オタクが集まるとこうなる 3
さて、中ボスをアリスでボコボコにしてしばらくすると、遂に二人が待望していたイベントが。
「きたー!お姉さま達大集合!!」
今回のリメイク版でナアマと同じように追加された悪魔たちの総称をカディシュトゥと言い、そのメンバーはリリス、アグラト、エイシェト、ナアマの四体。
それぞれが蠱惑的な魅力を持っており、ゲーム発売前の情報だけでシイッターのトレンドを総なめしたほどだ。
「何気にこの四人のマガツヒスキルが好きなんだよね、自分で使うと普通に強いし」
「わかる、色々効果マシマシだしビジュも最高」
ちなみにマガツヒスキルというのは簡単に言うと複数の悪魔による合体スキルのようなものだ。敵に大ダメージを与えるものや特殊効果を付与するものなど様々なものがある。
「……なんて考えてる間に倒しちゃってる、と」
「だってあれ使われたら普通にめんどくさいんだもん、サキちゃんの名前を使ってる以上全滅は許されないのだよ」
敵がマガツヒスキルを使ってくる前に圧倒的火力でボコボコにするアリスちゃん。
このゲームあるあるなのだが、大抵のボスにも弱点が設定されており、それを把握しているプレイヤーなら殆どのボス相手に苦戦することはあり得ないのだ。
もちろんガチ勢であるアリスちゃんにもそれは当てはまる。
ボスの攻撃のほとんどを無効化して、弱点属性の攻撃でボコボコに。これ以前のボス戦でも以降のボス戦でも大体同じような感じだ。
「サキちゃんの弱点だけは知らないから倒せる気がしないんだけどね」
「なんでボス扱いされてるんだ???てか私の弱点は距離感近くて可愛い女の子だよ、アリスちゃんみたいな」
「ふえっ……サキちゃん、そういう発言ばっかりするからボス扱いなんだよ、正直魔王とか裏ボスとかよりよっぽど怖いよサキちゃん」
【コメント】
:悪魔以上の魅了スキル
:さらっと口説くのやめなー?
:はいはいいつものいつもの
:なんだただの無自覚系ハーレム主人公か
:未攻略の人ミラライブに残ってる??
白井モモカ🔧:このたらしめ
「みんな私の評価ひどすぎない!?口説いた覚えなんてないんだけど!?」
「なんだ、パッシブスキルで魅了をばら撒くタイプの害悪系悪魔だったか、優先的に殺さなきゃ」
「悪魔扱いは流石にひどくない!?」
なぜ
なんて思っていたら、コメント欄ではどうやって私を倒すかの談義が進んでいた。
状態異常で行動を封じれば……←そんなん効くわけないだろ
いっそ攻撃を反射してしまえば←貫通持ちに決まってるだろ
圧倒的火力で殺される前に殺せば←攻撃が当たる未来が見えない
に、にげ……←しかし まわりこまれてしまった !
「てことでサキちゃんを倒すためには貫通必中の攻撃で、サキちゃんの攻撃でやられる前になんとかワンパンするしかない、と。どうせ中途半端に削ったら発狂モード入るだろうし」
「なんで真面目に私の攻略方法を練ってるのかな!?」
「ミラライブを攻略するRPGとか誰か作ってくれないかな、当然ラスボスはサキちゃんで」
「Vの事務所から出るゲームがライバーを倒すことを目的としたRPGなの終わってない?」
何より怖いのは、こういう話をしていると本当に誰かが作ってしまいそうなことだ。
……悪寒がする。
そんな下らない話をしながらも、アリスちゃんはボス戦とイベントを終えて合体が解禁されたカディシュトゥの面々を作成していた。
疾風属性の魔法とサポートを得意とするリリス、強力な万能属性魔法を用いるアグラト、物理を得意とするエイシェト、デバフと呪殺属性魔法を得意とするナアマ。
正直、このメンバーさえ育成してけばクリアまで行けてしまうような性能のメンツである。
そんな彼女らの作成を終えたアリスちゃんは、二人が待ち望んでいたとあるサブクエストへと向かい始めた。
とある崩壊した街の一角、そこに佇むのは一人の可愛らしい少女だ。
その名はアリス。アリスちゃんとも、作成して仲魔にできるアリスとも違う、イベントNPCとしてのアリスだ。
彼女の話を聞く限りでは、どうやら彼女の秘密の庭で友人の女の人が行方不明になってしまったので探すのを手伝ってほしいとのこと。
「いやぁ、やっぱこのグラフィックで見れるのは最高だね、さすがめちゃくちゃ可愛い」
「だよねだよね!!ほんとにこのイベント追加してくれた運営さんには感謝しかないよ!」
クエストを受注し、アリスを操作して彼女の庭へと向かう。
可愛らしいアリスを操作できる場面はこのクエスト中を除いて他になく、初プレイ時には狂ったようにスクショを撮りまくっていたとのことだ。
庭の内部は崩れたビルのような景観で、アリスの友人を名乗る何人かの人間が立っていた。
クエストの内容としては、その人間たちから順に話を聞いていき、最後に猫型の悪魔から話を聞くといった情報収集系のクエスト。
しかし、話を聞いていくと奇妙な点に気付くことになる。
自身をイモムシだと思っている人がいたり、なぞなぞができていないからお茶会を待ってほしいと懇願する人がいたり。
まともな話ができる人が誰一人いないのである。
そして、最後に話す悪魔から衝撃的なことを告げられる。
『この不思議の国はいつまでも続くわけじゃない、あんたが閉じ込めた魂たちだって本当は帰りたがっている』
と。
「つまり、ここにいた人たちは、死んだ人間の魂をアリスが捕まえたものだったってことか」
「そうそう、でも猫ちゃんが言ってたとおりいつまでも一緒にいられるわけじゃないんだよね……」
そのアリスちゃんの言葉の通り、彼らに再び話しかけると彼らは自分がもう死んでいることに気付いて次々に昇天していく。
ある者は遊んでくれたアリスへの感謝を述べて、ある者は自身の魂を拉致したアリスに悪態をついて……。
「あぁ?てめ今なんつった?なんでこんな可愛い女の子にそんなひどいこと言えるんじゃ?楽に逝けると思うなよ?おぉん??」
「アリスちゃんアリスちゃん、心の中のモモカちゃんを早く仕舞って!!!」
【コメント】
:誰もが皆心の中にヤを飼っている
:このイベントちゃんと切ない
:怒る気持ちもわかる
:モモカちゃんを引き合いに出すの草なのよ
アリスの庭の中にいた人たちは、一人残らず昇天して消えてしまった。
最初にアリスが探していた女性も同じく、だ。
そして独りぼっちになってしまった彼女に共に来ることを提案すると、彼女を連れてフィールドを探索することができるようになる。
プレイヤーにとっても嬉しく、アリスにとっても救いのある結果となったと言えるだろう。
「いやね?アリスって悪魔なわけだから人間なんかとは比べようもないくらい永い時間を生きてるわけじゃん?それで、せっかく繋ぎ止めておいた魂たちがこんなに簡単に成仏しちゃうってことはこうやって魂を捕まえて友達にして逃げられて、ってことを今までに何回も何回も繰り返してきたと思うんだよね。そうやって何回も友達を失った挙句あんな罵倒までされてるかもって考えると今作のアリスが可哀想すぎて可哀想すぎて」
「わかる、しかも別作品ではウサギの皮剥いたり主人公たちをボコボコにしたりと結構ひどいことしてるイメージだけど今回ばかりは何も悪いことせずただ友達と遊ぼうとしてただけなのにね。もうこれからずっと一緒にいて色んなところに連れてってあげるからアリス一生俺に着いてこいって感じ」
「流石サキちゃんよくわかってる。死ぬまで、っていうか死んでからもずっと一緒にいて幸せにしてあげたい以外の気持ちが湧いてこない最かわ」
そんな風に早口でオタクしている二人、気づけばプレイの手は止まっている。
ゲームはいよいよ終盤に差し掛かることとなる。
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