第39話 恋人クララの暴かれた秘密③
「私の中に出しましたわね。どうするのですか?」
翌朝、目を覚ますなりクララに詰問される俺だった。
だけど覚悟はとっくに決めていた。
昨晩、俺の攻撃に耐えきれずぐったりと横たわった彼女の姿を見ながら決心したのだ。二人で生きて行こうと。
「クララに俺の子供を産んで欲しい。クララと一緒に子供を育てたい」
よし言った!
あとはクララがどんな返事をするのか・・・ゴクリ
「そんなこと当たり前ですわ」
「んんん?」
「私の中に子種を注いだのですから、そんなことは当たり前だと言ってるのですわ。まさか、そんなことを考えもせずに無計画でやったとでも仰いますの?」
「ままままままさかそんなことあるわけ無いじゃないか!」
「ええ、当然ですわよね。ですので今後、いつ婚約して、いつ式を挙げるのかを私は訊いているのですわ」
「そそそそそそそうだな。婚約はご両親にご挨拶をして直ぐにでもやって、式はシーズン後だな」
「あとはお腹の子の都合次第ですわね」
「お、お腹のくぉおおおお!?」
「もう避妊の必要はないのですから直ぐに子ができますわ。安定期に入った頃の吉日を選びませんと」
どんどんクララによって俺の人生のレールが敷かれていく。
そのスピードについて行けなくて、ちょっと待ってくれと喉から出掛かったが無理くり押し留めた。
駄目だ。クララを不安にさせてはいけない。
見た目と態度ほど強い女じゃないことは昨夜分かったばかりだからな。
「そうだね。俺も早くクララとの子供が欲しいよ」
言ってる内に本気でそう思った。
だから俺は心のままに早朝からクララと子作りを始めた。
2時間後、俺たちはクララの実家にいた。
平日の朝に訪問という常識知らずの所業だったが、ご両親は快く迎えてくれた。
というか、大歓迎された。
まるで俺を英雄のように扱ってくれたのだ。
それは俺が世間で騒がれている時の人だからではない。
一生独り身なのではないかと心配しまくっていた娘を貰ってくれるからだった。
ご両親にとって俺は救世主だったようだ。
今日はひとまず婚約の挨拶で結納はまたいずれ、式はシーズン終了後にと伝えると、本当に結婚してくれるなら何でも協力するからくれぐれも娘を頼むと懇願された。
クララよ、一体どれだけ親に心配かけてきたんだ?
婚約者となったクララの実家を辞去したあと、二人で婚約指輪を買いに行き、俺はその足で慌ただしくアウェー遠征に出発した。
別れ際の「いってらっしゃいませ」という言葉と幸せそうな笑顔が俺の心と体をポカポカと温めてくれた。守りたいその笑顔。
クララが婚約者になりカレンと距離を置いてから3週間が過ぎた。
その間、完全に勢いに乗って負ける気がしないチームは勝利を重ね続けた。
これであのスポーツミックス放送から破竹の9連勝だ。
我がホーリーランズ尾道の成績は22勝10敗7分け。
ついに・・・ついにJ2首位に立った!
クラブ史上初の快挙にフロントも本腰を入れた。
J1昇格を見越して来季の補強や更なるスポンサー探しへと重心をシフトさせる。
ホームスタジアムはJ1の基準も満たしているが、人気観光スポットを目指して一部改修する案が検討され始めた。
俺を主人公にした漫画もちょうど中東の奇跡を描いたところで人気が上がっていたが、J1昇格が見えたことでアニメ化の話も動き出したようだ。
もちろんクラブだけでなく地元尾道もJ1フィーバーが訪れていた。
なんとクラブハウスに市長がやって来た。
是非この尾道にJ1をと激励し監督や選手たちと握手していった。
握手は政治家がよくやるパフォーマンスだがさすがプロだ。
熱の込め方が違う。思わずその気にさせる力があった。
そんなクラブも地元も浮かれた雰囲気の中、俺はフロントから呼び出しを受けた。
事務室に行ってみると応接セットにはゴリ監督も一緒にいた。
勧められたソファーに座り何事だろうかと考えていたら想定外の話だった・・・
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