前を向いた二人

第10話 調教日誌5 辛くても笑えば 1

 僕は彼女の過去を知ってから東奔西走した。


 まずは、彼女を解放奴隷、つまり市民としての証明をしなければならない。


 その後、彼女を歌姫にする。


 とても難しいかもしれない。

 

 だけど、誓ったのだ。僕は、彼女を幸せにすると。


 まず、僕はインゼを奴隷にした勇者のパーティの内の誰かを証人として突き出さなければならない。


 それが解放奴隷の最低にして最難関の条件だ。


 僕はいろんなギルドを歩いた。


 足が棒になるまで。


 そして勇者のパーティに出会った。


 「俺達勇者のパーティになんかようか、坊主」


 「すみません、このパーティにいたインゼという少女を奴隷から解放するためにどうか承認になってください」

  

 「インゼ……あぁいたなそんな奴。いいぜ、あんな奴、もうどうでもいいからな、金を払えば証人になってやる」


 以外にもあっさりと、承諾してくれた。


 「すみません、誓約書にサインしてくれますか?」


 「あぁ!?、なんでだよ」


 「いや、当日にいないという場合も考えられるので」

  

 「チッわかったよ」


 「ありがとうございます!」

 

 僕が去った後、その男は、近くのガラの悪い冒険者に大金を支払う。


 「殺せ、跡形もなくだ、誓約書も燃やしておけ」

 

 「承知」


 そんなこと、僕には知る由もない。






 

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