ミラライブを攻略せよ 2
『流石メグ先輩っス!助かったっス……』
『それでスピカちゃん、これは一体どういう状況なんですの?』
スピカからの説明はこうだ。
ミラライブを我が物にしようと企んだ魔王、サキによって制圧されたミラライブ本社。
その瘴気に中てられたメンバーやリスナーがミラライブ内に跋扈しており、ミラライブを正常に戻すためには各階層にボスとして登場するメンバーを倒して建物を登っていき、最上階にて待つサキを倒す必要がある。
リスナーたちを倒すことによって『再生数』を獲得することができ、一定値に達するとレベルが上がるのでレベルを上げてボスに挑むことが当面の目的となる。
「それにしてもサキちゃんの扱いが面白すぎますわね。ミラライブを制圧した魔王って……でもよく考えてみれば現実でもあまり違いはありませんものね」
【コメント】
:ひでぇ言いよう
:そりゃそうだ
:今んとこ何人陥落した……?
狐舞サキ🔧:誰が魔王ですか!?!?
「あら、サキちゃんいらっしゃい。すぐにボコボコにしに行ってあげるから首を洗って待ってらっしゃいな」
そう言うとメグは意気揚々と社内に入っていく。
内部は乱雑に積まれたデスクやオフィスチェア、PCなどで壁が作られているダンジョンのような感じ。陰鬱な雰囲気で、そこかしこにエンカウントシンボルのモンスター(?)が配置されている。
『このフロアにいるのは……くるみちゃんっスね。しっかりレベルを上げてから挑むっスよ!』
『あら、スピカちゃんは一緒に戦ってくれないんですの?』
『あたしは運動苦手族っスから……外から色々情報仕入れてどうにかしてお知らせするっス!それじゃ頑張ってください!』
そう言うとさっさと離脱してしまうスピカ。まぁ配信でも公言している絶望的なまでの運動オンチなので仕方ないところではある。
「さて、では進んでみましょうか」
とりあえず手ごろなところにいるリスナーに喧嘩を売ってみる。
先ほどと同じように戦闘画面に入ると、なんと乱雑に積まれているガラクタの中の一つのモニターが点灯してそこにスピカの顔が表示される。
『あ、繋がったっスね。今後はこんな感じで適当なところに繋いでサポートしていくんでよろしくっス!あとさっき言い忘れてたんスけど、大体の敵には弱点属性とか耐性のある属性があるはずなんで属性魔法を覚えたら意識して戦ってみるといいかもっス』
今回出てきたのはゾンビが二体。ちなみに当然ながらアリスのリスナーである。
まだ序盤だからか、メグのビンタ一発でKOだ。
昇天するようなエフェクトと共に一体撃破。
続くもう一体の攻撃でHPが少し減らされるが、そこまでのダメージではない。
その一体もビンタで沈め、戦闘終了。
再び軽快なSEと共にレベルアップだ。まだ序盤だからかサクサクレベルが上がっていく。
「一応最大HPを増やしておきますわ。魔法での回復量も結構多いみたいですし、罫線能力を考えても硬い方がいいはずですものね」
そう言って最大HPを増やすと、更にメッセージが表示される。
『破魔の矢(TPを消費して聖なる矢を生成し、敵一体に向かって放つ光属性の特技)を習得した』
「なるほど、まぁ見るからにゾンビさんたちは光弱点っぽいですし次の戦闘で試してみましょうか」
そのまましばらく進んでいくと、通路の端に不自然な段ボール箱が。その側面には『MIRROR-LIVE』と書かれており、調べてみるとどうやら開けることができるようだ。
その中に入っていたのは『見習い天使の杖(攻撃力+3、光属性の特技、魔法の威力が僅かに上昇する)』。
素朴な見た目ではあるがしっかりとテクスチャも用意されていて、しかも装備するとフィールドを歩くメグの手の中にしっかりと表示されている。
また、戦闘に入って通常攻撃を行うとそのモーションがビンタではなく杖で殴る感じに変更されている。
ある程度ゲーム作成などのプログラムについての造詣のあるメグは、「もしかして全ての装備品やキャラクターにテクスチャやモーションが用意されているのでは……?」と、無料でプレイ可能とは思えないゲームのクオリティに戦慄する。
「ていうかどう見てもこの杖で殴ったらこちらが折れそうなのですが……」
くるみのリスナーである『囚人』を細い杖で殴打しながらそうぼやくメグだが、色々な要素にツッコみつつも順調に順路を進んでゆく。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『メグ先輩ストップっス!多分その先にくるみちゃんがいるんでちゃんと準備固めてから行くっス!』
リスナーとの戦闘を繰り返してレベル6まで上がったメグの目の前にあるのは重厚な扉。
そしてその傍らには電源の点いたPCが置いてある。
どうやらここで回復したり、他のPCにワープできるようだ。何故PC間でワープできるのかは謎だが。
ちなみにセーブはメニューからいつでも可能らしく、セーブポイントのようなものは存在していない。
「よし、じゃあまずはくるみちゃんをサキちゃんの呪縛から救っていくとしましょうか」
準備を終えたメグはその扉を開ける。
ゆっくりと開く扉、その中に広がっていたのは一際広い空間だ。
『メグ……先輩?』
『くるみちゃん?私と一緒に帰りましょう?』
そう優しく語り掛けるメグだが、くるみの瞳は虚ろなままでどう見ても正気とは思えない。
『ダメでありますよ。本官はサキ先輩に忠誠を誓ったのであります。いくらメグ先輩と言えど本官とサキ先輩の恋路を邪魔するのなら容赦はしないのであります!!』
そう言うくるみはいきなりメグに襲い掛かってきて、そのまま戦闘に。
「……恋路?」
サキの瘴気によって正気を失ったと聞いていたが、もしかしてサキュバス的なそんな感じなのだろうか。
「まぁいいですわ。まずは防御を固めて……」
先ほどのレベルアップで覚えた防御魔法、『天使の守護』を用いて防御力をアップさせる。
そしてくるみのターン。くるみはなんと腰の拳銃を抜いて躊躇なく発砲。
しかし防御力を上げていたこともあってダメージはそこらのリスナーより少し高いくらいだ。
次のターン、属性相性を調べるために『破魔の矢』を試してみる。
しかしRESIST!と表示され、与えられたダメージも極小。一応は犯罪者を取り締まる職業のくるみ、どうやら光属性には耐性を持っているようだ。現在メグが使えるのは光属性の攻撃のみなので、こうなると通常攻撃で殴るしかない。
「こうなると……そうですね、アイテムを使ってみましょうか」
ここに来る道中で拾ったアイテムは、『エナジードリンク(HP回復)』『酒(TP回復)』の他に、『壊れかけのピストル(敵単体に物理属性ダメージ)』、『氷の結晶(敵単体に氷属性ダメージ)』などの敵にダメージを与えるものなど様々。
ちなみに酒でTPが増えるのについては、サキを始めとしたあまりお酒に強くないメンバーが飲酒配信をするとなぜかチャンネル登録者数が爆増することを元ネタとしている。
メグはその中の『おねえさんのうた』というラジオの形をしたアイテムを使用する。
その直後にそのラジオから鈴子お姉さんの歌声が聞こえ始めた。
歌唱力自体は問題ないのだが、問題なのはその曲の内容。純度100%の下ネタである。全年齢対象のゲームということで直接的な言葉にはピー音が入っているが、それでも中々にひどい歌詞。
このアイテムはしっかりと効力を発揮し、くるみにWEAK!の文字と共に大ダメージが入る。しかも、ショックを受けて1ターン行動不能になったようだ。
その隙に通常攻撃を叩き込むと、その場に力なく倒れ込むくるみ。
「あら、案外呆気ないですわね。まぁ最初のボスですしこんなものでしょう」
もらった経験値でレベルが上がり、最大TPに振ると次はイベントシーンだ。
『うっ……ここ……は……?』
『よかった、正気に戻りましたのね!!?くるみちゃん、あなたサキちゃんに操られておりましたのよ?』
正気に戻ったくるみに駆け寄って抱きしめるメグ。
一方でくるみはまだぼーっとしていて、現状が飲み込めていない様子だ。
『そうだ……本官、サキ先輩を止めようとして……』
その時、部屋の中のモニターの一つが光を放つ。
『メグ先輩ナイスっス!とりあえずそこじゃ危ないので、くるみちゃんを連れて外に出てきてほしいっス!』
確かに、ここだとリスナーたちに襲われるかもしれない。そう考えたメグは、ボス部屋の外のPCを使って建物の入り口に飛ぶのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
このゲームに関しての今考えている設定を一つ前の話の最後にまとめておきます、甘々ではありますが読んでいただけると幸いです。
ちなみにゲーム内のメグのセリフは『』、プレイヤーのメグのセリフは「」となっております、分かりづらくてすみませぬ。
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