花に舞う蝶とこわがりな子鹿
ミーシカ・ヌミシカは目覚めました。
「おはよう、お嬢さん」
しゃんと装飾が擦れる音がしました。心地よい香りがして、ミーシカは目を開けました。ここはどこだろう、空腹を感じた一歩あとにミーシカは思いました。そういえばフクロウさんのもとを離れて、妖精の王様に会いに行こうとしていたんだ、ミーシカはゆっくりと記憶を引っ張りだしました。ふと、裾が引っ張られているように感じ、顔を向けました。
茶色い髪をした男の子がミーシカを不思議そうに見ています。隣に女性がいました。衣替えをしている秋の木の葉のような瞳をもっていました。茶色が光を浴びて緑色に見えました。
「私はミーシカ・ヌミシカ!」
心躍ってしまったミーシカは思わず挨拶よりも先に、自分の名前を言ってしまいました。女性はくすりと笑い、手に持っていたカップを手渡しました。
「そして私は
「
ミーシカはお茶を受け取るとふぅっと息をかけ、飲みました。
「
そしてそこには、好奇心いっぱいないつものミーシカがいました。やわらかな香りが部屋に溢れました。
スナトゥアーレはミーシカの質問を聞き、首元のコインを揺らして笑いました。
「私のアクセサリーが舞うたび
真っ赤な上着は蝶のようでした。声は晴れた夏空を飛び回るツバメのように軽やかでした。微笑む姿は草原で花咲かせるスナトゥアーレのようでした。彼女を美しく飾る装飾は、花の雄しべのように輝いていました。
その横に。お下がりなのか、少しぶかついたクリーム色のシャツを着たヴラドがまた、少しづつ様子を見るために、緑色の瞳をのぞかせました。ミーシカ・ヌミシカの深い森のような緑とは違い、晴れた日の湖にうつる青々とした木々のような色をしていました。
花に舞う蝶とこわがりな子鹿。
ミーシカは二人が大好きになりました。
「おばあちゃんのところに行こうとしていたの。でも亡くなってしまったって、ヌミシカが精霊たちが言ってるのを聞いてお母さんのいる家へ帰ろうとしたの。フクロウのソロモンに聞いたら、山に住んでる妖精の王様が帰り道を知っているかもしれないって言ってたのよ! 一緒に王様に会いに行く?」
「変なやつ」
ヴラドぼそり言い放ち、また隠れてしまいました。ミーシカは突然言われた言葉に驚き、
「変なやつ!」
今度は少し大きめな声で言い放ち、小鹿は急いで部屋から逃げてしまいました。ミーシカは走っていくヴラドを目で追いかけながら、不思議な気持ちになりました。けれどもすぐにお腹を抱えて、笑い転げました。
「変なやつ!」
今度はミーシカが言い放ちました。とても愉快な気持ちでした。昨日のことを思い出しかけ、寂しくなっていた気持ちが薄れていました。けれどもその代わりに愉快さと、空腹が「
「さあ、食べにいきましょう」
ひらひらとまたミーシカは蝶に誘われ、寝床から立ち上がりました。
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