第5話イジョウナニチジョウⅤ

「嘘というより勘違いしていると言った方がいいのかな。米村、君は花江瑠美を殺していない。」


「何故だ?殺害方法がわからないからか?僕を捕まえたら教えてやるよ。勘違いすんなよ。別に魔法や超能力じゃない。」


 雲谷が答える。


「そっちこそ勘違いするなよ。どうやったかなんて関係ない。魔法だろうと超能力だろうとこの眼に写っているものだけは真実だからな。それだけは信じてやるよ。」


「じゃあ何が不満なんだ?犯人が自白しているんだぞ。僕の日記だって見つかってるだろ。殺害方法だって説明してやる。僕は花江瑠美に振られてそれを恨んで殺害したんだ!」


 雲谷は僕の問いを下を向いて聞いていた。


「僕、僕とさっきからうるさいな。いつからだ?」


「なんのことだよ。」


「お前が、自分のことを男だと思い込んでいるのはいつからだと聞いているんだ。」


 雲谷は続けた。


「お前は、女だろ。」


「何を言っているんだ?」


 そう言いながら窓に写った自分の姿を確認する。そこに写っていたのは、少し折られたスカートに薄い化粧小ぶりな胸を持つ紛れもない女子高生だった。ショートカットではあるが、とても男と間違われるような格好はしていない。


「さっき俺に男前かと聞いたな。男前じゃない。なんたってお前は女だからな。」


僕は未だに理解ができない。


「だって僕は瑠美のことを小さい頃から…そ、それに女を好きになるのが男だとは限らないだろ。」


「小さい頃から好きだったか、その言葉は嘘だな。まず、小さい頃から遊んでいたと米村は言うがお前が男でないと理解した今わかるだろ?お前は花江瑠美と遊んでなどいない。戦いごっこだけをして遊ぶ幼女はいないからな。それに、お前の好きな人は、別にいる。だろ?」


 好きな人が他にいる?何を言っているんだ?


「米村、お前の好きな人は鈴村智弘だ。そして花江瑠美を殺害したのもな。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る