第7話 お前のドリブルに欠けているもの②
ブッーーーー!!
カシスオレンジ噴かれた。
甘いな。お前の様にクソ甘いわ、このカクテルは。
「ちょ、生活感て・・・達川節を使えば誰でも納得すると思ってるでしょ。広島県民のそういう所が嫌いなんですよ僕は」
「広島県民をディスるのは止めろ。それに俺は江戸っ子だ」
「マジすか? あ、それでかぁ。J1のオレツエー東京から都落ちしてきたから、落武者って呼ばれてるんでしょ?」
「今ごろ知ったのか、そういうチームメートに興味がないところも生活感に欠けてるんだよ」
「まだそれ言いますぅ? 意味不明なんですけどぉ」
「それじゃあハッキリ言わせてもらうがな、お前、趣味の延長でJリーガーやってるだろ?」
「な・・・」
「チームを勝たせたいとか選手として成功したいとか本気で思ってないだろ?」
「・・・」
「ただ気持ちよくドリブルできたら良いと思ってるんだろ!?」
「・・・分かっちゃいましたか?」
「分からいでか! お前にはここでダメだったらもう生活できないっていう危機意識がまるでないんだよ! なんかこうフワッと上っ面だけで生きてるんだよ!」
「ちょ、どさくさで僕の生き方にまでダメ出しするのは違くないですかぁ」
「違わんなあ。お前がチームに迷惑をかけている以上、キャプテンとして俺はお前を指導しなくてはならん」
「いや、ですけどねぇ、生活感が無いって言われても、参考にしようがないですよぉ」
「一理あるな」
「あ、そこは認めちゃうんだ」
「まず筋トレやめろ」
「へ?」
「生活感で全てを察しないポンコツの為に具体的な指導をしてやってるんだ」
「ポンコツって、ちょっと待ってくださいよ。だいたい筋トレの何がダメなんですか?」
「余計な筋肉と一緒に体重も増えて動きにキレがなくなったからだ。自分でも分かってるだろ」
「そういう面もあるかもですが、当たり負けしないように鍛えないといけないんですよぉ。だから監督だって何も言わないじゃないですかぁ」
「馬鹿野郎、監督はなぁ、間違った努力でも努力は努力だからと、お前が自分で気づくまで見守っていたんだよ。それなのにお前ときたら、クソしょーもない理由で筋トレに励みやがって」
「えっ、しょ、しょーもない理由ってことは・・・ないんじゃ・・・ないかなぁ・・・あ、当たり負けしたくないっていうのはぁ」
「それが本当ならな」
「何・・・ですって・・・?」
「この馬鹿チンがっ! お前が筋トレしてるのはヒョロガリな体が見っともないとか思ったからだろーが!」
「・・・」
「どうせパブの姉ちゃんにでもスポーツ選手なのにガリガリなのねとか言われて凹んだのが原因なんだろ!?」
「・・・分かっちゃいましたか?」
「分からいでか! 唯一の取り得をそんな下らない理由で無くしてどうする。だからお前には生活感が無いって言うんだよ!」
「うわぁ、生活感はもうお腹いっぱいですって。分かりましたから勘弁してくださいよぉ」
「お前がそんな簡単に反省するタマか。キッチリとペナルティーはくれてやるからな」
「えー、ボブの隣のロッカーだけは止めてくださいよぉ。アイツ臭いんですよねぇ」
こいつ本当に生活感が皆無だな。どうせ自分がいないとチームが回らないとか勘違いしてやがる。
「とりあえずスタメン剥奪な。だが後半15分から交代出場させてやる」
「横暴だ! 職権乱用だ!」
「無謀な筋トレやめて以前のキレが戻ったらスタメンに戻してやる」
「僕がいないと得点力がガタ落ちですよ!」
「失点も激減するだろうな」
「う・・・」
「そのうえ、お前の尻ぬぐいをしなくていいから全体のパフォーマンスが上がる。現時点ではメリットの方が明らかに大きい」
「・・・」
「それに得点力なら心配はいらん。これからはお前以上に馬場がゴールを決めてくれる」
「・・・それはさすがに無いでしょ?」
「あるんだよ! なぜチームメートの変化に気付かない? お前はもっと仲間に興味を持て。その為にもベンチから試合を見て学べ。そして身に付けろ生活感を」
「ま、いいですよ。どうせ直ぐに僕を外したことを後悔するでしょうから」
「フ、せいぜい甘い夢を見ておけ。今に分かる」
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