今度こそ犯罪者をシメるであります

『《アリシア・デ・ラスフォード/結城くるみ》ドMの小娘が絡みに来た《ミラライブ二期生/ミラライブ四期生》』


【コメント】

:くるみちゃん本当にコラボ相手選ぶの下手すぎる

:やっぱドMだろ

:おい四期生ドMしかいねぇのか

:何しに来たんだくるみちゃん


「……あ、あー、聞こえてるでありますか?」


「うむ。聞こえておる。それで、今日は一体何の用じゃ?」


「今日はですね、アリシア先輩。以前よr」


「アリシア『様』じゃ。ゆめゆめ忘れるな」


穏やかで優しげだった第一声とは裏腹に、殺気すら伴っていると感じられる低い声のアリシア。

思わずくるみの喉から「ひぇっ」と音が漏れる。


「あああアリシア様、今日はあなたが今までしてきた数々の悪行を暴いてやるであります!!」


「ほう。悪行とな。妾には心当たりが全くないのじゃがどんな言いがかりを用意してきた?」


「ここまで自信満々なことあるでありますか!?……まあいいであります、まずは以前、モモカちゃんの家に乗り込んで暴行を働いた件について何か釈明はあるでありますか!!」


サキがそんなことを漏らすはずがない。そうなればこの事実をくるみに漏らしたのはモモカ本人以外にいないわけで。


「……ふむ、あの小娘はどうしてこうも己の醜態を晒したがるのか不思議でしかないな……。簡単な話じゃ。妾は痛めつけるつもりじゃったが、本人は悦んでおった。妾としては不本意でしかないがな。確かこういった事案は本人に立件の意思がなければ問題なかろう?」


「そそそ、そんなわけないでしょう!!脅迫して通報できないようにしたんでしょう!!」


「ほう、貴様はあの小娘が被虐趣味の変態だと知らぬのか」


「あのモモカちゃんがそんなわけないのであります!!!」


「ならばその本人に確認を取ってから来るがよい」


【コメント】

:モモカちゃんの家に乗り込んで暴行!?!?

:そんなことしてたのかwww

:そんなわけない気持ちとアリシア様ならやりかねない気持ち

:てかアリシア様つっよ

:よっぽど証拠固めないと勝てなさそう


「じゃ、じゃあ次はとある筋からの情報であります!アリシア様が強盗の男性を蹴って踏んで背骨を骨折させたという噂があるのですが……」


こちらもサキが漏らすはずがないのは自明。

となるとこの情報源は恐らく社長であろう。

職権乱用はもう諦めるとして、ライバー個人に関することを他に漏らすのはいただけない。

いずれ一度シメねばならぬとアリシアは決意する。


「事実じゃの」


「な、なら普通に過剰防衛で傷害罪なのでは!?」


「貴様、詳しい話を聞いておらんのか?サキが刺されそうになった故、妾が守るためにシメただけのこと。その後ポリ公とも話したが、本人からの訴えもなければポリ公共も妾には何の非もないと言っておったわ。それで、貴様は妾に何の罪を問う?」


「元警官の前で警官のことをポリ公って呼ぶのやめるであります!!?で、ではリスナーのことを豚と……」


「そんなもの各配信者の自由じゃろう。そもそもこやつらは豚呼ばわりされて悦んでおる変態共じゃ。本人らが求めておるのに、どこに不当性があるというのじゃ?」


「う、うぐっ……」


【コメント】

:あまりにもボコボコで可哀想になってきた

:よくよく考えるとアリシア様特に変なことしてないんだよな

:もう無理だよ諦めろくるみちゃん……

:今お前が相手にしてるのはミラライブで一番口喧嘩強い人だぞ……

:実際に何か法に触れてても正当化しそうなのが怖いこの姫


「そもそも、こうして謂れのない罪で妾に言いがかりをつけて貴重な時間を奪った上に名誉を傷つけた後輩にはどういった罪を問えば良いかのう。妾に教えてくれぬか、元警察官よ」


「そ、そんな、ほ、本官は……」


もう言いたいことはないのか?と言わんばかりに嗜虐的な笑みすらも伝わってきそうな声色で詰るアリシア。

それに対してくるみはもう半泣きだ。


「いやぁ、流石の妾も後輩にここまで言われてしもうては傷つくでな、何か補償をもらって手打ちというのが妥当かのぅ?」


「ひ、ひぃっ、きょ、脅迫するつもりでありますか!?ほ、本官はそんな脅しには屈しないであります!!」


「はぁ……。別に何かを寄越せと言うつもりはないわ。そもそもこんな幼女をいじめたとあっては妾のイメージが地に落ちるじゃろうが」


「だだだ誰が幼女でありますか!!?れっきとした大人でありますよ!?」


「戯言を垂れるでない。妾が喋っておるじゃろう。妾の要求は、ただこの後普通に一緒に配信するなりし、今後も時々妾とコラボせよと言いたいだけじゃ」


「……え?あなた本当にアリシア様でありますか?」


「妾とて全ての愚物を疎ましく思っておるわけではない。特に貴様は、無鉄砲ではあるが馬鹿というわけではあるまい。妾がまた虐めたいと思うタイプの愚物じゃ。ということでまた妾とコラボせい。今度は変な言いがかりをつけるのを控えてな、くるみ」


「なんとなく気に入られてるってことは分かったけど無鉄砲とか愚物とか言われまくってすごく傷ついてるであります。てかアリシア様が名前で呼んでくださったことへの感動が」


「妾が名前で呼ぶ後輩は今のところサキとくるみだけじゃ、誇ってよい」


「そりゃ当然嬉しいし誇らしいのはいいんだけどほとんどの後輩のこと名前で呼んですらないってマジでありますかこの先輩」


【コメント】

:なんか上手く丸め込まれてて草

:くるみちゃんちょろくて草

:っぱアリシア様ロリとの相性いいな

:アリシア様に気に入られるって奇跡じゃん

狐舞サキ🔧:これから大変になるぞ頑張れくるみちゃん


「さて、では最近の配信の話やこれからのコラボ内容の話でもしてゆこうか。くるみは今後妾と一緒にやりたいゲームなどはあるか?」


「は、はい!本官はアリシア様と……」


こんな感じで、まさに先輩と後輩、いやどちらかと言うと母と娘くらいの距離感の雑談配信は夜遅くまで続いた。

上手く丸め込まれてただただ礼儀正しい後輩な部分が残ったくるみの姿はアリシアにとっても好ましく映り、サキとの裏での絡みを知らない豚たちからは『ある意味アリシア様キラー』だの『アリシア様からこんなに母性があふれ出してるの見たことない』だのといったコメントが多く寄せられたのだった。

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