キレたらリセットバニーマン

『《アリシア・デ・ラスフォード/白井モモカ》キレたらリセットバニーマン《ミラライブ二期生/ミラライブ四期生》』


「どもー!ミラライブのガチ地雷こと、白井モモカでーす!そしてぇ!!」


『二期生のアリシアじゃ。この女の苛烈な物言いは好ましく思うておるでな、少し揉んでやろうと思う』


「前半と後半の繋がりがどう考えてもおかしい気がするんだよなぁ」


【コメント】

:wktk

:前から思ってたけどモモカちゃんってドMなの?

:先輩選びのセンスがなさすぎる

:次は鈴子お姉さんかな

:自殺行為だぞ


「違う違う!!私じゃなくて、アリシア先輩にコラボ誘われたの!!」


「様をつけろよデコ助野郎」


「アリシア様がそういうボケするのが意外すぎて困惑してる」


ということで、アリシアとモモカのコラボである。

プレイするゲームは『ハイパーバニーマン』。二人がそれぞれウサギのようなキャラクターを操作して、ニンジンを回収しつつ協力してゴールを目指すというものだ。

ちなみにキレた時点で自動で通話に入っているBotが検知してそのコースの最初からになるとかいう設定になっている。

実はこれもミラライブが開発したBotだったりするのだが、どういう用途で開発されたのか本当に謎である。


「じゃ、早速やっていきましょうか!アリシア様操作方法わかります?」


『妾をあまり舐めるでないわ。この程度……』


「あ、落ちたプフッ……って、一瞬でリセットされた!!??」


『ほう。中々に親切なゲームじゃのう』


「涼しげに言ってますけど、キレるの早くないですか!?」


独特の操作感に慣れていないアリシアがコース外に落下した瞬間にスタート位置に戻る。どうやらBotはしっかりと機能しているようだ。


『ふむ、まぁ操作感は大体掴めたでな、さっさと進むぞ』


「わっ、ほんとにサクサク進んでる」


【コメント】

:相変わらずの沸点の低さ

:これクリア無理だろ

:やり方把握するの早いな

:何気にゲームセンス〇なんだよなぁこの姫

:今日は台パンで何が壊れるかな


その後二人は順調に前進、ちゃんと道中でニンジンも確保。

あまりゲーム慣れしていないモモカをさりげなくサポートするようにアリシアが動いており、視聴者の予想に反していい連携が取れている。


しかし……


『あっ』


ミスで足を踏み外し、アリシアが狭い穴に落下しかける。

なんとか耐えてはいるが、モモカが救出しないと落ちてしまいそうだ。


「どどどどうすれば???」


慌てたモモカの操作するキャラクターの足がアリシアの顔面を強打。


『……』


「わあああああ!?!?どうしたらいいですかこの状況!!」


いきなりのピンチにテンパったモモカは、崖を両手で掴んだまま足をばたばたさせる。


その結果……


「あれ!?最初から!?」


【コメント】

:そりゃそうだ

:そりゃキレるわな

:顔面ぐちゃぐちゃで草

:偶然とはいえwww


『さて、小娘よ。貴様は何か申し開きはあるか』


「ほんっっっとうにすみませんでした!!!!!!」


配信画面上の表情を見るだけでもその怒りが伝わってくるアリシア。

PCの前のアリシアの額はきっとメロンのようになっていることだろう。


『はぁ…………。まぁ、よかろう。ほれ、さっさとクリアするぞ』


「は、はい……!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「うわあああああ!?」


『惜しかったのぅ』


「ごめんなさああああああああい!!?」


『構わんぞ』


「蹴とばしちゃったあああああ!!!」


『気にするでない』


「うわぁアリシア様ホールインワン!!」


『貴様はこのゲームよりゴルフの方が向いておるやもしれんなぁ』


【コメント】

:あまりにもセンスがなさすぎる

:もはやわざとじゃない?

:そうはならんやろ

:これはひどい

:アリシア様がずっと笑顔なのがまたwww


そう。白井モモカ、致命的にこのゲームのセンスが欠如しているのだ。

しかも普段なら「なんじゃこのゲーム理不尽すぎるやろ!!」なんてキレているところだが、今回ばかりは大先輩にしっかり迷惑をかけ続けているのである。

まさか自分でもここまで下手だとは思っておらず内心では滝のような冷や汗が流れている。

そして何より途中から怒ることもなくずっと笑顔を崩さないようになってしまったアリシアの存在が一番のプレッシャーだったりする。


しかも実はこういうミスをする度にスタート地点にしっかり戻されていたりするのだ……!!!


「ア、アリシア様……?そんなに笑顔だと逆に怖いのですが……」


『いや、ふと考えておってな。このゲームで何度お主に蹴り殺されたらリアルのお主を蹴り殺すのと釣り合うかと』


「釣り合うわけないでしょ!!?」


『そういえば前に妾がうっかり蹴った童は背骨が折れておったと聞いたのぅ』


「笑顔でそんなこと言わないで!!怖いから!!!!」


アリシアの優しく語りかけるような、しかし迫力満点の脅しに手元が狂い、誤って蹴飛ばしたアリシアをステージギミックの棘で串刺しにしてしまう。


『ふむ、串刺しが望みか。前々から思っておったがやはりお主はドMなんじゃのう。オフコラボはいつにしようか?』


「そんなこと言いながら誘われても絶対やりませんよ!?てかドMじゃないですし!!」


【コメント】

:嘘つけ

:アリシア様とオフコラボとか幸せかよ(死ぬけど)

:会ったらもう終わりだぞ

:流石にひどすぎるwwwww

狐舞サキ🔧:モモカちゃん逃げてぇ超逃げてぇ


「さささサキちゃん!!助けて!!このままじゃ私殺されちゃう!!」


狐舞サキ🔧:がんば(^^)v


「この薄情者!!!人でなしぃぃぃ!!!!」


ちなみにアリシアが言っていた骨折した童というのは、サキの目の前で跪かされたあの人だったりする。

アリシアもサキもあの後高畑社長から聞かされて知ったのだが、その時にサキは改めてアリシアの容赦のなさと、彼女の言葉がただの脅しではないことを理解したのだった。


この後も、「謝りながらミスで先輩を蹴り殺してしまうモモカvs笑顔でキレるアリシア」という本人たち以外は見ていて笑いが止まらない配信となったのだった。



『《アリシア・デ・ラスフォード/白井モモカ》キレたらリセットバニーマン《ミラライブ二期生/ミラライブ四期生》』



アリシア・デ・ラスフォード:まぁ、慣れておらぬゲーム故に仕方ない部分もあると理解しておる。貴様が思っておるほど怒っておらぬ故あまり気にするな。また一緒に遊ぼうな^^


配信後にモモカに届いたDMである。

普通に目を疑う。


「え、アリシア様優しすぎない……???」


本当にわざとではないとはいえ今日の配信では先輩にマジギレされてもおかしくないと思っていた。ていうか自分が先輩の立場だったら心の中のヤの人が普段被っている猫の皮を引き裂いてそのままコラボ相手のメンタルすらも引き裂いていたに違いない。


なんだ。思ってたより優しい人なんだ。


アリシア・デ・ラスフォード:で、オフコラボはいつにする?妾としては今からでもよいのだが。


……。


……やっぱり怒ってるじゃねえか!!!!!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る