リン〇フィットコンクエスト 2

「ふぃ~、やっと倒せた~」


スクワット100回こなしてやっと敵のHPが半分削れた。

その後敵の攻撃を防御し、更にもう一度スクワット100回。


最初のステージの雑魚相手にスクワット200回て。アホか。


「ちなみにこのゲームって大体どれぐらい戦闘するもんなの?」


【コメント】

:涼しい顔でしっかりクソキツいことするのやめな?

:1ステージで大体5戦闘ぐらいだったっけか

:多分各ステージ3~5戦闘、1ワールドに平均5ステージぐらいかな

:本当に人間か?

:その華奢な身体のどこにそんな体力が


頭上でリングを押し込む運動をしながらコメントを見て軽く絶望する。

このペースで運動しなきゃいけない戦闘がそんな量って、普通にバカでしょ。


今やってるこれだって120回とかさせられるし。


「えぇ……。これクリアできる人いるの……?」


いやまぁ難易度の表記的にクリアさせる気があんまないのは察するけどさ。


これできるの多分プロのボディビルの人かズルしてる人だけだよきっと。


「そいやこのゲームって他のメンバーでやってる人いたっけ」


【コメント】

:この前確かスピカちゃんがやってたっけな

:発売当初にイナちゃんがやってた

:メグちゃんも昔やってたな

:文句言いながら全く息切れしてないのほんま

:他の人の配信と比べて異質すぎるよこの魔王

:こんなRFC見たことねぇよ


「あー、イナ先輩とメグ先輩とスピカちゃんかぁ。あの3人なら結構みんな的には素晴らしい配信だったんじゃない?」


私の発言にコメント欄は大体肯定と興奮のコメントで埋まる。

そう、うちの母親に筋トレを強要するようなアホがコメントに湧くように、女の子が配信で運動すると層が一定数いるらしいのだ。

あまりこれ以上は考えたくないが。


「ま、残念だったね。私はこれくらいの運動だったらいくらでもできるよ」


こなさなければいけない数こそ多いが、この程度の運動だったら多分いくらでもできる。最近運動不足とはいえ、高校時代の貯金は案外残っているものだ。


【コメント】

:いやー残念だなー

:スクワットの時にいいものを見せていただきました

:でっけぇんだから

:なるほど、こういう楽しみ方もあるのか


「あ」


一部のコメントを見て察したわ。

実写配信故だな、クソ。


「なるほどね……。ちくしょう、なんか負けた気分だ……。あ、やっと最初のステージクリアか、長かったぁ……」


計3回の戦闘だけで30分くらいかかった気がする。


「あぁなるほど、クリアすると経験値がもらえるんだ。わ、すご。いきなりレベル5になってる」


どうやらやった運動の量に応じて経験値が増加するらしく、スクワット400回〇〇EXPやバン〇イプッシュ200回〇〇EXPなどと表示されており、一気にレベルが上がって攻撃力も増加。

いくつか新しいスキル(筋トレメニュー)も追加されたようだ。


「ほぇ、椅子のポーズ……。ヨガとかもあるんだ」


次のステージもその次も、運動がキツくて多い分どんどんレベルが上がっていくため最初のステージよりはまだ楽だった。


「というか、案外ストーリーがしっかりしてると思いきやなんか不穏なんだよね」


ボスステージの途中で出てくる雑魚と戦闘しながらここまでのストーリーを思い出す。


この世界に迷い込んだ主人公。帰る手段を探していると今手に持っているリングを発見する。

しかしそれは何やら封印されており、そのリングの言葉に従って封印を解除。

彼(?)曰く、それぞれのワールドに封印されているオーブを全て集めることで元の世界に戻るためのゲートが開く、ということらしい。


「なんか今まで戦ってきた敵も全部人畜無害な見た目してるしステージも平和な魔物の村っぽい感じだし、なんならこいつ自分が封印されてた理由とか教えてくれないし。もう結構信用できてないよこのリングのこと」


まだゲーム序盤ではあるが、断片的な情報からなんとなく推測する。実はこのリングこそが悪者で、何かのために主人公を利用しているのではないか、と。


【コメント】

:え既プレイ?

:ネタバレやめてください

:相変わらず鋭いなぁ

:ところで真顔でプランクしながら考察するのじわる

:プランクってこんなに微動だにしないものだったっけ


今私がやっているのはプランクという技(?)。うつ伏せになって両肘とつま先で身体を支える姿勢をキープするというやつだ。シンプルに腹筋にくる。


「てか待って、全然見てなかったけどこれ5分ぐらいキープしなきゃなんだけど。普通の人間にできるわけないでしょ殺す気???」



5分後。



「だぁぁぁぁキツかったぁぁぁ!!!もう無理!!腹筋死ぬ!!」


【コメント】

:はい人外

:自分で証明してて草

:はいはい魔王魔王

:どんな筋持久力してんだこいつ

:雑談しながらこれってマジ?


「いやもう途中から気合いだけでやってたよこれ……。てかこの後でボス戦控えてるってマジ……?」


腹筋が疼痛を訴えるのを無視してステージを進んでいき、遂にボスのいる建物へ。

そこで待ち構えていたのは筋肉質な老人の魔族らしきモンスター。


『貴様……そいつの封印を解くということの意味を理解しているのか?』


『うるさいぞ!僕を騙して封印した悪辣なる魔族を僕は許さないからな!さぁサキ、力を合わせてこの卑怯者を倒すぞ!』


「なんかもう確信したよ、どう考えてもこいつラスボスになるやつじゃん」


どうやらボスには属性相性が関係ないらしく、先ほど酷使した腹筋にダメージのない運動を選んでダメージを与えていく。


これまでの雑魚とは比べ物にならないHPの多さと攻撃力、流石はボスといった感じだ。


勇者ヅラしているリングへの辟易も相まって今までで一番の苦しい戦いだ。


『ぐっ……このままでは……世界が……』


『卑しい魔族が何を言ってるんだ!僕はサキのために、そしてこの世界をお前ら魔族から守るために戦っているんだ!!』


「なんだろう、今までで一番魔王になりたいと思った瞬間かも。このクソリング捻り潰せないかな。ストーリー的に悪そうだからとかじゃなくて、自分が正義と信じて疑わないタイプのキャラ無理なんだよね」


【コメント】

:辛辣で草

:魔王だもんな

:まぁわかる

:ちなみにメグちゃんは思いっきりそのリングに同調してた

:ミラライブモデルで続編出ないかなこれ


ワールド1のボスも倒したし配信時間も結構長くなってきたということでここで一度終了。続きはまた今度の配信でということになった。多分一週間に一回ぐらいでいいかな、それ以上は身体がというより精神が耐えられない気がする。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


翌朝


「痛い痛い痛い痛い痛い!!!」


「サキ~、学校行くよ~」


「ちょ、クリス、ま、ああああああああああああああああ!!??!?!!?」


みんなは運動はやりすぎないようにしよう!

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