第2話イジョウナニチジョウⅡ

 初めて直視した雲谷の顔は、なかなかに男前ではあった。長い前髪を切ればそれなりに人気も出るかも知れない。


「話を聞いているか?」


おっと注意されてしまった。


「うん、わかったよ。嘘をつかなければいいんだろ。でも、そんな約束意味があるのかな?いくらでも嘘なんてつけるだろ。特に殺人の容疑者なんてね。」


 そんな僕の戯言に雲谷は、目にかかった前髪を流しながら答えた。


「正確に言えば嘘をつかない方がいいということだ。嘘をつくのは勝手だが、僕は人の嘘がわかるんだ。」


 それに米村は容疑者じゃないんでね。と雲谷は付け加えた。


「嘘がわかるってそんな馬鹿な話があるわけないじゃないか。それに気を使わなくていい、容疑者じゃなければ警察直々に話を聴きたいなんて言われないって。」


 僕は笑いながら答えた。


「警察と僕はあまり関係はないんだけどな。なんで僕かってことは説明するのが難しいんだけど…」


「別に言いたくないならいいよ、言いたくないってより説明がめんどくさいって感じだけど」


 雲谷は小さく頷いた。

 ってめんどくさいのかよ!雲谷と話していると調子が狂う。


「ま、まぁみんな僕の日記が見つかって、犯人は僕だ。って噂しているしね。疑われているのは、事実だろうけど。」


「実は僕はあまり事件に詳しくないんだ。教えてくれないか?」


 全然違う話題…む、無視かよ!って事件に詳しくないんならなんでお前が話を聞くんだよ!


 仕方がない。僕、米村正美は事件の顛末をこのポンコツに話してやることにした。

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