第27話 モテ期トラップ③

 声のした方に顔を向けると、何とさっきのコギャルたちだった。


 改めて彼女たちをザックリ観察したところ、白ギャル、黒ギャル、お嬢様ギャル、スケ番ギャル、そして一人だけ毛色の違った三つ編み委員長という印象の5人グループだ。


 これって、三つ編み委員長はボブのファンのコギャルたちに無理やり連れて来られた感じかな。

 もし苛めレベルだったら何とかしてやりたいが、さてどうしようか?


 「君たちは、ボブのファンの子たちだったよね」


 「あー違う違う。ボブが好きなのはこの子だけなんだよね~」


 白ギャルが指差したのは、あろうことか三つ編み委員長だった!

 一体どうして君みたいな真面目で清純そうな女の子があんなエグい風俗に行く野獣に惚れるのか・・・


 「そ、そうなんだ。まだここにいるってことはボブとは会えなったのかい?」

 「いえ、会ってサインしてもらいました」ポッ

 「凄いよー、生ホーリーうんこ描いてくれたよー」

 三つ編み委員長が大事そうに抱えていた色紙を見せてもらうと、本当にうんこの絵が描いてあった。無駄に上手かった。


 「で、私たちは落武者さんの出待ちしてたわけー」


 は?

 ボブを好きそうなコギャルの方が俺目当てだったのか・・・

 モテ期もここまでくるとちょっと怖くなるな。


 「そうだったんだ。でもごめんな。俺は今サインできなくなっちゃったんだよ」

 「うん、練習中にスタッフの人が言ってたよ。メルカリとかで売る人がいるから高値の付く落武者さんはサインできませーんって」


 「だけど、写メは良いんだよな?」

 うわっ、怖そうなスケ番ギャルが口を開いた。


 「ええ、確かにそう言ってたわね」

 今度はお嬢様ギャルが乗っかってきた。


 「というわけでー、落武者さん一緒に写真撮ってくれないかなー?」


 うーん、練習が終わってから2時間近くも待っててくれた女子高生の頼みはさすがに断れんな。

 「もちろんいいよ」

 「やったね。じゃあマリアっち撮ってくれる?」

 白ギャルに頼まれた三つ編み委員長が少し離れてスマホを構える。


 ここで、まだ一言も発してない無表情の黒ギャルが驚愕の動きをみせた。

 俺の右腕を取りギュッと抱きしめて胸を押し付けながら体を寄せてきたのだ。


 ば、馬鹿な・・・

 この俺が動きを読めずに密着マークを許した・・・だと・・・!?


 実は、コギャル集団に声をかけられた時点でメチャクチャ警戒して俯瞰視ふかんしを発動していた。

 半径60メートル以内にパパラッチらしき人影はない。そこは既に確認済みだ。

 この大事な時にハニートラップなど以ての外だからな。

 そして、俺の俯瞰視の能力は上から見るだけじゃない。

 圏内の人間がどう動くかある程度予知することができる。

 だからこそ敵の裏をかく決定的なパスが出せるのだ。それなのに・・・


 「お前ずりーぞ。興味なさそうに付いてきたくせによー」


 スケ番ギャルもそう言いながら俺の左腕を取り以下同文。

 こ、こいつの動きも読めなかった・・・!

 そうこうしている内にお嬢様ギャルまでいつの間にか俺の正面から抱き着いていた。

 えーい、最近のジョシコーセーは化物かっ。


 「さあ、いいわ。撮ってちょーだい」


 いや待て、この絵面えづらはさすがに不味い!

 しかし、3人に囲まれ動きを封じられた俺は顔が映らない様に伏せるのが精いっぱいだった。


 「あれ、落武者さんの顔が上手く撮れませんでした。もう一度お願いします」


 ふぅ、助かったか。

 だが、まだピンチを脱したわけじゃない。

 この密着マークを力任せで強引に振りほどいたらコギャルたちが怪我をするかもしれん。

 特に左右の黒ギャルとスケ番ギャルはフィジカルが強い。

 スケ番ギャルなんて俺どころかクララよりもでかいからな。

 無理やり引きはがしたら本当に危ない。

 かといって、口で言っても聞いてもらえそうになかった。

 それだけは、俺の能力が間違いないと告げている。


 ああ、これから白ギャルが背後に回って俺の顔を上げようとするみたいだ。

 それも予知でイメージが見えた。


 これは・・・詰んだな。

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