#004 ペンギン

 街中でペンギンに会ったことがあるだろうか。そもそも、ペンギンは人間と同じような気温で生きられるのだろうか。今目の前にペンギンが居ることよりも、そんなことを考えてしまう。

 想定外の現実を目の前にすると、こんなことを考えるものなのか、とふと冷静になってしまうが、どう考えても、目の前にペンギンが居るのはおかしくて仕方がない。動物園から脱走してきたのか、誰かが飼っていたのか、野生なのか。

 いや、この大都会の真ん中で、野生はあり得ない。

 もしかしたら、野生なのかもしれないと思ってしまうほど、混乱しているみたいだ。捕まえようとしたら逃げるだろうか、大人しく捕まってくれるのだろうか。

 いろいろ考えても目の前のペンギンはまっすぐこちらを見るだけだった。怯えもせず、懐くこともなく、ただまっすぐにこちらを見つめている。

 この状況はどのように打破したらいいのだろうか。何か訴えたいことがあるのだろうか。もはや、自問自動になってしまう。まっすぐ見つめるだけのペンギンがこうも僕を惑わせるとは思ってもいなかった。この子は何がしたいのだろう、僕は何をしたらいいのだろう。

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