第34話 JKカレンと魔女クララ⑤

 「いけませんわ・・・貴方には範江のりえという恋人がいますのよ!?」


 裸で抱き合っている俺から交際を申し込まれたクララはそう言って断った。

 どこか嬉しそうに。うん、脈はあるよな。

 告白されてウキウキしてるのが密着した身体から伝わってくる。


 しかし、俺が四条範江さんと付き合ってたことを知ってたんだな。

 だが俺たちの仲が既に自然消滅したことはまだ知らないみたいだ。

 そんな風に考えを巡らしているとクララは自分からボロを出した。


 「男は範江みたいな守ってあげたくなる女性が好きなのでしょ?」


 あっ、こいつ四条さんにコンプレックス持ってる。

 確かに自分より小さくて可愛いタイプの女性を好む男は多い。

 背が高くて高慢なクララは四条さんに嫉妬してても不思議じゃないな。

 よし、四条さんには悪いがこれを利用させてもらおう。


 「俺はクララが良いんだ。クララが欲しいんだ」


 「・・・そんな浮ついた言葉など信用できませんわ」


 さすが天下の毎朝新聞の記者さんだ。

 本当は信じたいくせに証拠がないと事実として認めない。記者の鏡だな。

 良いだろう。上等だ。

 その証拠を目の前に突き付けてやる。


 『他に好きな人が出来ました。けじめとして俺たちの関係を終わらせたいと思います。勝手なお願いで申し訳ありませんが返事を下さい』


 以上の文面をクララにじっくりと見せたあと四条さんにメールした。


 『承知しました。これまで本当にありがとうございました。さようなら』


 平日の昼間ということもあってか四条さんは数分後には返事をくれた。

 ずっと話すらしていなかったせいか別れの痛みはほんとどなかった。

 カレンのお陰だろうな。

 それとこの魔性の女のせいでもある。


 さあ、四条さんからの返事を見て動揺しているクララにもう一押ししておこう。


 「これで俺の覚悟が分かってくれたか?」


 ギュッと抱きしめて全身で訴えた。俺のモノになれと。


 「・・・分かりましたわ。ここまでして懇願されたら私も断れませんもの」


 よし!落ちたっ!


 あとはクララの気が変わらない内に、男が出来て夢見心地の内にガッチリと楔を打ち込んで俺から離れられないようにしておかないと。


 「じゃあたった今から俺たちは恋人同士だからな。クララ」


 可能な限りの愛情を込めてそう言った。


 「そ、そうですわね・・・特に異論はありませんわ」

 「その大切な恋人に一つお願いがあるんだ」

 「何ですの?」

 「俺たちのことは四条さんに黙っていて欲しい。これ以上傷つけたくない」


 「・・・分かりましたわ。私とて敗者に勝ち誇るような真似はしたくありませんもの」


 それはどうかな。

 本当の所は四条さんに自慢したくて仕方ないって感じがビンビンしてる。


 「約束だぞ」

 「もぉ、しつこいですわ」

 四条さんのことを気に掛ける俺が気に食わないようでへそを曲げてしまった。

 

 だが計算通りだ。

 喧嘩した後の仲直りエッチほど燃え上がるものはないからな。

 俺はまたお姫様抱っこして不機嫌なクララをバスルームへ連れて行った。


 そこでいろんな体液で汚れた彼女の身体をくまなく綺麗に洗ってやってから、また俺の体液で汚してやった。ベッドに戻ってからも体中にキスマークを刻んだ。マーキングは大切だからな。

 クララが家に帰った後もその痕跡を見て俺という恋人を思い出させてやるのだ。




 翌日、完全オフの朝っぱらからカレンがやって来た。

 部屋に入るなり変装用のウインドブレーカー上下と帽子を脱ぎ捨てると、その下はバスケのユニフォームだった。

 そうきたかー。


 しかも、上はユニフォームの下に何も着ていない。


 クララより少しだけ小さいが前に突き出すようなロケットオッパイの自己主張が凄すぎる。

 下はユニフォームの下に黒のスパッツを穿いていたがそのピチピチ感が逆に男の欲情を煽っていた。

 きっとこれも白ギャルの入れ知恵なんだろうなあ。

 怖いほど俺のツボを突いてきてるわ。


 だが今日はその前にカレンへ話さなければならない。

 もちろんクララの事だ。

 俺にはもうカレンを抱く資格がない。

 『良い人が出来たらヤリ捨てにする』

 それが付き合うと決めた時に交わした契約なのだから。


 俺はクララとの経緯と情事を包み隠さずカレンに話した。

 最悪泣かれて修羅場になることも覚悟していた。

 俯瞰視の予知能力はスケバン風ギャルがどう動くか何も告げてくれない。


 俺はどんなアクションにも対応できるように心構えをしていたが、カレンのリアクションは暗く悲しいものではなかった。

 むしろ晴れ晴れとした顔で明るく誘われた。


 「話は分かった。じゃあとりあえずベッドに行こうか。それともここでヤル?」

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