誕生日記念配信 5
お母さんの襲来の後、何人かのメンバーが凸に来てくれた。
というか、今配信中のメンバー以外は全員来てくれたんじゃないかな。
ちなみにお酒に関してはユウカ先輩のカップ酒みたいなアホな飲み方さえしなければ案外潰れることもなく、楽しく飲むことができることが分かった。それを知った何人かは残念そうにするとともに何かを企んでいるような雰囲気を醸し出していたが。気にしたら負けというやつだろう。
「いやぁ、まさか全員来てくれるなんて思わなかったよ。ミラライブはあったかいねぇ~」
【コメント】
:人徳ってやつやな
:相変わらず切り抜くところしかない配信だ
:収益化記念配信のときも全員集合してたな
:愛されてるねぇ
「じゃ、もう凸来れるような人も多分いないしここらで配信終わっとこうかな~!みんな優しいし面白いしで今日ほんとに楽しかったよ~」
そう言って配信を締めようとしたその時。
ピンポーン
「はいは~い」
インターホンが鳴り、お母さんが相変わらず警戒心0でドアを開ける。ていうかもうかなり遅い時間のはずなんだけど、こんな時間に誰か来るなんてどういうことだろう。もしかして配信してる私の声がうるさすぎて近隣から苦情が来たとか……?
「あら、いらっしゃい。どうぞ入って~!……あらあら、わざわざありがとう~」
……うん、違うわ。絶対違う。そういやこんな時間にうちに来るなんて一人しかいない。ていうか時々コメントだけして凸に来なかったから不思議だとは思ってたんだよね。
そしてすぐに階段を駆け上がる音が聞こえ……
「よっ、早紀誕生日おめでと~!!!」
「やっぱお前かサリー!!!!!」
そう。ドアを大胆に開けてやってきたのは大親友である梨沙だ。今日は大学で会えなかったし誕生日祝いのRINEなんかも来ていなかったのでまさか誕生日を忘れられてるんじゃないか……なんて嫌な想像が脳裏を過ったのだが、どうやらそんなことはなかったらしい。
「ほらほら、美味しいお高いケーキだぞぉ~」
そう言って梨沙が開けた白い箱の中には美味しそうな2切れのチーズケーキ。私が一番好きなやつだ。しかもその上には『Happy birthday SAKI♡』なんてチョコのカードまで。なんだよ私の親友最高かよ。
「いやぁ、サプライズで持ってこようと思ったらこんなに遅い時間になっちゃって……ほんとごめん!!」
「いやもうそんなの全然気にしないで!とりあえずこれ写真撮って配信に載せていい?」
「全然OKだよ!あ、毎度お邪魔させてもらってます、早紀の友達のサリーです~」
【コメント】
:やっぱ来るか
:来ないわけがない
:全然来ないと思ってたんだよな
:もはや常連
:同期よりも登場頻度の高い女
;ほんと仲いいよな
「早速食べちゃおっかなぁ~」
「どうぞどうぞ~!ちなみにチーズケーキにはワインが合うらしいよ」
「サリーさんや、あんたまだ19じゃろう?」
「違うよ!?私がチーズケーキ持ってきたって言ったらサキのお母さんがそう言ってたの!!」
「今は配信中だからそういうことにしといてあげるよ」
「ほんとに違うのにガチ感出すのやめてもらえる!?」
そんな冗談を言いながらも、私は冷蔵庫から赤ワインを取り出してグラスに注ぐ。ちなみにこれはメグ先輩が贈ってくれたもので、コメント曰く実は結構な値段のするものらしい。本人は安物だと言っていたが、あんなお嬢様の安物だなんて言葉信じられるわけがない。
もちろん梨沙にはジュースを。
「えー、私もお酒飲みたい~」
「サリーの誕生日の時にどっか連れてってあげるから我慢しなさい」
「ちぇ~」
そんな冗談を言いながら幸せそうな笑顔でケーキを頬張る梨沙。可愛い。私の親友可愛すぎるだろ。
「あ、そうだ。これプレゼントだよ~」
そう言って、梨沙はケーキとはまた別の袋を手渡してくる。
「ケーキだけでも十分嬉しいのにまだあるの?!」
びっくりしてそんな声をあげながら、梨沙が促すままにその袋を開けてみる。
「え、何これめっちゃ可愛いんだけど。てかこれ高かったんじゃない?」
中に入っていたのはちょっとお高いブランドの財布。相変わらずファッションや小物に無頓着な私が使っている年季の入った財布を見かねて買ってくれたのだろうか。
「20歳の誕生日のお祝いだからね。ちょっと奮発しちゃった」
「サリーほんと大好き。一生大事にする」
【コメント】
:てぇてぇなぁ
:やっぱこの二人よ
;いい友達だ
:この二人見てると口角どっか行く
「大げさだなぁ……。あ、そうだ。リスナーさんたちにさ、私たちの馴れ初めの話とかしない?確かまだ配信ではしてなかったでしょ」
「えぇ~……サリーと会う前の私なんて黒歴史の塊だから恥ずかしいんだけど……」
「確かに、クソ陰キャしてたもんねぇ……。今じゃこんなに明るい面白い可愛い女なのに、なんで前はあんな感じだったの?」
「高校の頃の私は馬鹿だったからさ。なんでもそこそこできる程度の器用貧乏な私レベルのことすらできないのにアホみたいに毎日バカ騒ぎしてるサリーたち陽キャのことを心底見下してただけだよ」
「そんな印象だったなんて初めて聞いたんだけど!?!?」
「もちろんサリーが私と仲良くしてくれたおかげでそんな考えは変わったし、今じゃそんなこと全く思ってないよ」
「むしろ今でも私のことそんな風に思ってるんだったら今すぐ絶交レベルだよ!?あとサラっと流したけど何がそこそこ程度の器用貧乏じゃい。世の中の器用貧乏に謝れ」
「ちょっと何言ってるかわかんない」
「なんで分かんねぇんだよ」
【コメント】
:サキちゃんが陰キャしてたの想像できんな
:見下してた草
:辛辣すぎww
:器用貧乏の意味もう一回調べなおした方がいい
:全部一位ではないから得意というわけではないとかいう謎理論
:全部比べる相手が悪いだけ定期
:器用富豪っていうんじゃないの?
「まぁ、確かにあの頃の早紀は確かに周り全部を見下してるような感じだったしねぇ……。そう、あれは私たちが高校生の頃……」
「あ、結局話すのね」
そのあとは、二人でケーキを食べながら思い出話に花を咲かせることに。
梨沙の私に対する意外な印象や私が梨沙に言っていなかったことなど、互いにとってもリスナーにとってもツッコミどころ満載の話は日付が変わるまで続いた。
もらったスパチャの量も同接数も過去最高となり、シイッターのトレンドにも乗った。
色々な人から色々なものをもらいすぎたこの日は、確実に人生で最高の誕生日であったと言えるだろう。
『《狐舞サキ》狐舞サキ誕生日記念凸待ち《ミラライブ三期生》』
1分前に配信済み
ついでに私とイナ先輩の絡みの切り抜きが前代未聞の伸び方をしていたらしい。私は見てないから知らんけど。知らんけど!!!!!!!!
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