実際私の英語ってネイティブと比べてどうなの? 2

「てかクリスの日本語の上達が早すぎて怖いんだよね。確かこっち来た初日って結構カタコトじゃなかった?」


思い起こすのはクリスが初めて家に来た日のこと。時がたつのは早いもので、もう2か月も前のことだ。

儚い感じの印象で、狩りてきた猫のような態度だった覚えがある。


「あの時は初めての日本と初めてのホームステイで緊張してたから。元々イギリスで日本語の勉強してたし日本のアニメとかVTuberとか見てたから結構喋れたんだよ。繊細な表現の機微とか状況に応じた語彙の選び方とかは日本に来て大学でできた友達が教えてくれたんだけどね」


「おい外国人が使うレベルじゃない難解な語彙を使いこなすんじゃないよ」


「サキのパパが言ってたけど、サキだってイギリスに来てすぐの時にはもう英語喋れるようになってたって聞いたけど?」


「あぁ、私も日本で英語の勉強頑張ってたからね。イギリス行く1年くらい前からもう決まってたから事前に勉強しておけたし」


思い出すのは小学5年生の終わり頃。家で唐突にお父さんに言われたのだ、『早紀の小学校卒業ぐらいのタイミングで俺イギリス行くことになったんだけどついてくる?』と。


当時の私はまだ単純な子供。旅行か何かだと思い、ノータイムで『行く!』と答えた。

イギリスやヨーロッパの観光地などを調べていくうちに興味がそそられ、英語の勉強は苦になるどころかむしろ楽しいくらいだった。

勉強し始めて半年も経つと海外のドラマなどを日本語字幕なしで全て理解できるくらいになっていた。

お父さんが軽く引いてたけど半年も勉強すれば普通だよね。


イギリスに引っ越してそのまま向こうの学校に通うことは結構直前になって知ったのだが、その時には言語に関する不安はほとんどなくなっていたのでそのまま受け入れたのだ。


「たった1年でそんなに喋れるの普通におかしいよ。サキのパパも言ってたよ、『早紀の英語の上達が早すぎてそれに負けたくないから俺も必死に勉強した』って」


「学校で使う英語とビジネスで使う英語って全然違うから張り合っても仕方ないと思うんだけどなぁ……。ていうかそう言うクリスはどうなの?」


「私は小さい頃から日本のアニメとか大好きだったから小学生くらいの頃からずっと日本語には触れてたよ。ちゃんと勉強し始めたのは2年くらい前だけどね」


【コメント】

:あれ、クリスちゃんも化け物側だったか

:多分この子俺より日本語上手いよ

:今更だけど外国人が普通に日本語で話して配信してるのおかしいからな

:類は友を呼ぶってやつか

:むしろサキちゃんはそんな英語できるのになんで日本帰ってきたんだろう、ケンブリッジとか余裕で入れそうなもんなのに

:2か月前の配信でこの子壊滅的な日本語晒してなかったっけ??


「あ、そうそうチャットで言われてるけどサキはなんで日本帰ることにしたの?あと、今通ってる大学って東大とかみたいなトップレベルじゃないよね?サキならもっといいところ行けたんじゃない?」


「うーん、向こうで日本の勉強もやってたんだよ、日本の教材取り寄せて。そしたら向こうの学校の勉強よりも日本の方が圧倒的にレベル高くて、特に理数系なんて日本の中学1年生の範囲をイギリスでは高校で習うみたいなこと知ってさ。大体のイギリスの観光地とかも行ったし、十分英語も喋れるようになってたからこれ以上いる意味ないなって思って日本帰ったんだよ。大学選びはサリーに合わせたの。将来の仕事なんて多分なんでもなれるし、それなら大学は親友と一緒に楽しく過ごせた方がいいじゃん?」


まぁ日本に帰ってきて高校に通い始めて、システムとか生徒の雰囲気とかのギャップが肌に合わなくて困惑して人間関係構築に大失敗して擦れてたわけだけどまぁその黒歴史の話はやめておこう。その過去があったからこそ今の梨沙との関係があるわけだし。


「なるほど。あ、じゃあイギリスで10人いた彼氏とかは?どうしたの?」


「いや前も言ったけどそれ誤解!!彼氏じゃないから!!!てか配信中に変なこと言わないでくれる!?」


【コメント】

:は?

:どういう状況だそれ

:そこちょっとkwsk

:リアル逆ハーレム草

:たらし魔王……


「ねぇクリスのせいで変な勘違いされてるじゃんか……。デートのお誘い受けて、ちょっと日程調整ミスって被っちゃったから仕方なく5お出かけしてただけ!!人聞きの悪いこと言わないで!!」


「大丈夫、正しい方のエピソードも十分人聞き悪い」


「そそそそんなことないもん、ちゃんとみんな楽しんでくれてたしその後も普通に仲良くできてたもん」


「何をどうしたらそうなるの??」


心底分からん、といった表情のクリス。なんとかなったもんはなんとかなったんだよ、私のどうしてそうなったかは知らんけど。


「てかクリスだってこんなに可愛いんだから向こうで彼氏の一人や二人いたんじゃないの?」


「いないいない。そりゃ告白とかは結構されてたけど、私に釣り合う人なんていなかったんだもん」


「うんかなりえげつない発言だ。いやでも確かにそうか、こんなに可愛くて頭良くて運動神経もよくて、面白くて行動力あってしかもおまけに家は金持ちだもんな。そりゃ釣り合う男なんかいるわけないわ……ってクリス、どうしたの?顔赤いよ?」


ふと隣のクリスを見ると何故か頬を紅潮させて俯いている。体調でも悪いのだろうか。


「……急にそうやって口説くのズルい、これだから淫乱浮気大魔王は」


「淫乱浮気大魔王!?」


【コメント】

:リアリティがあるだけ彼氏10人よりヤバみを感じる

:魔王は子供のころから魔王だったか

:淫乱浮気大魔王いいな、これからこれで呼ぶか

:照れてるクリスちゃん可愛すぎか?

:てぇてぇか?てぇてぇなのか?


「You're frickin' womanizer Demon king. I don't wanna make you my crush preferably though...」


「え、ごめんクリス何って?やっぱリスニング力落ちてるなぁ……」


「……別に。『サキはビッチすぎるからいつか誰かに刺されちゃえばいい』って言っただけ」


「英語で時々暴言を吐く隣のクリスさん!?」


その後大きく脱線した話を本筋に戻し、更にいくつかの英語のフレーズをリスナーさんと一緒にクリスに教えてもらってこの日の配信は終わったのだった。


その後クリスが少し私に冷たくなってしまった気がする、悲しいよ私ゃ。

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