第3話 熱愛カップル
「さて、それでは私たちもいきましょうか!!」
マリア達が消えて行った道の先を見ているとソフィアが明るい声で問いかけてきた。
この時カイは自分の態度をどうするか悩んだが、ここでまたソフィアを皇女扱いするとまた脅さ‥お願いされそうだったのでソフィアが予めカイに説明していた設定通りの対応をすることにした。
「そうだねソフィー、じゃまずはどこ行こうか?」
「っ!!」
カイは笑顔で応じるとソフィアに手を差し出す。するとソフィアは急に下を向いてしまった。
〝ん?少し砕けすぎたかな?姫様の言っていた設定通りの対応をしたつもりなんだけど?〟
ソフィアがカイに言った本日二人の設定は
〝恋人〟
だった。
昨日そう言い渡されたカイは悩んだ
今までの人生で恋人などいたことない上女性と二人で町を歩く事などなかった。
いや、勤務中は同じ騎士団の女性騎士と二人になることはあるがそれはあくまで仕事だ。なのでカイは大いに悩んだ、そして仕方なく上司であるマリアに相談したのだった。
するとマリアからは
「え?恋人がなにするか!?え、えっとだな、う、うん、まぁ、あれだ、し、紳士な対応を心がければいいのではないか?うん、そうだな!!な、名前を呼んで手を差し出し、エスコートしたり、あ、あとは‥‥そ、そう!!食事の際には椅子を引いたりしたり、え?あとは?あとは‥‥ええい!!私に聞くな!!他の者に聞け!!」
と何故か後半はキレられたが、せっかくアドバイスをもらったのでその通りにしてみたのがソフィアにはお気に召さなかったようだ。
なにがいけなかったのか考えているとソフィアは無言でカイの手を取った。
それに驚いていると
「い、行きましょ、カイ」
「うん、ソフィー」
若干声が震えているがカイはそのままソフィアが引っ張る方へと歩きだした。
カイは知らない、
カイに見えないよう帽子で隠れたソフィアの顔は真っ赤に染まっていることに‥‥‥
⭐⭐⭐
歩きだして数分カイとソフィアは無言だった。ソフィアが何も喋らずもくもくと進むのでどこか目的地でもあるのだろうとカイは黙っていたのだ。だが一向に止まらずさらにぐいぐいと手に力をいれてくるソフィア、段々とソフィアと繋いでいる手が痛くなってきたカイは口を開くことにしたのだ。
「そ、ソフィー?今日はどこにいくの?」
「っ!!」
「わっ!?」
「へ?きゃっ!!」
カイの言葉を聞いたソフィアは急に止まった。いきなり止まるのでカイのほうも静止が効かず前を歩くソフィアの背中にぶつかる。驚きソフィアも普段なら絶対出さない声を出してしまう。
「あ、危ないっ!!」
「‥‥‥へ?」
さらにカイが勢いよくぶつかったのが原因でソフィアは前に倒れそうになったが、カイが咄嗟に繋いでいたソフィアの手を引っ張り自身へと引き寄せた。
前に倒れると思い目を瞑ったソフィアが一向にこない衝撃や痛みの変わりに感じたのはお日様の落ち着く暖かな匂いと服を着ていては分からない引き締まった人の感触だった。
カイはソフィアが転ばずほっと息を吐いたが次の瞬間現在の自分とソフィアの状態を認識し
〝あ、やべ、俺死んだ〟
と達観しながらも恐る恐る視線を下に下げた。そこには自身の胸の中で固まりソフィアの姿があり、カイはごくりと息を飲んだ。
ちなみに現在の二人は街道のど真ん中で抱き合う熱愛カップルにし見えず、周囲の人々は生暖かい視線と少数ではあるがカイに対する嫉妬と殺意の視線を向けていた。
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