100万人突破記念配信 2
9割ギャグです
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「……さてさて、あの二人は後でシメるとして、このままのペースでやってると朝になっちゃうので次のゲストを呼んでいきましょう!こちらの方々です、どうぞ~!」
マイカちゃんとミタマちゃんがそそくさと逃げた後、そこそこにキレた後だ。
再び画面が暗転し、数秒後に明転したときに私の傍にいたのはメグ先輩、くるみちゃん、スピカちゃんの三人。この組み合わせの理由や細かい事情なんかは置いておくとして、今度は比較的おとなしめの曲を歌って踊る。
元々は別の曲を予定していたのだが、何度合わせてもスピカちゃんが途中で過呼吸で倒れて痙攣し始めるので諦めて別の曲にすることになったのだ。
流石に記念配信でリアルタイムに死者を出すわけにはいかない。
とはいえ普段運動しない人間にはこの程度の動きでも歌いながらとなると中々にきついものがある。
苦しそうな表情を浮かべながらもなんとか歌い終わり、その直後にスピカちゃんはその場に座り込んでしまった。
「す、スピカちゃん大丈夫!?すみませーん!!誰かお水持ってきてあげてください!!」
まるでフルマラソン完走直後のような雰囲気で倒れ込むスピカちゃん。肩で息をしながらもその表情は満足げだ。
【コメント】
:よくがんばった
:引きこもりにしてはえらい
:途中で倒れないかハラハラしてみてたわ
:みんな歌上手すぎるって……。これ踊りながら歌ってるってマジ……?
「いや、大丈夫、っス。この日のために、普段から体力作りを……」
「やっぱり先に歌だけでも収録しておくべきだったんじゃないかしら?」
「いえ、スピカが体力ないのが悪いのであります。ほら、さっさと立つであります」
そう言ってスピカの腕を掴んで引っ張り上げるくるみちゃん。
案外スパルタなとこあるのね。
引っ張られたスピカちゃんはスタッフさんから受け取った水を飲みながらくるみちゃんの肩にもたれかかるような形でなんとか立っている。別に座ったままでもいいのに……。
「そうだ、サキちゃん。どうして今回このメンバーで一緒に来たかわかります?」
「どうしてって言われても……。くるみちゃんとスピカちゃんはともかくとして、メグ先輩との共通点がほんとに思いつかないんですよ」
実際、この三人でのコラボどころか確か四期生のみんなはいまだにメグ先輩とはコラボしたことがなかったはず。共通点といえば……。
「そういえば貴女はまだプレイしていないのでしたわね、魔王さん」
「……あ、そういうこと。ちょっと待ってください、ここでボス戦するつもりですか?」
「では……参ります」
「いや参りますじゃなくて、ってうわぁいつの間に!?」
気づくと、メグ先輩がいかにも最終装備といった感じの神々しい杖を、くるみちゃんがいわゆる対物ライフルと呼ばれるようなゴツい銃を構えている。どう考えてもそれは警察官の装備するものではないと思う。
そして私の手にはいつの間にか黒を基調としたで巨大な大剣が握られていた。幾筋もの紅い線が走っており、魔王の剣と呼ぶにふさわしい見た目だ。
【コメント】
:まじでか
:ゲーム攻略の筋道見えるかもな
:はいはい負けイベ
:相変わらずすげぇ技術
しかも手の中に本当に持っているような質感と重量感まで。
ミラライブの不思議技術さん、こんなことができるならもっと他のことにも役立てられるでしょうに。
「いきますわよ、『大天使の榴弾』!!」
「何そのスキル聞いたことない!!ていうかその単語はどう考えても『大天使』とは共存しないでしょ!?」
メグ先輩が掲げた杖から展開される魔法陣。そこから無数の刃のような羽が高速でこちらに向けて射出される。
榴弾と名がつくわけだし、当たったら爆発するに違いない。そう思ってできる限り身を翻して躱し、どうしても躱せなさそうなものだけ大剣で弾く。
羽の刃はやはり大剣に当たった瞬間に爆発し、小さな衝撃を与えてくる。その感覚ですらリアルすぎて、まるで自分がゲームの中に入り込んだように感じる。
「……っと危ない」
「なっ……!?」
無数の羽に紛れて、別方向に展開したくるみちゃんがこちらに弾丸を放ってきていたのだが、ギリギリでそれを察知してなんとか大剣で弾く。
「どうして銃弾を見て弾けるんですの!?」
「目を見れば狙う場所が、指を見れば撃つタイミングが分かりますから。音ゲーと変わりありませんよ」
「チーターであります!!こいつチーターであります!!!」
その後も時々放たれる対物ライフルの弾丸を含め全ての攻撃を凌ぎきった私の発言に悲痛な叫びをあげるくるみちゃん。
今のところかなりギリギリ気合いで避けているような状況だけど、なんか楽しくなってきた。魔王するのもいいかもしれない。
【コメント】
:……(絶句)
:は?
:魔王より魔王してない?
:人じゃないって
「で、スピカちゃんはかかってこないの?」
禍々しい大剣の切っ先を向けながらニヤリと笑ってそう問いかける。
「はぁ……一応、試してみるっス」
スピカちゃんがそう言うとホログラムのキーボードのようなものを目の前に出し、それを高速でいじり始める。
「じゃ、これで頑張ってみてくださいっス。あたしは非戦闘員なので、ゲームの運営側の人間として主人公のサポートをするっス」
「これは……」
急にメグ先輩の身体が淡く光り、その腰には神々しいレイピアが装備される。
「攻撃力、防御力、速さに最高レベルのバフと特攻つきの武器を渡したっス。相手は大剣で小回り効かないはずなんで一応ゲーム内では理論上それで勝てるはずっス」
このレイピア、クリア特典でもらえて二周目以降限定で使える装備だったりするらしい。クリア者が出てこの装備の存在も明らかになったため堂々と解禁したようだ。
「では、いきます!!」
天使の羽をはためかせて吶喊してくるメグ先輩。腰のレイピアを抜き、素早い突きでこちらを攻撃してくる。
「わ、うわっ!!??」
なんとか大剣で弾くも、その華奢な身体からは想像もできないような威力に体勢を崩される。
「私、実は幼い頃にフェンシングを習っておりましたの。国際大会にも出たことがありますのよ?」
「そんな相手にどうやって勝てって言うんですかぁ!?」
バフの効果か、もはや目に見えないレベルの速度で連続で攻撃してくるメグ先輩。
いやもうどっちがラスボスだよ。
なんとか躱し、弾き、逸らしているが攻撃に転じることなどできそうもない。
しかも、いやらしいことにくるみちゃんが常に狙撃のチャンスを窺っているためそちらにも注意を向けなければならない。
……と、いいことを思いついた。
「フッ、避けているだけでは勝てませんわよ!」
「山ほどバフもらってよくそんなこと言えますね!?」
攻防の最中、一瞬メグ先輩へのツッコミでくるみちゃんから注意を逸らす。
その隙を逃さず、くるみちゃんが同じくスピカちゃんに強化された弾丸をこちらに放ってくる。
しかし……
「ほいっと」
「あだっ!?」
「なっ!?!?」
大剣を使って弾丸を弾くのではなく逸らし、メグ先輩の眉間に命中させる。
防御にも相当なバフがかかっていたこと、ていうかそもそも全て仮想のものであるが故に流石に死ぬようなものではなかったようだ。
ていうか当たったら実際に死ぬようなものを躊躇なく撃ってきていたとしたらくるみちゃんとの今後の付き合い方を考えていかなければならなくなってしまう。
予期せず激痛に力が抜けたメグ先輩の手から細剣を弾き飛ばし、大剣を眉間に突きつける私は目の前で項垂れるメグ先輩を後目に、スピカちゃんに話しかける。
「私の勝ち……かな?それともまだ何かある?」
急に話しかけられてビクッとするスピカちゃんだが、諦めたように手を頭の横でひらひらと振る。
「いやもう降参っス。こっちにはエンドコンテンツの装備を用意して身体能力も上げてもなお素の状態の人一人に勝てないって……こりゃ魔王のステータスの方も調整する必要がありそうっスね……」
【コメント】
:待てこれ以上魔王をサキちゃんにするな
:せめて裏ボスとして実装にしてくれ
:今のうちにみんなクリアしとけ!?
:おわった……
「……え?」
そのスピカちゃんの発言に聞き捨てならないと言わんばかりに驚愕しているのはメグ先輩だ。
「も、もしかしてスピカちゃん、サキちゃんって今リアルそのままなんですの?」
「そうっスよ。でも流石にサキ先輩に武器与えたのは失敗だったっスかね……」
「これなきゃ一瞬で負けてたよ」
そう言いながら手に握る大剣を見やる。流石に全部躱しきるのはいくら動体視力で見えていても身体が追い付かない。これがなければ最初の榴弾だけで決着がついていたに違いない。
「……てことは、サキ先輩は素の状態で銃弾を弾けるってことでありますか……?」
「私も初めてやったけど、案外いけるもんなんだね」
そう言ってアハハと笑う私だが。
「「「そんなわけあるかい!!!!!」」」
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