第28話 コギャル無双①
「おい、その薄汚い手を放せ!このメス豚ども!」
救世主キター。
山内がクラブハウスから飛び出してきてコギャルたちにまくしたてる。
「お前らS女だな。今すぐその手を離さないと学校に連絡して指導させるぞ!」
「撮った写メもこっちによこせ。スマホを壊されたくなかったらな!」
「俺はタクヤさんのように優しくないからな!」
「調子に乗ってると・・・・・・ぶち殺すぞ」
いつも冷静な山内がもの凄い圧力を発しながらキレてる。こんなの初めて見た。
さすがのコギャル集団も本能がヤバイと警告したようで体の力が抜けていく。
今だっ。
俺はスルリと両腕を抜いて三つ編み委員長に速攻で接近した。
「あっ・・・」
コギャルたちがキレのある俺の動きに驚いているがもう遅い。
悪いねと言いながらスマホを手に取り写メを消去する。
俺がこうしないと山内が本当にスマホを破壊しかねないからな。
しっかり消去したぞとスマホを山内の方へ向けてから三つ編み委員長に返す。
だがそれでも大魔神ヤマウチの怒りは静まらない。
「お前ら本当にS女の生徒か? 制服だけ着た偽物じゃないのかぁ?」
「ちょ、ウチらは本物だってばー。学生証だって持ってるよー」
「お前らみたいな馬鹿がS女に入れるわけないだろ!」
「それは聞き捨てなりませんね。謝るなら今のうちですよ」
お嬢様ギャルはそう言ってから自慢気に学生証を見せびらかした。
その時、一瞬でスマホを抜いた山内が写メった。
まさに居合写メとでも呼ぶべき早業。
全て山内の計算通り。俺にもこうなることは見えていた。
「な・・・」
お嬢様ギャルがハメられたと気づいて眉をひそめたが後の祭りだ。
「アハハハハ、ほんとレナっちって馬鹿じゃーん」
「フン、私は別に身元を隠すつもりなんて最初からないんだから平気よ」
「でもお兄さんも、制服見ただけでS女だって分かるのヤバイよねー」
暗にこのロリコンとでも言うように白ギャルが山内をジト目で見る。
「黙れメス豚、俺は学生の時、S女の女と付き合ってたから知ってるだけだ」
「しかし、お前らみたいなのが入学できるなんてS女も落ちたもんだな」
容赦ない山内の言葉にコギャルたちも二の句が出ない。
恐らく、大人の男からチヤホヤされることは多くても、ここまで真向から罵倒されることは無かったはずだ。調子が狂っても仕方ないだろう。
「アンタがウチの生徒と付き合ってたってのも嘘っぽいけどな」
なんとかスケ番ギャルが反撃を試みるが山内の敵ではなかった。
「言ってろ。俺はお前らを絶対に許さん。梶山さんに電話して指導させる」
「カ、カジゴンを知ってんのか!?」
ざわざわっとコギャルたちが取り乱している。
「生徒みんなに恐れられてる生活指導の先生なんだってなぁ。元カノから伝説はいろいろ聞いたさ」
「それだけは止めて下さい。大変な事になります」
三つ編み委員長が必殺の泣き顔で懇願するも山内には全く効果がなかった。
「だから黙れと言ってるだろこのメス豚がっ」
「ひぃっ」
三つ編み委員長がうつむきながら後ずさりする。
「お前らは俺の質問にだけ答えろ。分かったな」
コギャルたちはよほどカジゴンが恐ろしいのか反論できないでいる。
「何が目的でタクヤさんに近づいた?」
女子高生たちは困ったような顔でちらちらとスケ番ギャルを見やる。
「アタシだよ。アタシが武者野さんに逢いたいって言ったんだよ」
今度はスケ番ギャルが俺の方をチラ見しながらゲロった。
「どうしてお前みたいなアバズレがタクヤさんに会いたがる?」
「そりゃ昨日テレビを観て・・・」
「それでタクヤさんのヤバイ写真撮ってマスコミに売ろうとしたってわけか?」
「ち、違うよ、」スケ番ギャルが哀願するような表情を俺に見せてから山内に答える。
「アタシはそんなこと考えたこともねーよ!」
「どうだかな。じゃあ何でタクヤさんに会おうとしたんだよ?」
「だから、テレビ観て、武者野さん、試合中なのに観客助けて、それなのにずっと、自慢も言い訳もしなくて・・・あれだけバッシングされたのに、我慢してチームのために頑張ってたって知ったから・・・・・・アタシも何か、してあげたくて、だから・・・」
「はぁ? それでタクヤさんに迷惑かけてどうするんだよ!馬鹿じゃねーの!」
「ぐ・・・」
山内、もうその辺にしておいてくれ、スケ番ギャルが泣きそうだ。見てられない。
「そもそもお前みたいなメス豚にくっつかれてタクヤさんが喜ぶと思ってること自体が調子に乗ってるっていうんだよ。勘違いもたいがいにしとけ。それに泣けば許されるとか思うなよクソガキがっ」
本当にもうよせ、スケ番ギャルのライフはゼロだ!
スケ番ギャルは声を殺して泣いていた。
「ウチらが悪かったからもう勘弁してよー」
「本当に申し訳ありませんでした」
「ちょっと調子に乗ってたのは認めるわ」
女子高生たちが許しを請うが山内は鬼のような形相で睨みつけ、黙れと一喝する。
その剣幕に彼女たちが顔をそらした刹那、山内は俺にアイコンタクトを送る。
「今です」と。
あ、そういうことな。
確かにそのパス受け取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます