が気持ち悪くなってしまった。誰のためとか何のためにとか思っていると、仕事の邪魔にしかならない。


 きっとその理由を思い出すと綺麗な自分に戻りたくなってしまうから

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