幽霊より怖いメンバーでのGhostphobiaなのにゃ 3

さて、モモカがブレーカーを復旧させたことによって一同はやっと怪異の正体を暴く作業に移れるようになった。

ちなみに別に電気が点かなかったところで進行自体は可能なのだが、画面が暗すぎることとモモカが恐怖のあまり視点をブンブン振りまくるために配信的に明るい方がいいのである。既にモモカのライフはもうほぼ0だ。


「さて、お化けの種類の特定なんにゃけど、今のところ候補が多すぎるからとりあえず色々設置していくのにゃ」


『そうだねぇ。じゃあ私とみーちゃんでアイテム運んでくるからモモカちゃん設置よろしくね~』


『……なんで私なんです?』


『初心者に経験を積ませてあげようという先輩の優しさだよ?』


『半笑いで言われても何も説得力ないですよ!!どうせまた怖がらせたいだけでしょ!?』


『てことで行こっかみーちゃんっ』


「了解にゃ~」


『あっ、ちょっ、待てぇ!!!!』


そんなモモカの叫びなど知らぬ存ぜぬといった感じで建物を後にする先輩二名。


『あ、そういえば何か変なことが起こったらどんなことが起きたか教えてね、それもお化けの特定に役立つから』


『ひ、他人事だと思って……ってうわぁ!?電気が!!!電気が消えました!!』


そのモモカの言葉通り、モモカがいる部屋は真っ暗だ。しかし、アリスたちがいる玄関付近の電気は普通に点いているのでブレーカーを落とされたというわけではなさそうだ。


「落ち着くにゃ。お化けが電気消しただけだからまた点けたらいいだけにゃ」


『そ、そんなこと言っても真っ暗でスイッチがどこだか』


『ねぇみーちゃん、ここまで干渉多いってことはやっぱあいつだと思うし本と紫外線だけ持っていけばいいような気がするんだけど?』


「一応他の可能性もあるしみーがカメラとか塩とかも持っていくにゃ。何か撮れたらラッキーぐらいの気持ちで」


『ねぇ無視しないでよぉ!!!』


意図的に先輩に無視されているモモカ、もうとっくに半泣きである。

そんなモモカに対してアリスが少し不機嫌そうにこう返す。


『うるさいなぁ。そんなに冷静さを欠いてるんだったらリアルSAN値が削れてお化けに襲われるんじゃない?ほら、きっと今まさにモモカちゃんの後ろに……フゥッ』


悪ふざけでマイクに口を近づけて吐息を吹きかけるアリス。

その直後に訪れたのは数秒の沈黙。

アリスやミタマが予想した黄色い悲鳴とは裏腹にモモカからは何のリアクションもない。鼻歌混じりにアイテムを準備するアリスはともかくとして、ミタマは「少し弄びすぎたかにゃ?」と懸念する。しかし……。


『あ、あの、申し訳ないんですが、その、一旦離席する必要が出てきたので失礼します!!!3分ほどで戻ります!!!』


次にモモカから聞こえてきたのはそんな声だった。

その直後に聞こえたのはドタドタという足音。


『よかった、ブチギレてるのかと思ったよ。ていうかもしかして、またミュート忘れて離席してない?』


「お家芸……と言いたいところにゃけど、ミュート忘れなんて初配信と今回だけだからたまたまだと信じたいにゃ」


そして……。


『うわぁ!?ズボンまで染みてるよぉ……。もう最悪……でも椅子まで汚れてなくてよかったぁ……』


「『ブフッッ!?!?』」


【コメント】

:これは……www

:やったか

:何故配信前に行かないのか

:わざわざミュート忘れるあたりがもうwww

:ふぅ……

:俺さ、モモカちゃんのこと怖いと思ってたはずなんだけどな


コメントの皆がモモカのセリフから察したことと同じことを、アリスとミタマもまた察していた。

そう、それ即ち……。


『もしかして、モモカちゃん、漏らしちゃった?』


「ちょ、アリス先輩笑ったらかわいそうだにゃ!!てか、待って、笑いすぎて腹筋、おかしくなるにゃ」



恐らく着替えのためにPCから離れているであろうモモカ、そして爆笑のあまり操作が覚束ない2人。幽霊物件の中でプレイヤー3人がしばらく完全放置という、怪異本人も困惑するような前代未聞の状況が発生していたのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そこから約3分後。


『ふぅ……待たせちゃった……な……?』


ミュートを解除しようとして、Biscordを見てサッと血の気が引くモモカ。ミュートになっていない。

それもそのはず、配信用ソフトの方はミュートにしたのだが、Biscordの方をミュートにするのを忘れていたようだ。

そこで初めて全てを理解する。


「あの、すごく言いづらいんにゃけど……」


『モモカちゃん、全部聞こえてたよブフッ!!』


「アリス先輩!だから笑ったら可哀想……」


そうたしなめるミタマも、途中から笑いが堪えきれずに言葉が続かない。


『……え……あ……どこから……どこまで……」


まさに青天の霹靂。初配信以来のPONをこんな最悪の場面で……?

半ば惚けていたモモカだが、コラボしている先輩に聞かれていたということは当然そのリスナーにも聞かれていたということ。

その事実に気付くや否や、見たくないという気持ちを押しのけて自身の配信のコメント欄を確認する。


【コメント】

:神回ktkrwwwwwww

:大声でお漏らし宣言は草なんだわwwww

:ミュート芸wwww

:椅子wwwよかったねwwww

:やっと気づいたwww

:こーれ切り抜き確定ですwww


『嫌あああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!』



その後はなんとかモモカは必死に宥めるミタマによって平静を取り戻し、ぎこちないながらも予定通り配信を終えた。アリスは時々思い出し笑いをこらえ切れずにいたが。

そしてモモカは感情のジェットコースターに疲れたせいかこの後ずっと怪奇現象に驚くことすらほとんどなかった。

この事件以後のプレイでアリスが少しモモカに対して優しかったのはきっと気のせいだろう。きっとそうに違いない。


そしてアリスとミタマ、そしてこの配信や切り抜きを見た多くのミラライブメンバーは、モモカとのホラゲーコラボを画策するのであった。



『《夢冥アリス/山神ミタマ/白井モモカ》お化けより怖いメンバーでのGhostphobiaなのにゃ《ミラライブ二期生/ミラライブ三期生/ミラライブ四期生》』

1分前に配信済み



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



筆者のあとがきです。読み飛ばし可。


投稿再開から今まで毎日更新を続けていましたが、昨日ついにそれが途切れてしまいました。

理由はいたってシンプルなものです。


ただ炎の国の探索が忙しかった!!!

というわけでね。なんとかやれることも終わり、炎の国から約80%ほどの宝箱がなくなったのでぼちぼち今日からまたちゃんと更新を再開しようかと。


あ、何のこっちゃ分からんって人はそれでOKです、ただ今日からまたできる限り毎日更新を再開するというだけのお話でございます。

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