100万人突破記念配信 5

アリシア先輩の意外な一面が悪魔によって暴かれた後。

いつもの調子で高飛車な態度を取ろうとするアリシア先輩をアリスちゃんと私がいじり続けて二人の出番は終わった。

今度アリシア先輩と話すのが楽しみで仕方ない。


「さて、本日最後のゲストはこの二人です、どうぞ~!!」


本日五度目、最後の場面暗転。

私の両隣に立つのはもちろんイナ先輩とモモカちゃんだ。


踊るのはTHE・アイドルといった感じの曲。

二人とも正統派の配信者ということもあり、特にボケることもアクシデントを起こすこともなく曲は終了。

今日の曲はこれでラストだ。大変だったが久し振りに本気で振付を覚えて、しかも仲間と一緒に踊るというのは思っていたより楽しかった。


「てことで!」


「「サキちゃん、100万人突破おめでとうー!!!」」


「二人ともありがとう~!!!」


曲の終了と同時に、二人が声を合わせてお祝いしてくれる。

ただただ純粋に嬉しい、というかこの二人の安心感がヤバい。

……モモカちゃんに関しては心の中の化け物を引き出す存在がいない時に限って、だが。


「サキちゃん何か失礼なこと考えてたでしょ」


「な、何故それを……!?」


「うん、サキちゃんはもうちょっとポーカーフェイスを練習した方がいいね」


「唯一の弱点って感じですよね」


「もしサキちゃんが平気な顔して嘘ついたり騙したりしてくるようになったらもう日本が終わる気がするよ」


「わかります、絶対日本にあるお金の半分くらいはサキちゃんに奪われることになる」


「二人して勝手なこと言わないでもらっていい!?人を欺くことなんてできない純真な乙女なんだよっ」


「「きっつ」」


「二人とも息ぴったりだねぇ!?」


この二人の中での私のイメージはどうなっているのか。

……いや、リスナーを含めて私と関わるみんなのイメージがそろそろ許容できない域に達してきた気がするなぁ。


「そういえば二人は他のみんなみたいにふざけないの?割と覚悟してはいたんだけど」


「いいかい?記念配信なんだからサキちゃんがそんなに大変な思いする必要ないんだよ。むしろりんご持って来たり襲い掛かったりするあの人たちがおかしいんだよ」


「そうそう、先輩の言う通り。お祝いしに来てるんだからむしろサキちゃんのボケを全て受け止めるぐらいの気持ちなんだからね?」


「なんだよぉこの二人あったけぇよぉ……お前ら本当にミラライブか?」


冗談とか一切抜きの純粋な笑顔でこちらを見つめてくる二人。私が思わず二人に抱き着くと、二人も優しく抱き返してくれる。

やはりミラライブの母と表面だけは常識枠の名は伊達じゃない。


「でゅふっ」


……。


「モモカちゃん何か言った?」


「じゅるっ……ああいや、なんでもないよ??うん、なんでもない」


「めちゃくちゃ唾液飲み込む音したけど?なんなら表情デレッデレだけど大丈夫??」


顔を上げて私を抱くモモカちゃんの表情を見ると、なんというか『推しに会えたキモオタ』って感じ。


「きも」


「!?!?!?!?」


思わずそう零すと更にキモい表情になる。

ああダメだこれ、ダメな部分が出てきてるわ。


「イナ先輩、悪いことは言わないので急いでこの変態を連れて帰ってください。これ以上は放送事故確定です」


「了解した。ほなモモカちゃん、帰ろうか~」


「やだぁ!!もっとサキちゃんとイチャイチャするんだぁ!!」


「は~いそれはまた今度にしましょうね~」


「うわあああああああ!!!!」


全てを察したイナ先輩に引きずられるように退場していくモモカちゃん。

その表情だけで既にR18すれすれだ。

今度イナ先輩に何かお返ししなきゃだな。


「はい、ということでこれでゲストはみんな来てくれたかな?いやぁ、結局ミラライブのメンバー全員来てくれてほんとに嬉しかった!!あ、ちなみにサリーとかお母さんとかは来ないからね?ここミラライブの施設だから流石に一応部外者のあの人たち入れるわけにはいかないからね」


私がミラライブに入る前からミラライブとの繋がりがあった梨沙ですらこの本社の場所は知らないし、私も教えてはいけないと言われているのだ。

ライバーのプライバシーなんて知ったこっちゃないってなスタンスなのにそういうところのセキュリティはちゃんとしてるんだよなうちの会社、ちくせう。


「あと……そうそう、ここで一つ告知があります!!なんと、私のグッズが出るそうです!!アクスタとか缶バッジとかTシャツとか。あと……何故こんなものを?ってなものまで結構色々!詳しくはこのライブの後のミラライブ公式のシイッターをチェックしてね~」


割と本気でよく分からないグッズが作られているらしいのだ。日本酒とか世紀末風メリケンサックとか魔王の剣とかエアガンとか。私が困惑するというよりそんなものが本当に売れるかどうかの方が心配だよ。


「じゃあこの後はこのライブ中にもらったスパチャを読む配信に移行します!もらってすぐ読んであげられなくてごめんね。この後の配信ではもう無限にコメント拾いまくるからいっぱいコメントしていってくれよな!ってなわけでほな!!みんな愛してるぞ~!!!」


『《狐舞サキ》チャンネル登録者数100万人突破記念配信!色々やるよーっ!《ミラライブ三期生/記念配信》』

1分前に配信済み

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