このメンツでFPSなんてしたらそりゃあねぇ
『《アリシア・デ・ラスフォード/狐舞サキ/白井モモカ》ABEXヤクザを二人連れて《ミラライブ二期生/ミラライブ三期生/ミラライブ四期生》』
「とりあえず目標は全員ダブハンで」
「みんなで砂でも握る?」
ということでゲリラ的に始まったのはABEXのフルパ配信だ。このゲームは以前ミタマちゃんから教えてもらった三人一組のバトルロワイヤルで、純粋なAIMだけでなく立ち回りやキャラクターコントロールなんかも重要視されるため奥が深く、非常に楽しいのでたまに配信外でプレイしているのだ。
そんな折にこの二人からフルパのお誘いのDMが来たためどうせなら配信つけてやるかということで急遽枠を立てたという次第だ。
「そういえばお主らの今のランクはどこなのじゃ?」
「私はマスターだよ」
「私はまだダイヤですね」
「ほう、ならば今日はそこな小娘をマスターまで連れてゆく耐久配信としようか」
「了解~」
【コメント】
:配信でやってるとこ見たことないけどサキちゃんマスター!?
:マッチングした人可哀想すぎる
:なんでBANされてないの
:人力チーターもBANできるようにしたほうが良い
:さらっと流すけど三人ともランク高すぎ
「なんかコメントで酷いこと言われてるけど私そこまで強くないよ?ほら、私コントローラー苦手だからキーマウだし」
そう、このゲームはコントローラーにかかるエイムアシストという補助輪が余りにも強すぎるためにPCのゲームなのにキーボードとマウスでプレイするよりもコントローラーでプレイした方が強いという謎仕様。今やキーマウ人口は全体の1割程度と言われている。
「ほう、奇遇じゃの。妾もキーマウじゃよ」
「あ、じゃあ3キーマウだ。珍し~」
そんなこんなで始まったフルパ配信。
しかしなんとなく予想していたがこの二人とやるとなると……
「W方面で銃声じゃ。行くぞ」
「そっち安置外だし周りに別パいっぱいいるって!!」
「全て殺せばよかろう?」
「ソッスネ」
「は?別に撃たれたんだけど。ちょっと殺ってくるわ」
「モモカちゃんせめて集団行動しよ?!?」
まぁこうなる。
そりゃそうだ。
こんなんじゃランクを上げるなんて夢のまた夢……
『YOU ARE THE CHAMPION!!』
「そうはならんやろ」
いや、そうはならんやろ。
アリシア先輩が安置外の戦闘にちょっかいをかけに行って漁夫も倒して9キル回収。
モモカちゃんが別方向に喧嘩を売りに行って漁夫も倒して6キル回収。
私はどちらもカバーできる位置の建物に陣取って遠距離から支援しつつ、場所を取りに来たパーティーを倒して合計9キル回収。
それ以前にも何人か倒していたので合計キルは30を超え、結果的に1試合でランクポイントを大幅に盛る結果となった。
しかし……
「ふむ……3800か……」
「私なんて3500だよ」
「3200しか出てない……」
各々、出したダメージが一応の目標である4000に届いていない。
普段ソロでやっていたら割と頻繁に出せるのだが、全員がそれぞれ火力を出せる上に相手に回復させる暇を与えずに倒してしまうことが殆どなのでダメージを稼げないのだ。
「ていうかほんとにお願いだから一緒に行動しよう?それぞれで一人で敵倒してたら一緒にやってる意味ないよ」
【コメント】
:なんで勝てるんだよ
:プロやん
:砂外さないのはデフォルトなのね
:蘇るPABGの悪夢
山神ミタマ🔧:みーのアイデンティティ返してほしいのにゃ
:これプレマス帯なんだよね???
「確かにね。じゃあ一応できるだけ気が向いたら連携取るように善処するよ」
「ダメなやつだこれ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「割ってる」
「それやった」
「ラスト一人じゃ」
「おっけ、やった」
「ナイス~」
「別来た」
「一枚やった」
「ポータル乗れ」
「ナイス、モモカちゃんそれ割ってる」
「おっけ倒した」
「残りも割れておる」
「どっちもやった」
「ナイス~」
……うん、なんとなく察してた。それぞれが1対3で勝てる実力があるのにちゃんと連携取ってプレイしたらこうなることくらい。相手の構成やスキルの状況の確認などする必要もなく圧倒的な暴力のままに戦闘が終了する。
「そういえば二人ともあんまりFPSやってるイメージないけど、実は裏で結構やってる感じ?あ、一枚抜いた」
「配信上でやっておると豚共にゴースティングされるのでな。まぁ、全て返り討ちにしてはおるがそれでも不愉快なものは不愉快故に配信でやるのはメン限のみじゃ。漁夫N方向」
「私も同じような感じかなぁ。変な人に絡まれると配信が成り立たなくなっちゃうこともあるから……。漁夫一枚やってるから一旦ここ先潰そ」
ゴースティングとは、配信を見ながら配信者と同じマッチに入ろうとタイミングを合わせること、また悪意を持って妨害しようとすることなどを言う。当然ながら規約違反だ。配信者にはつきものの問題なのだが、まさかアリシア先輩にとは驚いた。恐れ知らずにも程がある。
「ちなみにさっきから倒してるの、半分くらいはゴースティングだよ多分」
「なるほど、道理で変な名前の人が多いと思った」
『アリシア様踏んでください』『モモカちゃんに罵られ隊』『魔王からABEXを守る勇者』等の、どう考えてもミラライブリスナーとしか思えない名前が結構いるのだ。
そのうち何人かは私たちがいる場所が分かっているような動きをしていたのだが、あまりにこちらが強すぎてそれでも勝てていないらしい。
「そういえばサキちゃん、キャラコン上手すぎない?私もずっとキーマウでやってるけどそこまでできないよ……。あ、ナイスちゃんぴお~ん」
「コントローラーの人たちって、ぴょんぴょんくるくるして翻弄したら視点回すの追い付かないんだよね。それを見るのが面白すぎてめちゃくちゃ練習した」
【コメント】
:雑談しながら当然のようにチャンピオンなのほんまww
:サキちゃんだけじゃなくてこの二人も化け物だったか
:FPS枠のミタマちゃんが可哀想になってくる
:今んとこ誰もダウンすらしてないんだが
:サキちゃんのキャラコンえぐすぎる、プロかよ
実際、戦闘中は壁を蹴ってジャンプするのはもちろん小さな段差や柵、ジップラインなどを用いて基本的に物凄い速度で空中でダンスしている。その動きを追いきれない敵が弾を外したところにショットガンを当てて倒すといった動きが基本なため、正直ここ数試合の私の被弾はほとんど0に近い。
「ABEXに関しては結構自信あったけど、流石にサキちゃんには敵わないなぁ」
「ほう?ダイヤ如きが何を言っておる。マスターまであとどのくらいじゃ?」
「あと1チャンピオンってとこですかね。もういっそ各自で別のとこ降りてやります?」
「賛成じゃ。妾もちょうどキルが足りぬと思っておったところじゃ」
「フルパの意味……うん、もういいや。じゃあ誰が一番キル取れるか勝負ね」
「りょうか~い」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『YOU ARE THE CHAMPION!!』
「モモカちゃんマスターおめ~!ちなみにキルはどんなもん?」
「ダメだぁ、8キルしか取れなかった」
「私も13だけだよ……」
「ふふん、妾がちょうど20じゃから妾の勝ちじゃな」
それぞれ危なげなくキルを重ねて最終円で集合してチャンピオン。
これで勝てるんだったら何しても勝てるよ。
「そういえばサキちゃんは大体スナイパーで数減らしてから詰めてるからわかるんだけど、アリシア様よく1対3で勝てますね」
「そういうものか?道化のように踊らずともそもそも敵の弾が妾に当たらんでな、こちらが当てさえすれば勝てるものだと思うが」
「そうだ忘れてた、この人化け物レベルの豪運なんだった」
麻雀で大暴れした時に言っていた、アイスの棒に毎回「あたり」の文字があるくらいには運がいいというのはどうやら本当のことらしい。とはいえそれで敵の攻撃が当たらなくなるのは流石にチートに近しいレベルだと思うが。
「そう言うモモカちゃんはどうなの?なんでそんなに強いの??」
「え、私は昔からこのゲームやってるからね。もう3年ぐらいになるかな?」
「なるほど、経験ってわけか」
【コメント】
:そうはならんやろ
:ちゃんとチートじゃねえか
:実際視点見てて敵の弾が全部避けていくから怖い
:3年経験積んでやっとサキちゃんと並び立てるレベルか
:もう4年やっててダイヤ底辺のワイ涙目
その後も色々雑談しながらマッチを破壊し続けた私たち三人。
世界大会に出ているようなプロや、ゴースティングチーターですら蹂躙し、とはいえ全員がAIMだけではない実力を備えていたがために殆どチートを疑われることもなく。
夜遅くになって解散するまでABEXの悪夢は続いたのだった。
『《アリシア・デ・ラスフォード/狐舞サキ/白井モモカ》ABEXヤクザを二人連れて《ミラライブ二期生/ミラライブ三期生/ミラライブ四期生》』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます