時を経て

第8話  思い出された過去。

 彼女を泣かせないようにと決意してから、数年が経過した。


 俺は心身ともに健康に育ったインゼに話かける。


 どうしても気がかりだった。


 なぜ、あんなふうに高度な麻痺魔法がかけられたのか。


 蛮族にあんな高度な魔法使いはいるはずがない。


 奴隷商人や、前の持ち主のこともある程度調べたり、彼女から聴いたりしたが、下衆野郎というだけで、魔法使いですらない。

 

 罠にはまったという割には彼女は言うほどマヌケじゃないし、頭も悪くない。


 また、いつ、どこかであんな状態に逆戻りするとも限らない。

 

 そんなこと考えたくもないが。


「なぜ、あんな風に……高度な麻痺魔法がかけられた状態で奴隷になったんだい。いや、無理に思い出さなくていいけれど。どうしても気になって」


「うん、いいよ。ルブは命の恩人だし…………それにいつか話そうと思っていたんだ」


「そうか」


「あのね、私…………実は勇者のパーティにいたんだ」

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