第41話 ネットはあまり参考にならない

 とりあえず知り合いに全員に相談してみたけど……ロクな情報が手に入らなかった。


 それで1番為になったのは、まさかの高円寺だったな。えっと確か……『ヒナノが好きならそれに相応する物を渡せ』だったっけ。


 相応する物……ヒナノに見合うもの?


 だぁー。分からない。こうなったらインターネッツの力でも借りてみるか……


 俺は学校のトイレの個室に閉じこもり『女の子 誕生日プレゼント』で検索をかけてみた。そして出てきたのは……


「スキンケア……入浴剤……温泉チケット!?」


 いやこれは……何か違う。違くないか?


 もしもこれが正解だとしても、俺はそれらをヒナノに渡せる自信はないよ。どんな顔して温泉チケットを渡せばいいんだよ。


 どうする……もう少し粘って検索してみるか?


 ポチポチと俺は検索ワードを変えて、探してみる……そして出てきたのは。


『ネックレス』


 何か……首輪みたいで嫌じゃない? 束縛してやるぞ、みたいなメッセージが込められているような……こうやって思ってしまうのは、俺の心が汚れているからなのか?


『時計』


 まぁ悪くないかもしれないけど……高い!! そして気に入って貰えない可能性もある! これは却下だ!


『バラの花束』


 キツイキツイキツイ。もし仮に付き合っているとしてもだよ。これはキツくないか? ……そんなことはないのか? もう分かんねぇよ。


『バック』


 高い。分からん。


『香水』


 ドルガバしか知らん。


『ピアス』


 付けてほしくない。


『指輪』


 重い重い重い……


 とりあえず一通り調べてみて分かったことだが……多分これお金を持っている大人とか、そういう人向けに書かれているよ。


 そしてまぁ高い。買わせる気満々だね。だからインターネットに頼るのは駄目だ。それなら……自分の足で買いに行こう。


 そう決めた俺はトイレを出て……学校を出て……バスを乗り継いで……とある場所に向かった。


 ──


 ……到着しました。ジャスコです。今は名前が違うとか何とか言われてるけど俺の中では……ジャスコです。何と言われようと……ジャスコです。


 どうしてここに来たのかと言うと、ここには何でもあるからだ。つまりここに無いものは何処にも無いということだ……俺は何を言っているんだ?


 そんなこんなで俺は足を進めて……とあるピンク色のファンシーチックなお店に踏み入れた。


 ……当然のことながら、お客さんは女性だけだった。めちゃくそ恥ずかしい……でも。ここならヒナノに似合う物があるかもしれない。


 そう思った俺は店内をグルグル回って、色々な商品を探してみた。


 ぬいぐるみは……キツイかな。それに気に入ってくれなかったら、どうしようもないし。


 筆箱……は駄目だよな。今のからこっちに変えろ、みたいなニュアンスに捉えられるかもしれないし。


 コップ……は割れそうだし。なんか縁起が悪いから止めておこう。


 クソっ……決まらない。でも値段は手頃だし、ここで決めるのが1番かもしれない。よし次は……


「あの。何かお探しですか?」


「…………えっ?」


 その言葉が自分に向けられたものだと気付くのに、相当長い時間がかかった。


 俺が振り向くと、そこにはクールビューティな店員さんが立っていた。


 うっ、美しい……いやいや、ダメダメ駄目だって。俺には心に決めたヒナノがいるから……!!


「……大丈夫ですか?」


「あっ、はい! だだだっ大丈夫!!」


「ふふ、そうですか。それで……何かお探しですか?」


「えっ、えっとですね! 俺っ、た、誕生日プレゼントを探してて……あの、女の子で。それで!」


「……ふふっ。それで長いこと悩んでいたんですね」


「あっ、はい……」


 見られていたのか……手に取っては戻し、手に取っては戻すあのシーンを。はっ、恥ずかしい……!!!


「えっ……そっ、それで……女の子に人気の商品とか……ありますか?」


 ……ここに来るお客さんはほとんど女の子だろ。俺は何を言っているんだ?


「はい、ございますよ」


 そんな俺のトンチンカンな質問にも、店員さん答えてくれて……人気の商品を色々と勧めてくれた。


 しかし……俺はその中から決めることが出来なかったのだ。


「ええっと……これも……やめときます。わざわざ持ってきてくれたのに……すみません」


「いえいえ、そんな謝らなくて良いんですよ。そらにこんなに真剣に考えているお客さんだと、こちらも接客のしがいがありますよ」


「あっ、はっ、はい……」


 気でも使わせてしまっているのだろうか。それとも本心なのか……分からないけど。


「……」


 そして店員さんは俺の顔を見て……優しくこう言うのだった。


「えっと……私がこんなことを言うのは余計なお世話かもしれませんけど……きっとその子は、貴方から何を貰っても喜んでくれると思いますよ?」


「えっ……?」


「だってそこまで悩んで選んでらっしゃいますから。とってもその人のことを大切にされているって、ひと目で分かりますよ」


「あ、あっ、ありがとございます……」


 何だろう……嬉しいけど。すっごい恥ずかしい。


「ふふっ。また何か協力出来そうなことがあれば、私に教えてくださいね」


「はっ、はい!」


 そう言ってその店員さんは離れて行った……ああ、何かすっごい優しくていい人だったな……あと美人。


 あっ、そうだ。お客様要望みたいなやつに書いとこうかな。女の子向けのお店の何とかさんが、めちゃくちゃいい人だったって……


 ……こういうのってちゃんと伝えるのが、本当に大事だからね!! これであの人の給料が上がるかもしれないんだからねっ!


 思った俺はさっきの人のを探す……いた。何か品物出しでもやっているのかな。


 仕事の邪魔はしたくないから、遠目でこっそりとネームプレートを覗いた……


 見えた。ええっと……『相馬』さんって言うのかな? しっかり覚えておこう。

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