ギャル勇者メーシャちゃんに、まとめて全部まかせろし! 〜《ギャルのキックはジャッジメント》世界征服たくらむ邪神に『ガツン!』と右脚叩き込みます!!〜
第2話 『ちょっと抜けてる俺様なデウス(神さま)と、“奪う”力』
第2話 『ちょっと抜けてる俺様なデウス(神さま)と、“奪う”力』
「ぶくぶくぶく……」
急に海の中にさらわれ、メーシャは思わず口から空気を吐き出してしまう。このままでは溺れてしまうだろう。
「ばべりぶびびびべばるび!(返り討ちにしてやるし!)」
それでも、メーシャには諦める事なぞ頭の片隅にもなく、何度も触手にキックを食らわせる。
「ばぼばりび、ぶるんばばら!(たこ焼きに、するんだから!)」
とは言ってもメーシャは人間。水中で呼吸できるわけでもなく、下手に言葉を発して空気を捨ててしまった代償は大きかった。ものの1分と経たずに肺の空気が無くなって、苦しさのあまり思わずもがいてしまう。
『こうなったら、足一本だけでも奪って、逃げるしかないっしょ!』
空気が無くどんどん深い所にさらわれようとしているこの状況にも係わらず、メーシャは諦めるどころか一矢報いようとしていた。
『────気に入ったぜ!』
いかにも俺様系な声が頭の中に響く。
『こんな大変な時になんなの? 空気読め! あ、つか、何の用?』
メーシャは触手に噛み付きながら頭の中でツッコミを入れる。
『……力が、欲しくねえか?』
声は、気を取り直して語りかけた。
『力って、何の事? 今の感じからして、このタコを細切れにする力?』
『物分かりがいいじゃねえか』
『でも、なんであーしなの? しかも、何で今し!』
『絶体絶命じゃなけりゃ、別に“力”なんていらないだろ』
声は冷静に言った。
『……確かに』
『そして、何で貴様かだったな? 喜べ、一二三(いろは) メーシャ。貴様は選ばれたんだ、この俺様にな! へっ』
声は偉そうに笑う。
『え……。何であーしの名前知ってんの? 誰なの? 引くんですけど。つか、選ばれたって、詐欺師かよ』
『あー! うるせえ! 俺様の事は“デウス”と呼べ。で、力が欲しいのか欲しくないのか、どっちなんだよ!?』
声はやけくそで本題に入った。
『よくわかんない人のいう事なんて聞けるわけないじゃん。……あれ、今なんであーし苦しくないの?』
『チュー!』
ほんの少し前まで酸欠でもがいていたのに、今は全く苦しく無かったのだ。ついでにヒデヨシも元気いっぱいだ。ついでに、今も尚タコはメーシャを海の底へと引っ張り続けている。
『俺様が一時的に空気を“送って”んだよ。言わせんな』
『……意外にいい人じゃん! てかめちゃ便利だし! おけ。その“力”ってやつ、使ったげてもいいよ!』
『へっ! やっと俺様の凄さに気付いたのかよ。 って、ついでに言っとくが俺様は人じゃねえからな!』
『わかったわかった。ですっち』
『ですっちってなんだよ。デウスだって言ってんだろ。ほんと調子狂うぜ。……まあいいか』
メーシャの身体全体が淡い光に包まれる。
『それきた!』
『っし。じゃあ、メーシャ。奪いたいんなら、思う存分“奪っちまえ”。足一本てな謙虚な事言ってねえで、全部まるごとな!』
────ザッパーン!
メーシャとタコ、そしてヒデヨシが沈んで静寂が支配していた水面に、突如水柱が聳え立った。
「お嬢ちゃ~ん!」
「ただまー!」
メーシャが砂浜に着地する。野次馬の皆さんはどうやら解散したらしく、もう釣り竿のおっちゃんしか待っていなかった。人が引きずり込まれてしまうという恐ろしい事態に、お祭りは解散。皆逃げ帰ってしまったのだろう。
『俺様が与えるのは“奪う力”だ。それ、やってみろ』
「いや、どうやって!? うぉわっと!」
タコはまたメーシャを引きずり込もうと触手で足を引っ張る。
『しゃーねえなぁ。良く聴け? ゴホンっ。相手の持ってるもん、全部見透かしちまえ。そんで、離れてたって良い。やりかたは決まってねえが……。簡単なのは、奪いたいもん強く意識して、引きはがすみてえにジェスチャー? みたいにすんだよ。わかったか?』
「説明下手か! ま、いけるっしょ!」
メーシャは目を集中させてタコを睨む。すると、メーシャの茶色の瞳がかすかに光った。
『軽いな! 普通はあたふたするところだろ』
「いや、お前が言うなし! てか、こんなピンチ燃えるんですけど!」
メーシャのモットーの『面白そうなことはとりあえず試してみる。やるときはやるけど、基本軽いノリで』と、ゲーム好きが相まって、今メーシャを満たしているのは“ワクワク”と“ウキウキ”だけだった。
因みに日常でも、喧嘩や動物の脱走、横断歩道であたふたする大荷物のおあばあちゃん等“非日常的展開”に出会うと、すぐに首をつっこんではなんでも解決していくので、一部の人から“ギャル番長”なんて呼ばれる程だ。因みに、その呼び名はメーシャ本人も気に入っている。
「難しい。何か、数字とか、名前? とか見えるし、色んな線? が見えるけど……」
『それがそいつの持ってるもんだ。目視でロックオンして。ほら、攻撃くんぞ!』
「うっさい。今品定めしてんの!」
────デュッポ!
タコがスミの球を吐く。
『今だ!』
「え? うぉっと!」
反応しきれず、メーシャはジャンプしてスミを避けた。
「めちゃ危ないんですけど! 穴開いてっし!」
スミが当たった地面には大穴が開いていて、もしこんな攻撃を受けでもしたら、いくらギャル番長と言えど、ひとたまりも無いかもしれない。
『おいおいおい。今のイケただろ』
デウスは呆れたように言う。
「は? 初めてこんな事すんだから、黙って見てろし!」
メーシャは怒って、ささっと後ろ髪を束ね、邪魔にならないようにした。
「もう怒ったかんね」
タコはまたスミを吐こうと予備動作に入る。
「今だ!」
────デュッポ!
タコは先程同様に、メーシャに向かってスミの球を飛ばした。
「せ~……のっ!」
────────カキーン!!
『え?』「チュ?」「あれはホームランだな」
メーシャは咄嗟に足に絡みついていた触手を“奪い”、それで飛んできたスミを遠くまで打ち飛ばした。
「どんなもんだ!」
メーシャが触手をぐるぐると振り回しながら叫ぶ。
タコの触手があった部分は特に血も出ず、まるで初めからなかったかのように滑らかだった。
『へっ! おもしれえ女!』
「えっへん!」
メーシャはどや顔で腰に手を当てる。
『気ぃ抜くんじゃねえ!』
────キュルルッ。
「へ? ────ぶへっ!?」
デウスが注意を促すも、メーシャはタコの叩きつけを諸に受けてしまう。
「いった~い! 女の子の顔殴るとか、普通にありえないんだけど……!」
メーシャは数メートル吹き飛び、尻餅をついてしまった。攻撃が直撃した頬は熱を帯びて赤い。
「ちょい、ヒデヨシはそこで応援でもしてて。あーし、あのタコにガツンといってくっから」
そう言いつつポケットからヒデヨシを出して、少し離れた所に降ろす。
「チュイ!」
「いいこ!」
メーシャはヒデヨシの頭を撫でる。
「足だけもらって許したげようと思ったけど、あんた調子に乗ってんね? 成敗すっから、覚悟しろ!」
ビシッ!! っと指を差した。
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